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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
1/40

1 『桃太郎』


 なんかよー、すげー昔よー、クソ田舎にジジイとババアが住んでたらしいのよ。

 そんで、ジジイは山に木をシバキに、ババアは川に服洗いに行ったらしいの。


 そしたらよ、いやこれマジ笑うんだけど、ババアが川で服を洗ってたらでっけー桃が流れてきたっつーワケ。

 それも、どんぶらこ、どんぶらこ、なんつーダッセー音がしたとかなんとか言っててさ。

 どんぶらこってなんだよとか思って笑ってたら、これがマジだっつーんだからやべーよな。


 でよ。

 ババアはこの桃を持って帰ってジジイに見せたらしいのよ。

 そしたらジジイ、早速食おうぜってなもんで、奥からドス持ってきたわけ。


 ねーわ。

 いやマジねーわ。

 だってよ、普通、拾ったもん食わねーべ。

 

 でよ。

 ジジイが桃をぶった切ったら、中からガキが出てきたの。

 ジジイとババア、マジびっくりよ。


 いやー、ぶっちゃけよー、俺、この時の二人の気持ちよく分かるぜ。

 俺もよ、ユミからアレが来ないって言われたとき、すっげーびっくりしたもん。


 いや、別に嫌とかそういうんじゃないのよ。

 なんつーかなー。

 俺もまだわけーし、覚悟が決まってなかったんだと思うわ。


 あ、ユミっつーのは俺のオンナな。

 こいつがまた生意気でよ。

 結局妊娠はしてなかったんだけど、責任取れだなんだってぎゃーぎゃーうるせーのなんのって。

 ま、そういうとこも愛してるんだけどさ。


 でよ。

 ジジイとババア、このガキを育てるって言いだしたわけ。

 

 いや、いい爺さんと婆さんじゃねーか。

 俺ぁ、ちょっとうるっときたぜ。

 ガキ育てるってのは生半可な気持ちじゃ出来ねーよ。

 それも自分のガキじゃねーんだから、そりゃあ大変だぜ。


 キムラ先輩も言ってたんだよ。

 連れ子のガキはなかなか懐かねーから面倒くせーってよ。

 ま、それでもやっぱガキは可愛いつってたけどさ。


 でよ。

 このガキ、桃太郎とかだっせー名前つけられて、すくすく育ったらしいのよ。

 しかもこいつ、めちゃくちゃ喧嘩がつえーと来てる。


 あんまり強すぎて、なんか鬼をぶっ殺しに行くとか言い出したの。

 いや、最初にそれきいたとき、俺ぁ「マジかよ!」って思ったぜ。

 

 だってさ、鬼だぜ鬼。

 キムラ先輩も昔は『鬼のキムラ』って言われて埼玉じゃ恐れられてたけどよ、マジの鬼は多分キムラ先輩よりつえーよ。

 キムラ先輩でも勝てねーのに、いくらつえーつったって、ガキじゃ絶対勝てねーだろって思ったわけ。


 でも、そいつは行くって言い張るらしいのよ。

 ジジイとババアがいくら説得しても聞かないわけ。


 まあ気持ちは分かるけどよ。

 俺も男だからよ。

 そう簡単に吐いた唾は飲み込めねーよな。


 でよ。

 ガキは日本一っつー旗を背中に差して鬼が住んでるっつー鬼ヶ島とかいうとこに出発したわけ。


 んでよ……えーっと、なんだっけ。

 

 そうそう!

 んでよ、ここからがブリバリすげーんだよ!

 なんかそのガキ、その途中で猿と犬と鳥を仲間にしたんだって!


 え?

 なんでそんな興奮してるのかって?


 いやお前、動物がツレになるんだぜ?

 たまらねえだろうがよ!

 いや、本当言えばさ、俺は猫が一番好きなんだよ。

 ユミんちの猫とか超かわいいんだぜ。

 あ、あとで写メ見せてやるよ。


 でもよ、実は俺、犬も同じくらい好きなわけ。

 ほら、俺って昔犬飼ってたじゃん?

 こいつがさ、汚ぇ雑種なんだけど、やたら俺に懐くんだよ。

 俺、親父にぶっ飛ばされるたびに、そいつのとこに行ってたわけ。

 そしたら、慰めてくれるんだよ、うちのコロちゃん。

 もう死んじまったけど、あいつは今でもマブダチだぜ。


 そういうわけでさ、俺、ちっちぇーころから夢だったワケ。

 動物とお話が出来るのってがよ。

 

 でよ。

 まあなんだかんだあって、そいつはマジで鬼を半殺しにしちゃったらしいのよ。

 鬼ヶ島でもなんか色々あったらしいんだけど、わり、聞いたんだけどあんま覚えてねーわ。


 なんか猿とか犬とか鳥も戦ったらしいけど、その辺もよくわかんねーわ。

 ま、とにかく倒したんだってさ。


 いやーでもよー、すげーよな、そのガキ。

 あいつ多分、キムラ先輩よりつえーよ。


 いや、もうガキなんて言えねーな。

 キムラ先輩よりつえーんだから。


 俺、今から桃太郎さんって呼ぶぜ。

 年下とかそんなの関係ねーよ。

 リスペクトに年齢とかマジ関係ねーべ。

 

 でよ。

 その桃さん、鬼から金銀財宝を取り返して、家に持って帰ったんだってさ。

 鬼のやつらまじでイモ引いてよ、もう2度と悪さはしなくなったらしいわ。


 マジでめでたしめでたしだよな。



次回、鶴の恩返し

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