表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
18/41

21 『牛に引かれて善光寺参り』


 ……うっす。


 あ?

 今日はリーゼントじゃないのかって?

 

 そうなんだよ。

 今日はちっと落ち込んでてよ。


 いやー世の中にはよ、色んな“罠”があるよな。

 オレオレ詐欺もあるし、ねずみ講なんかも気をつけねーといけねーよ。


 ……でもよ。

 じゃあこの世で一番の罠はなんだっつったらよ。

 俺ぁ――



 夢の中のトイレだと思うのよ。



 俺ぁちいせえ頃、おねしょする時はいっつも夢の中で小便してたのよ。

 途中で夢だと気づけばいいんだけどよ。

 まだガキのころはよ、たまに夢と同時にやっちまうんだ。


 ありゃ本当にトラップだぜ。

 社会のどんな罠より狡猾だぜ。


 ……いや、実はよ。

 ここだけの話だけどよ。

 俺ぁその罠に――



 昨晩、久々にハマっちまったぜ。



 まさか大人になって寝小便かましちまうとはな。

 さすがに自分でもドン引きだぜ。


 カーチャンはもっと引いてたけどな。

 でも親父はなぜか妙に優しかったぜ。


 とにかくよ。

 だから今日の俺ぁ――


 リーゼントにする資格がねーんだ。


 やっぱ昨日スイカ食べ過ぎたのが敗因だぜ。

 おめーもトイレの夢を見たときは気をつけろよ。


 じゃ、今日も早速始めんべ。 


 すんげー昔、あるところによ。

 スーパー強欲なババアがいたワケ。

 このババア、嘘ばっかついてよ、人から金をだまし取って生活してたワケ。


 そんなある日、ババアの持ってた着物をよ、牛が頭にひっかけて逃げちまうんだ。

 ババアはケチだからよ、そのまま善行寺っつー寺まで追いかけるのよ。


 でよ。

 このババア、その善光寺でえれぇ坊さんにあってよ。

 信心に目覚めたの。

 んで、そっからは真面目になったらしいのよ。


 いや、災い転じて福をなすじゃねえけどよ。

 悪いことが起こっても、それがきっかけで人生がよくなるってことはあるんだよ。


 実は俺もよ。

 この善光寺婆さんと同じような体験したことがあるわけ。


 ある日のことだよ。

 俺が焼きたてのメロンパン買いに道を歩いてたらよ、女の子が迷子になってたのよ。

 こりゃ大変だっつって、俺ぁ交番に連れていったワケ。


 その途中よ、女の子は道々、色んな話を聞かせてくれたの。

 女の子はすげーいろんな昔話知っててよ。


 そんですっかり仲良くなっちまって。

 交番に行くのも忘れて、夢中になって路上で話しまくってたのよ。


 そしたらよ……















 警察に逮捕されちまったよ。



 なんか、通行人に通報されちまったらしくてよ。

 完全に変態野郎と間違えられちまったワケ。


 結局、俺ぁ交番に連れていかれてよ。

 いくら弁明しても聞いてくれねーわけよ。


 やっぱり見た目がよくねーんだろうな。

 金髪リーゼントの上下ジャージ野郎が、幼稚園児と熱心に話してたんだからよ。

 もう最初から犯罪者扱いよ。


 でもよ。

 その時、交番にでっけー声が鳴り響いたのよ。


 「そのお兄ちゃんは、おっきなお友達なんだよ!」


 ってよ。


 まあその表現もちょっと誤解されそうだけどよ。

 とにかく女の子のその一言おかげでなんとか助かったワケよ。


 その子は泣きじゃくってよ。

 俺が友達だってことを警察に必死に訴えてくれたぜ。


 ……もう気付いたべ?

 そうよ。

 その女の子こそ――


 俺の師匠、マドカさんよ。


 それから、俺ぁマドカさんに弟子入りしてよ。

 昔話に目覚めたワケ。


 世の中、思ってもみなかったことから良い方に導かれるってこともあるもんだべ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ