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水たまりにウインクを

作者: 君我誰女男





家を出る前の30分のこの時間が好きだ。


パソコンを開いて、思ったこと、感じたことを、つらつら書いていく。


俗に言う、日記みたいなものかな。



今日は6月13日の月曜日


天気は…手を止め、耳をすませてみる。


少し、雨が降っているようだ。






自分が生きている理由ってなんだろう。


誰もが一度は考えたことがあるだろう。



僕も時々考える。


なんで、生まれたのが僕だったのか。


僕が生まれた理由…。




それは『必然の奇跡』と言ったら、良いように聞こえるかもしれない。


でも、僕にとっては、『単なる偶然』にしか思えないんだ。



こんな捻くれ者になってしまったのは、自分に嫌気がさすくらい悩み事が多いからなんだろう。


何をしても、人よりも劣っていて、ずば抜けて出来ることもない。



向日葵畑の真ん中で、みんなみんな眩しすぎて、僕は誰からも気づいてもらえなくて、周りに埋まってしまう…


そんな一輪の向日葵みたいな気がする。




漠然としてるけど、将来が不安なのかもしれない。


僕の作った指望遠鏡は、遠い、遠い先を鮮明に見ようとすると、どんどん視野も狭くなって、視界も暗くなって、何も見せなくなってしまった。


踠いても、足掻いても、苦しいだけだった。




こんな僕は勿論、人間関係も恋愛もうまくいくはずがない。


外れた天気予報の土砂降りの雨に打たれたように、人に裏切られたことだってある。


絶対に信じないと誓っても信じてしまう占いのように、もしかすると…と、人を信頼してしまう時だってある。





だから、こんな世の中こっちから払い下げだって、そっぽ向いてやるって思った。





でも、それでも、毎日、雀の聲を耳にしたり、風に服を煽られたり、近所の猫とすれ違ったりしていたら、気がついたんだ。


結局、世界と繋がってしまっていたんだって。





そして、ふと思ったんだ。




2年、3年前、はたまた、5年、6年前の悩みを今思い出せるか?と


考えると無理だった。




多分、今僕がこんなにも頭を抱えて悩んでいることはきっと僕の人生において取るに足らないことなんだって気づくと、世界が広くなってしまった。




僕が生まれた理由? 生きる理由?


そんなもの始めっからなかった。


だから、僕が作ったんだ。



この小説の主人公は、僕だ。


何が何でも、このシナリオ、貫き通してみせる。





人間ってどうしようもない生き物だけど、生まれ変わってもまた人間になりたい


そう思える僕がいる。



正直なところ、時代は暗いし、光も希望もない。


けど、愛を紡いで愛を号ぶんだ。




気高く、凛と生きろ









おっと、いけない。もう、8時前3分だ。そろそろ駅に向かわなくちゃいけない。


パタンっとパソコンを閉じ、その手で鞄をすくう。



靴に右足、左足の順につっこみ、ドアを開け、外の空気に思いっきり体当たりする。








さて、あけましておめでとうございます


本日もあなたにとって、幸多き一日になりますように…


なんて、さっきの続きを心で呟く。




いつの間にか、雨は止んでいた。


なかなか良い青空が頭上に広がっていた。



足元に目をやる。




水たまりの向こうにいる自分に話しかけてみる



「そっちの世界は楽しいかい?」




「上手くやってるよ」



というかのように、向こうの君はウインクした。






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