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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
14/40

14 『シンデレラ』


 あ、こんにちは。

 えっと、今日はダイゴが来れないって言うから、代わりに来ました。

 

 初めまして、ですよね。

 アタシ、ユミって言います。


 ごめんね。

 ダイゴのやつ今、ツチノコを探しに富山まで行ってるの。

 だからアタシが代わりに来ました。


 ……え?

 敬語はいらない?


 あっは。

 そう言ってもらえるとマジ助かるよ。

 アタシ、敬語とかチョー苦手だからさ。


 いやー、でもさ、いつもダイゴの話につき合ってくれてアリガトね。

 なにしろあいつさ、



 『バカ』



 でしょ。


 だからさー、話聞くだけでも大変だと思うの。

 キミは忍耐強いと思うよ、マジでさ。


 それか、よっぽどの変わり者だね。

 アハハ。


 じゃ、早速本題に入ろっか。


 これ、チョー昔の話なんだけど。

 あるところに、シンデレラって女の子がいたワケ。


 この娘には本当のお母さんがいなくてさ。

 義理の母親と二人のお姉さんがいたの。

 

 でさ。

 シンデレラはいつもこの3人にいじめられてたワケ。

 掃除を押し付けられたり、意味なく叩かれたりさ。


 ……ごめん。

 ちょっと昔を思い出しちゃってさ。


 実は私も、お母さんがいないの。

 そのことで、クラスでいじめられたりしたからさ。


 だから、このシンデレラの気持ちがよく分かるの。

 今ならいじめっ子なんかにゃ負けないんだけどさ。


 でさ。

 ある夜、3人はお城で開かれる舞踏会に呼ばれるワケ。

 でも、当然シンデレラはお留守番。

 家で一人、掃除をしていたの。


 そしたらさ。

 ナンカいきなり魔法使いのバーチャンが現れてさ。

 シンデレラをお城に連れて行ってあげるっていうワケ。


 でさ。

 みすぼらしい服をドレスに。

 ぼろぼろの靴をガラスの靴に。

 ネズミとかぼちゃを白馬と豪華な馬車に。

 魔法で変えてくれたの。

 

 素敵。

 とっても素敵だわ。


 アタシも昔ビンボーだったからさ。

 毎日毎日、家で一人で想像してたの。

 私にも、こんな夢みたいな事が起こらないかなあって。


 ……でもさ。

 ガラスの靴はないわよね。

 

 あんまり言いたくないけどさ。

 ダサいし、履きにくいと思うのよ。


 私は魔法で変身できるなら、靴はフェラガモのヒールがいいなー。

 ううん、そんな贅沢は言わないから、ダイアナのパンプスでいいよ。

 でもさ、こないだ行ったイオンのモールにさ、アニエスベーのショップが入ってたの。

 そこでさあ、チョー可愛いブーツがあって――


(以下、好きな靴ブランドの話が30分続く)


 ――だったワケ。

 ほんとさ、目移りしちゃうわよね。

 あーあ、ダイゴ、今度の「出会ってから5年3か月記念」になんか買ってくれないかなー。


 あ、ごめ。

 チョーごめ。

 話がそれちゃったわね。


 でさ。

 シンデレラ、お城に行くワケ。

 そしたらそこに、イケメンの王子様が現れるの。

 

 そしてなんと、王子様はシンデレラに惚れてしまうの!


 ああ、なんて素敵な話なんだろ。

 私もイケメンの王子様に一目ぼれされてみたい!


 え?

 私にはダイゴがいるじゃんって?


 そうなんだけどさー。

 ダイゴって、ホリが深くてカッコイイ顔してると思うんだけど、インド人みたいな顔してんのよね。

 ちょっと白馬の王子様ってタイプじゃないワケ。


 いっつもダッサいリーゼントだしさ。

 言葉使いも悪いし、ありえないほどガニ股だし。


 ……ま、そういうとこも含めて好きになんだけど。


 でさ。

 シンデレラと王子様はフロアで踊るわけ。

 悪い令嬢の3人は「キー!」ってなるんだけど、マジざまあ、よね。


 でもさ。

 そこで、日付が変わる間近、シンデレラは思い出すのよ。


 バーチャンの魔法は12時に切れるって。

 

 シンデレラは急いで逃げ出すわけ。

 ほら、12時を過ぎたらいつものみすぼらしい姿に戻っちゃうからさ。


 で、階段を降りてる時に、ガラスの靴が片方脱げちゃうの。

 取りに戻ろうとするんだけど、もう時間が来ちゃうから、そのまま靴を置いて逃げるのよ。

 王子様はそれをひろってさ、シンデレラを探す手掛かりにするワケ。


 ……ないでしょ。

 いや、これないわよね。


 だってさ、どうしてガラスの靴だけ魔法が解けないのよ!

 他のドレスとか馬車は元に戻ってんのにさ!


 おかしいじゃん!

 アタシ、こういうの我慢できないのよ!

  

 え?

 それを言うならそもそも魔法なんてないんだからって?


 アハハ。

 まあ、そうね。


 けどさ。

 この世界に、魔法はあるよ。


 アタシ、知ってるもん。

 でもね、現代の魔法は、それを本気で信じてる人にしか効かないの。

 きっとね。


 嘘つけって?

 ふふ。

 キミも、ダイゴ見てたらきっといつか分かる日が来るよ。


 でさ。

 結局、王子様がガラスの靴がぴったりのシンデレラを見つけ出して、二人はお城で幸せに暮らしたんだって。


 マジでチョーめでたしめでたしよね。



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