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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
22/40

27 『一寸法師』



 ……おっす。


 いや、すまねえな。

 今日はちっとセンチメンタルになっちまってんのよ。


 あ?

 なんかあったのかって?


 そりゃおめー……

 もう8月も終わり、だぜ?


 なんつーかよ。

 この時期っつーのは祭りのあとみてーでよ。

 ワケもなく寂しいじゃねえか。


 夕暮れのとき。

 オレンジに染まった町にひぐらしが鳴いてよ。

 徐々に陽が短くなってきて。


 燃えるような夕日を見ながら、こう思うわけよ。


 ああ――



 今年も夏が終わるなって。 



 ほんと、せつねーよな。

 でもよ。

 この夏の思い出が、そのせつねー時期を妙に魅力的にするのよ。



 ……ん?

 あれ?

 いや、ちょっと待てよ?


 よく考えたら俺――














 今年の夏、特になんもしてなかったぜ。




 べつにイベントもなかったしよ。

 感動的なフラグは全く立たなかったぜ。


 つーか。

 休日はほとんど大宮のイオンにいたしな。

 夏の思い出なんか一つもねーわ。


 大体、夏なんてよ。

 ただただあちぃだけだしよ。


 言うほどいいもんじゃねーよな!

 

 やっぱよ、季節は春と秋が過ごしやすくて最高だぜ。



 じゃ、今日も始めんべ。


 ちょー昔の話よ。

 あるところにジジイとババアが住んでたのよ。


 二人には子供がいなくてよ。

 ある日、神様にこう頼むのよ。


「神様。親指ほどの大きさでいいから、私たちに子供をお授けください」


 謙虚なのかそうでもねーのかよく分かんねえ願いだけどよ。

 とにかく神様はこの願いを叶えてくれたのよ。


 親指ほどのガキはよ、一寸法師って名付けられてすくすく育つのよ。

 で、街へ出て世界を見てみたいって言うわけ。


 一寸のガキ、お椀に乗って川を渡って行くのよ。

 んで、そこで美しいお姫様に出会うワケ。


 でよ。

 そのお姫さんを家に送っている途中によ、鬼に出会うんだよ。


 超こえー鬼だよ。

 普通は逃げるべ。


 でもよ。

 この一寸法師、そのちっちぇえ体で、鬼に挑むのよ。


 いや、こいつは勇気があるぜ。

 どうみても勝ち目がねえのに、立ち向かう勇気。

 大事なのはこれだぜ。


 勝てるかどうかは分かんねえけどよ。

 立ち向かわなきゃ100%負けなのよ。


 勝てるかどうかわからない戦いに挑むと言えば――


 

 お待たせしました。



 埼玉の一寸法師こと、キムラ先輩だよな!



 そう。

 みんな大好き、バツイチ子持ちの“アイプチおじさん”よ。


 今日はそんな全国に8人はいると言われてるキムラファンのためによ。

 久々の報告と行こうじゃねえか。

 

 最近の先輩はよ。

 ついにチークとかマツエクまでし始めてよ。


 本格的に立ち向かい始めてるよ。

 “美”に。


 いや。

 というより最近じゃもうはっきり“女子高生”を目指してるよ。

 もう、孫ギャルと化してるよ。


 そう。

 先輩は――



 Kawaiiに立ち向かってんのよ。



 まあ一寸法師と違って――


 先輩の戦いは100%負け確定だけどよ。


 はっきり言って、本物の女子高生とは真逆だよ。

 彼女たちは化粧を覚えてどんどん綺麗になっていくけどよ。


 キムラ先輩は――



 どんどん浮世離れしたルックスになってきてるよ。



 フリーザで言うと、今ちょうど第3形態よ。

 そう。

 あのエクレアみてーな頭の時だぜ。


 いっそ第4形態まで言ってくれればよ。

 もうちょっとスッキリしたフォルムになると思うんだけどな。


 未だにパンチパーマだけは健在よ。


 ま、本人が満足してるようだからよ。

 ファッションっつーのは、それが一番だよな。


 というわけでよ。

 これからも定期的にキムラ先輩の美容情報をお送りするぜ。


 あ、一寸法師は鬼を退治して打出の小づちを手に入れて大きくなって姫と結婚したらしいわ。


 まじでめでたしめでたしだぜ!



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