第1話 女神(アンプタバエナ)(2)
「みなさん、ようこそ我が世界へおいでくださいました」
一段高いステージに舞い降りた女神がにっこりしながら俺達に声をかけてくる。
誰も返事などできなかった。
突然の出来事にみんなあっけに取られているから。
違う。
信仰心なんて皆無の俺でもこの人が「神」とわかる神々しさが伝わってくるからだ。
目の前の存在そのものに圧倒されるというのは、こういうことを言うのだと実感する。
そんな俺達の反応を確かめるようにじっくり辺りを見まわしてから女神が再度口を開いた。
「突然このような場所に来たことに驚ていることでしょうね。この世界の創造神としてお詫びいたします」
女神がにこやかなまま頭を垂れた。
俺達もそれに合わせて頷く。
そこに隣に立つ天使が小声で口を挿んできた。
「神よ! いくら外界の者といっても、畏き神がそのような遜った言い様はよろしくありません。神の御言葉ですぞ、それを自覚して、おっしゃってくださいませ!」
小学生くらいの背丈の男の子だ。
「あら、ラファエル。原因を作ったのはこちら側。元々外界の神の子らを呼び寄せてしまったのは私の世界ですからね。この者たちは我が子ではないのですから、しっかりお話ししないといけないでしょう?」
「しーかーしー! 神の威厳というものがあってですね! それを台無しにしては……!」
なんか女神と天使で揉めている……。
なにも光るものなどないはずのそこから後光が差していて、風など吹いていないのに布や髪の毛がゆらゆら揺れている様は本当に神様らしいのに、二人の言い合いを聞いていると漫才でも見ている気分になってくる。
あ、二人じゃなくって何て言うんだったか? 確か一柱、二柱だっけか? まあ、どっちでもいい。ともかく、せっかくの神々しさが台無しだ。
「すいません! ここはいったいどこですか? 僕達をここに集めて何をしようというんでしょうか? これからどうなるんですか!」
声を上げたのは生徒会長の細井君だった。
ご丁寧に手を挙げて質問している。
「貴様! 神の御前で許しも得ずに発言するなど……!」
「まあまあ、ラファエル。いいのですよ?」
天使が細井君をにらみつけ怒声を発したが、それを女神さんが手で遮ってきた。
「さて、外界の神の子らに何から説明すればよろしいですかしらね?」
にこやかに話してくる女神だが、どうしましょうかね? と腕組みをして悩みはじめる。
そんなに面倒な話なのか? と思っていると、脇から天使が前に進み出てきた。ラファエルとか言われた、お小言を言った天使だ。
「神よ。わたくしからこの者たちに事情を話しましょう」
「えっとー、それは私の役目ではないですか?」
「神よ……さきほどから神の御言葉というものを自覚してと申したでは! ……ええい、黙っていてください!」
「はいはい、わかりました。仕方ありませんね。そこまで言うならラファエルに任せしましょうか」
女神がため息交じりにそう答えると、ラファエルという天使がそれでは、とふわりと俺達の前に浮かぶ。
どこかのマヨネーズのキャラクターみたいなヤツが――頭の毛がちょろっとしかなくて、かわいい顔をしていながら野太い男の声で古めかしい改まった口調でしゃべっているなんて、なんかおかしいよな。
そう思っていると、天使ラファエルはこう宣言する。
「外界の神の子らよ。そなたらは我らが世界の創造神アンプタバエナの御名により、この世界に召された。これよりは、この世界で神の御加護を受け、残りの生を全うするが良い」
野太いが透き通った声が響き渡った。