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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
26/41

32 『鉢かづき姫』


 こんにちはッス!


 いやーお久しぶりっすね。

 自分っすよ。



 シンジっす。



 今日はダイゴさんの代わりに来ました。

 あの人、今「日本海溝のダイオウイカ」を見に海洋研究所の潜水艦に同乗してるらしいっす。

 だから自分が代わりにお話をさせてもらうッス。


 ……なんすか。

 その露骨に嫌そうな顔は。


 え?

 あなたを見る目が怖い?


 やだなー。

 目が怖いなんて――









 頭の中はもっとおぞましいですよ。



 ま、そんな話はどうでもいいんス。

 じゃ、早速はじめるっすよ!


 昔々、ある所にッス。

 お金持ちの庄屋が住んでいたんッス。


 庄屋の主人はある日、観音様のお告げがあってその娘に大きな鉢をかぶせてしまったんス。

 すると、どうにもこの鉢が取れなくなってしまって、それから娘は鉢を被ったまま生活する羽目になったんっす。


 この娘は色々あって公家の家で奉公することになるんス。

 そして、そこで働いている内、公家のお偉いさんの息子の一人がこの娘に惚れてしまうんス。


 でも、他の兄弟は大反対するんス。

 顔の見えないひとを奥さんにするなんて、と。


 そこで、娘の鉢が割れて、その顔があらわになったんス。


 すると――

 娘はとても美しく成長していたんっすよ。

 兄弟たちは反対することをやめて、二人は結婚して幸せに暮らしたんっすね。



 ……いや、実を言うとっすね。

 自分、この話を誰かにしたくてたまらなかったんすよ。


 どういうことかって言うとっすね。

 自分この間――
















 “現代の鉢かづき姫”をみつけてしまったんス。



 いやこれ、マジなんすよ。 


 この間のことっす。

 自分、いつものようにダイゴさんをストーキングして家までついて行ったんス。


 で、近くの電柱の影からダイゴさんの部屋の様子を見てたんすね。


 え?

 さらっとストーカーするなって?


 まあ、そこはいいじゃないですか。

 自分で言うのもなんですけど、僕は――



 話が通じる相手じゃないんですから。



 まあその話はおいといて。

 大事なのはここからなんすよ。


 そこでじっと待ってたらっすね。

 一人の少女が歩いて来たんス。


 それはそれは異様な少女だったっす。


 真っ黒なセーラー服を着ていて。

 先っぽに球体のついた杖みたいなものを持っていて。

 肩には3本足のカラスを乗せていて。


 とにかく異常な存在感だったっす。


 でも、自分が一番ぎょっとしたのは――



 その少女は分厚い前髪が顔の全てを覆っていて、全く顔が見えないんす。

 

 そう――

 まるでさっき話した鉢かづき姫のように。


 でも、その時っス。

 急に風が吹いて、少女の分厚い前髪が舞い上がったんす。


 で。

 その顔が一瞬、まともに見えたんです。


 その瞬間。


 

 自分、金縛りにあいました。


 その少女のあまりの美貌に。



 全身にさぶいぼが立ちましたよ。

 恐ろしいくらいに顔が整ってましたから。


 気付いたら少女はいなくなってました。

 ちょっと追いかけたんすけどね。

 それから、2度と見かけたことはないっす。



 で、ですね。


 実は最近、その子のことが頭から離れないんっす。

 寝ても覚めても、あの少女のことばかり考えてしまって――



 なんか、ここが苦しいんっす。



 今まで色んな人を好きになって来たけど――こんなこと、今まで一度もなかったっすけどね。

 この感じ、一体何なんすかね。

 最近はアニメにもストーキングにも身が入らなくて。


 ……でも。

 すげー苦しいんっすけど――




 どこかちょっと幸せなんす。




 はあ――

 あの不思議な「鉢かづき少女」。


 一体、どこの誰なんッスかねえ。



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