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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
30/41

38 『あかたろう』


 ちょーブリブリ昔のことだよ。

 あるところによ、ジジイとババアが住んでたの。


 このジジイとババアは怠け者でよ。

 風呂に入るのすら億劫でよ。

 毎日毎日、だらけまくって過ごしてたのよ。


 そんなとある日のことだよ。

 あまりに暇すぎてよ。

 二人は自分にこびりついた“垢”をこすり取って、それをまとめてこねて遊んでたらしいの。


 でよ。

 それが赤ん坊くらいまででかくなってよ。

 子供のいねえジジイとババアは「この垢人形が子供だったらいいのに」と思ったわけ。


 そしたらよ。

 神様がその祈りを聞いててよ。

 次の日、垢人形が命を得て喋り始めたの。


 もうジジイとババア、マジビビリよ。

 そりゃそうだべ。

 ただの垢の塊が話し始めたんだからよ。 


 でよ。

 ジジイとババアはもう嬉しくなっちまってよ。

 その子供に「あかたろう」って名前を付けて、大事に育てるのよ。


 そしたらよ。

 あかたろう、ちょーでかくなんの。

 

 食えば食うだけでかくなってよ。

 ある日、外の世界を廻ってくるって言い出すのよ。


 ジジイとババアは反対したんだけどよ。

 神様から命をもらったあかたろうには何か使命があるに違いないつってよ。

 旅に出すの。


 その日からよ。

 ジジイとババアはいつか帰ってくるあかたろうのために、ちゃんとしようっつってよ。

 働き始めるわけ。


 そしたら一年後のある日よ。

 あかたろうが出て行った時よりもでかくなって帰って来たのよ。


 あかたろうはその力で鬼退治をしてきたっつーんだからすげーよ。

 犬とか鳥がいねえ分、もしかしたら桃太郎の兄貴よりつえーかもしれねえ。


 でよ。

 ジジイとババアはよくやったつってよ。

 あかたろうを風呂に入れてやるのよ。


 そんで、熱いお湯をかけてやったらよ。

 あかたろうはほら、垢、だからよ。

 綺麗さっぱり消えちまったんだってよ。


 ジジイとババアはすげー悲しんでよ。

 泣いて暮らしたらしいぜ。


 いや、せつねー話だよ。

 神様から命をもらってよ。

 世のため人のために鬼を倒してよ。

 それなのに最後はお湯で流されちまって。

 悲しい話だぜ。

 はっきり言って、リスペクト案件よ。


 ……でもよ。

 俺ぁどういうわけか、全然感動しねえんだよ。

 

 なんでかってそりゃおめえ――












 汚ねえからだよ。






 なんでわざわざあかなんだよ!

 いくらなんでもそりゃ汚すぎるだろ!

 そこがノイズになって全然話が入ってこねーんだよ!


「この垢の塊が子供だったらいいのに……」 じゃねーよ!

 普通そんなこと思わねえよ!

 思ってもそんな願いは叶えねーよ!

 どうでもいいからジジイもババアも風呂入れよ!


 一体どうしてそんなことになっちまったんだよ。

 垢じゃなくて雪とかドライアイスとか、それが駄目なら髪の毛とか、そういうのでいいじゃねーか。


 ……と、思ったんだけどよ。

 やっぱり垢でもクソでも、人の役に立ってるやつはえれーよ。

 

 うちの親父なんかよ。

 人間なのに、時々うんこ以下だぜ。


 

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