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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
10/40

10 『裸の王様』


 ……うっす。

 わり……ちょっと待たせちまったな。


 あ?

 今日なんか元気ないっすねって?


 そうなんだよ。

 実はよ、最近すげー悩んでることがあってよ。

 ……まあ、いくら悩んでも解決しねーことなんだけどよ。


 え?

 聞くだけ聞いてやるって?

 おう、おめー、時々やさしいな。


 いやよ。

 ラーメン屋とかうどん屋に入るとよ、たまに「大盛無料」って店があるだろ?

 あれってよ、あんまりお腹が減ってないとき、大盛にしないとちょっと損した気分になるべ。

 でもよ、かといって無理して大盛食べると気持ち悪ぃしさ。

 とはいえ、大盛注文して残すなんてもっての外だしよ。


 一体どうするのが正解かと思ってよ……。

 そう思うと夜も眠れねーのよ。


 ま、こんなこと自分で解決するしかねーよな。

 でも、聞いてもらえただけでちょっとすっきりしたぜ。


 じゃ、そろそろ本題に入るとするか。

 今日もいいネタ、仕入れてきたからよ。


 今日はまた外国の話なんだけどよ。

 外国の、王様の話よ。


 ものすげー昔の話だよ。

 とある町によ、服の仕立て屋がいたんだよ。


 こいつがわりーやつでよ。

 王様に「バカには見えない服」つって、なんもないのに服だって嘘ついて売りつけたの。

 王様もよ、自分がバカだって思われたくねーもんだから、それをみすみす買っちまうわけだ。


 いや、分かるぜ。

 人間よ、なんか無駄に見栄を張っちまうことってあるよな。


 俺もよ、こないだ電車に乗ってたらよ。

 妙に向かいに座る兄ちゃんがチラチラ俺の股間見てくるなと思ったら、俺、ズボンのチャックがあいてたのよ。


 でもよ、そこで慌ててチャックを上げたらよ、なんか負けた気がするだろ?

 だから、意地でもあげなかったワケ。

 むしろ見てくれって感じで股を広げてたのよ。

 こうなると俺と兄ちゃんのタイマンだよな。

 俺ぁ、ぜってー負けねーつって、そうやって目的地までずっとチャック開けてたのよ。


 ……そしたらよ。


 その兄ちゃんに写メ撮られてツイッターに晒されてたわ。


 しかも妙にバズッちまってよ。

 チャック全開のヤンキーっつって、トレンド入りしちまったのよ。

 あとでユミに何やってんのよってマジギレされたぜ。

 

 マジ、ネット社会の闇だよな。

 おめーも気をつけろよ。

 

 でよ。

 王様は「バカには見えない服」を着て、そのままパレードに出かけるんだよ。

 当然、そんな服は存在しねーから、王様はパンツ一丁だよ。

 国民はみんな心の中で大笑いよ。


 俺は思ったよ。

 この話……


 王様がおっさんじゃなくて美人の女王様だったらよかったのにって。


 それならよ、多分、国民は大満足よ。

 女王様も騙された甲斐があるってもんだよ。

 

 もしくは、超イケメンの王子様とかよ。

 ユミとかキャーキャー言って喜ぶぜ。


 そしたら、きっとだれも「王様は裸だ!」なんて言わねーよ。

 もったいなくてよ。


 それならきっと、めでたしめでたしだったよな。


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