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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
3/40

3 『浦島太郎』


 うーっす。

 今日もあっちーな。

 ほんと、暑くて死にそうだべ。


 おめーら、水だけはちゃんと飲めよ。

 あと、俺と同じような体動かす仕事のやつは、塩飴、舐めとけ。

 無理してっとよ、マジぶっ倒れんぞ。


 ってことでよ。

 夏本番ってことで、今日は海の話をしようかと思ってよ。

 ちょっとでも涼しいほうがいいと思ってさ。


 ものすんげー昔のことよ。

 浦島太郎って兄ちゃんが砂浜歩いてたんだって。


 そしたらよ、クソガキがでっけー亀いじめてんの。

 俺よ、こういうの聞くだけでイラついてくんだよね。

 動物イジメるとかマジで許せねーよ。

 アイスの蓋の裏をべろべろ舐めまわすやつよりムカつくぜ。

 俺、あれも嫌なんだよね。


 んでよ!

 こっからがまたすげーの!

 なんと、亀が日本語喋って来たんだってよ!


 いやー、昔ってすげーよな。

 だって動物が喋るんだぜ?

 桃さんのときもそうだったけどよ。

 マジ、羨ましすぎるぜ。


 そういやよ。

 昔は、殿様とかちょー強かったらしいじゃねえか。

 なんかゲームとか見てると織田信長とかがビーム光線出してるしよ。

 カオスすぎだろ、江戸時代って感じだよな。

 多分、信長にはキムラ先輩も勝てねえな。


 あ?

 織田信長は江戸時代じゃない?

 マジかよ。

 昔ってぜんぶ江戸時代じゃねーのかよ。

 勘違いしてたわ。

 ま、どうでもいいけどよ。


 でよ。

 その亀が言うにはよ、背中に乗れって言うわけ。

 竜宮城っつー、すげー美人がいる城に連れて行ってくれるんだってさ。


 これ聞いてよ、俺ぁびびったぜ。

 そんなクソ昔にも、竜宮城ってあったんだな。

 

 俺もキムラ先輩と時々行くんだよ。

 大宮の桜木町にあるキャバクラ『竜宮城』。


 え?

 その竜宮城とは違う?


 嘘つけよ。

 ナンバー1のアケミちゃん、超美人だぜ。

 ちょっとおねだり上手で大変だけどよ。

 いや、もちろん本気じゃねーよ?

 俺にはユミがいるからよ。


 でよ。

 浦島の兄ちゃん、亀に乗って竜宮城に行ったわけ。

 

 そしたらやっぱり超マブい乙姫っつー女が出てきたわけ。

 で、どんなエロいサービスがあるかと思ったら、なんか鯛とかヒラメが踊り出したんだって。

 

 ったく、がっかりだよな。

 浦島の兄ちゃん、同情するぜ。

 魚類の踊り見てなにが楽しいんだっつーんだよな。

 

 でよ。

 そうは言っても美味い飯とかめっちゃ食わせてくれたらしいのよ。

 美味い飯っつったらなんだろな。

 多分、ステーキと寿司だな。

 高い食いもんつったらそれしかねーべ。

 俺の予想だと、すたみな太郎みたいな感じだと思うぜ。


 でよ。

 いよいよ帰る日になったわけよ。

 そしたら乙姫のねーちゃん、お土産くれるっつーわけ。

 なんとか箱って名前だったけど、わり、名前忘れちまったぜ。


 んで、乙姫のねーちゃんが言うには、この箱は絶対あけちゃだめって言うのよ。

 いやいやちょっと待てやと。

 そう思うわな。

 そう思うべ?

 あけちゃダメなもんをプレゼントするとか意味わかんねーし。


 でもよ、女っつーのはたまにそうやって意味が分かんねーこと言うよな。

 ありゃなんなんだろな。

 こないだユミが読んでた少女漫画にも書いてあったんだよ。

「大っ嫌い! ほんと大っ嫌い! こんなにも大好きにさせるあんたなんて大っ嫌い……」

 ってよ。


 いやどっちだよ! って思ったぜ。

 ユミはそれ見て泣いてるしよ。

 ほんと、わけわかんねーよな。


 でよ。

 浦島の兄ちゃん、地上に戻るとやっぱりその箱開けちゃったんだよ。

 そしたらよ、もくもくって白い煙出てきて、浦島の兄ちゃん、爺さんになっちまったんだって。


 まじでめでたしめでたしだよな。


 ……とはいかねーだろ!

 

 いや、乙姫のねーちゃん、それはねーだろ!

 お礼にくれたんじゃねーのかよ!

 わけわかんねーよ!


 ……これ、俺の予想なんだけどよ。

 乙姫のねーちゃん、多分、浦島の兄ちゃんとデキてたんだな。

 んで、もう2度と会えない浦島の兄ちゃんが、地上で他のねーちゃんとデキねえようにジジイにしたんだよ。


 いやあ、女ってのはこえーよな。

 お前らも、浮気とかマジ気をつけろよ。

 俺も、キャバクラ『竜宮城』のアケミちゃんからは手を引いとくぜ。



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