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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
12/40

12 『ヘンゼルとグレーテル』


 ある村にヘンゼルとグレーテルっていう兄妹がいて家がビンボーだから二人は森に捨てられたんだってよ。



 ……びっくりしたか?

 今日はいきなり始めてみたぜ。

 驚いたべ?


 しかしひでー話だよ。

 俺ぁよ、こういう話聞くとマジ許せねーんだ。


 食わせていけねーならガキなんて作るんじゃねーよ!

 ガキどもが一体何したって言うんだよ!

 偉ぇやつはこういう事件を何とかしろよ!


 ……わり。

 怒りのあまりちょっと社会を斬っちまったぜ。


 え?

 仰る通りだけどさっきからチャックが開いてる?


 ……うるせー。

 開けてんだよ。


 でよ。

 二人は森の中を彷徨い歩くわけ。

 人気のない森よ。

 

 ……こえーよな。

 マジでこえーよ。

 自分に置き換えたら超こえーよ!


 え?

 見知らぬ森に取り残されたら怖いよねって?


 ちげーよ!

 そうじゃねえよ!

 俺ぁよ……



“妹と二人きりになるの”がこえ―んだよ!



 森とかそういうのはどうでもいいんだよ!

 妹が怖ぇんだ!


 どういうことかって?


 いやよ。

 実はよ。

 俺には年の離れた妹がいるのよ。


 今中学生でよ。

 ヤヨイって名前なワケ。


 まあ、可愛い顔してるよ。

 キレーな黒髪でよ、日本人形みてーだっつってよ、昔は親戚中から褒められたもんだよ。

 別にヤンキーってわけでもねーしな。

 

 じゃあなんで怖いのって?

 いや、それがよ。


 ……あいつ、すんげーオカルトに詳しいのよ。


 黒魔術とかが大好きなんだよ。

 いっつも分厚くて黒ぇ本持ち歩いてんの。

 夜中とか、ロウソク焚いて、床に魔法陣とか書いて部屋でなんかやってんのよ。

 

 んで、なんか召喚の儀式してんだよ。

 時々、部屋から「んぎゃぴー」って鳴き声がすんだよ。

 あれは一体なんの鳴き声なんだよ。


 あ?

 なにもそんなにビビらなくても?


 ……あのよ。

 俺ぁよ、どんな不良も怖くねーよ。

 どんなつえーやつでもかかってこいってなもんよ。


 でもよ……。



 ヤヨイだけはチビるくれーこえーんだよ!



 分厚い前髪で顔はほとんど見えねーしよ!

 気付いたらいつの間にか背後にいるしよ!

 時々、背中におぶさってるしよ!

 ほとんど上下せずにホバリングみてーにして歩くしよ!


 ……いや、もちろん妹のことは愛してるけどさ。

 ちょっと趣向がホラーすぎんのよ。


 でよ。

 ヘンゼルとグレーテルは森の中を彷徨うのよ。

 そしたらよ、ババアが住んでる家を見つけるんだよ。

 で、身寄りのない二人はそこでお世話になることを決めるワケ。


 でもよ。

 そのババアはよ、実は悪い魔女でよ。

 なんと……

 

 子供を集めては殺して食べてたのよ。

 

 怖えよ。

 超怖えよ。


 でもよ。



 多分、うちの妹の方がつえーよ。



 妹がもしこの状況になってみろよ。

 ヤヨイは絶対、この魔女をやっつけちまうぜ。

 あいつは心優しい奴だけどよ、悪ぃ奴には容赦しねーんだ。


 何度も言うがよ。

 ヤヨイの黒魔術は……本物なのよ。


 と、言うのもよ。

 俺ぁ昔……見ちまったんだよ。


 昔、近所にワルで有名なチンピラがいてよ。

 みんな迷惑してたのよ。


 そんなある日、ヤヨイはそいつの藁人形作ったのよ。

 んでそれを魔方陣に置いて、呪文を唱えたワケ。

 そしたら次の日よ、チンピラの自慢のリーゼントがよ……















 サラッサラヘアーになってたのよ。



 その日から、チンピラがどんなきついパンチパーマをかけても次の日にはサラサラに戻るのよ!

 ヤヨイの力は本物なんだよ!


 ……結局よ。

 チンピラはカッコつかなくてよ、真面目に働くようになったよ。


 でよ。

 ヘンゼルとグレーテルの方もよ、まあなんだかんだあって、魔女を倒して二人とも一緒に幸せに暮らしたんだって。


 両方とも、マジで結果オーライだよな。



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