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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
21/40

26 『七夕物語』


 やあ。

 こんにちは。


 今日も来てしまったよ。

 私だ。



 ダイゴの父親だ。



 え?

 今日はまたダイゴがどこかへ出かけたのかって。


 はっは。

 いやいや。

 今日はね。



 私の意志で来させてもらったよ。



 ああそうだ。

 どうしても、君のことを思い出してしまってね。


 ん?

 なんだい? 


 その嫌そうな顔は。

 その、蔑んだ目は!


 全く君は本当に失礼な奴だな。

 その無礼な顔――







 やっぱり素晴らしいじゃないか!

 もっと見てくれたまえ!

 ゴミクズのようなこの私を!

 そのゴキブリを見るような目で!

 たっぷり見てくれたまえ!



 ……すまない。

 ついつい、いつもの癖が。


 しかし思った通り、これはSの才能がありそうだ。

 この私としたことが、つい興奮してズボンを下ろしてしまったよ……。

 この人、やはり伝説のSの血を継ぐ者では――。



 ……ああ、すまない。

 こちらの話だ。


 それじゃ、早速始めようか。


 昔々、天空に彦星と織姫という若いカップルがいたんだ。

 二人はとても愛し合っていてね。

 お互い、天の仕事を放っぽいて、いつも隠れて逢引きしていたんだ。


 すると、それを見ていた天帝様がお怒りになってね。

 二人を引き離してしまったんだ。


 二人はそれはそれは悲しんでしまってね。

 いよいよ仕事が手につかない。


 それを見かねた天帝様は、年に一度だけ、七夕の日だけ二人を合わせてあげることにしたんだ。


 私はね。

 この話を聞いたとき、思ったんだ。


 天帝様は――















 絶対素晴らしい女王様になれるってね!



 だってそうだろう!

 一年もの間、焦らされる者の気分を考えてみたまえ!


 焦らしプレイというのはSMの基本だ。

 だが、普通は5分とか10分とか、長くても一時間くらいだ。

 それが天帝様と来たら――



 一年も待たせるんだよ!



 なんというSだ!

 最低で、最高の女王様じゃないか!


 それはもうたまらないよ!

 もう2度と会えないわけじゃない、というのがポイント高いよ!

 

 

 ……ごほん。

 ああ、すまない。

 またぞろ、興奮してしまったよ。


 とにかく、織姫と彦星はそうやって逢瀬を重ねて、永く永く愛し合ったそうだよ。


 本当に、めでたしめでたしだったよう――ん?

 


 なんだね、君たちは?

 私になにか用かね?


 な、なんだ。

 やめたまえ。

 なにをするんだ。


 無礼者!

 話があるなら先に名乗りなさい!

 それが大人というものでしょうが!


 え?

 話は署で聞く?

 さっき、この店の店員から露出魔がいると通報があった?


 はっは。

 なるほどなるほど。

 そういうことですか。


 私としたことが。

 話に夢中で、ついつい、ズボンをあげるのを忘れてしまっていたよ。


 やあやあ、悪いね。

 それじゃあ、私は用事が出来たのでこの辺で失礼するよ。


 え?

 大丈夫なのかって?


 ああ、心配はいらないよ。

 このくらい、いつものことだからね。


 それじゃ、ダイゴには君の方からよろしく伝えておいてくれたまえ。

 


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