第1話 出会い
記念すべき第1話が完成?致しました。ようやくタイトルらしくなったような・・・
8月23日、昨日よりも暑い日差し。
魔法科大学付属高校の図書館で間宮緋月はいつものようにタブレット端末を片手にパソコンを操作している。
図書館は夏休みでも解放されており、自習勉強に来る生徒も少なくない。
夏休みの課題こそないに等しいものの、皆はそれに関わらず自分の適性に沿ってカリキュラムを組み、勉強に取り組めるのはこの学校が生徒一人一人の自主性を重んじる自由な校風だからだろう。
緋月(やっぱりお姉ちゃんは凄いな・・・)
昨日、お姉ちゃんに教えてもらった通りにデバイスのプログラムを調整していくデバイスの調整や精密検査にはそのためのプログラムの細かな調整が必要となる。
将来の夢のためにもこういった研鑽を積むことが大事であるが今は自分専用の特化型のデバイスで経験を積むしかない。
流石に自習の時に他人のを使うのはそいつの気が知れない。
(頼まれたら話は別だが)
別に魔工技能師の方が収入がいいからという理由でやっているわけではない、単にモノ作りが好きだからこういう仕事に就きたいと思ったのだ。
緋月(どうも上手くいかないな・・・また引っかかった。仕方ない、特別閲覧室に確か僕の先天性魔法のデータがあったはずだからそこに行ってご相談かな・・・)
緋月は思い立つと図書館の三階にある特別閲覧室に向かう。
特別閲覧室につくと緋月はちょっとした違和感に気づく。
解析装置の横にホコリを被った古めかしい一冊の本が置いてあった。
緋月(なんだこれ・・・掘り出し物のレリックか?)
緋月が本を手に取りページを開くと何も書かれていなかった。
念のため図書館を管理する豊村鈴子さんと面会しその本を見せる。
鈴子「うーん、見たことのない本ね、確かなのはその本がこの学校のものではないということね。」
緋月「え?!そんな事、わかるんですか?」
鈴子「当り前よ、私を誰だと思っているの?」
緋月「天才美少女豊村さんです」
鈴子「正解よ、間宮君」
豊村さんは本当に天才である、この図書館の管理や生徒会の書記、挙句の果てにはクラス委員長まで兼任している。
(ボクだったら過労で死にそう)
彼女自身は点数稼ぎというより、好きでやっているらしい。
(噂ではこの学校は彼女に支配されてるのではないかと)
彼女は面倒なことやきな臭いこと、そして長文を書くことが好きらしく、文を書き出すと目にもとまらぬスピードかつ、綺麗に正確に書ける。
(もはや天才の領域である)
それだけでなく身体能力はボクのお姉ちゃんに勝らずとも劣らずであり、勉学、武芸、家事全般に茶法、運動神経、魔法の実技、どれにおいても誰もが認めるほどの優等生である。
だが電子機械は苦手で電話は600年前のガラケーというものを使っており、デバイスの調整や精密検査ははボク伝手でお姉ちゃんに頼んでいる。
(報酬もたっぷり貰っているとか)
また、豊村さんの家は一条家に連なる家系で彼女も【爆裂】という魔法を得意とする。
(おっと、語りすぎてしまった)
鈴子「取り敢えずこの本は間宮君に返すね、それと後で間宮君の家に行ってもいい?」
緋月「別にいいけど・・・またお姉ちゃんにデバイスの調整を?」
鈴子「まあね、別にいいでしょ?こっちも報酬出しているんだから」
緋月「じゃあまた家で、一応お姉ちゃんに連絡してみる」
鈴子「じゃあ一緒に帰ろうか?すぐ用意するわね」
緋月(!? なんか顔は笑ってないのに・・・なんだろう)※怖いとか言ってはいけない
帰り道、ボクは何故か鈴子さんと歩いている。
緋月(どうしよう逃げられるものなら今すぐ【自己加速術式】で逃げたい)
鈴子「ねえ間宮君、君は夏なのになんでパーカーを着ているの?」
緋月「ボクは豊村さんみたいに日に焼けての大丈夫な身体じゃないし、研究畑で成果を上げる人間だから
日焼けなんてしたら痛くて課題どころじゃなくなるんだよね」
鈴子「ふーん、ところでその本どうするの?」
緋月「そうだな、お姉ちゃんなら何か知っているかも」
家に帰ると昨日と同じ光景がボクを待っていた。
お姉ちゃん、こんどはフ〇ンタのグレープ味ですか。
百合音「あ、お帰り少年、鈴子ちゃんいらっしゃい」
緋月「ただいま」
鈴子「お邪魔します、デバイスの調整と精密検査をお願いしたいのですが」
百合音「いいよー、少年手伝って」
緋月「はーい」
ボクは検査台の彼女と解析装置につないだデバイスに魔力を流し込む。
従来の精密検査はインターフェースを通して魔力と検査用の情報体を検査対象者とその者が使用するデバイスに流し込み、適応力を数値化してチューニングしそこからデバイスのプログラムを調整するのが基本スタンスだが、魔力の源となる原石は高価なためお姉ちゃんは僕の魔力を利用している。
調整と検査が終了するとボクは魔力でできたインターフェースのコードを解放する。
その瞬間である。
???「ふぁ~、よく寝た、ん?ここはどこだ?」
突然どこかから声がした、それにっびくりしたお姉ちゃんと鈴子さんは
鈴子「え?えぇ?!」
百合音「へぇっ?!」
緋月「・・・」
なんだろう、一瞬だが『大佐』という単語が脳裏をよぎった。
見渡すとテーブルに置いてあった本が光っていた。
???「ん?ああ、オレの声を聞いて驚いているのか、悪い悪い、よいしょっと」
本がまぶしく光り出す
鈴子「ヴァーッガ!」
百合音「目が、目がー!」
・・・ お二人さんや、わざとかね?
光が収まるとそこには白く長い髪に青い瞳、身長はボクと同じで140センチくらいで白いワンピース一枚の見た目が女の子が立っていた(これでオレっ子かよ)
???「オレの名はシーナ、エルフの賢者によって作られた【空白の魔導書】だ!」
緋月(いきなり何を言ってんだこの幼・・・ロリっ子は?)
シーナ「オレは予言者のお告げでこの世界にいる『膨大な魔力を有する体質を持った少年』を探し出すためこの世界から来た」
緋月(ますます意味が分からない、もしやバックに某北の国連合軍の残党が?いや、無いか、そもそも今起きたことは精神干渉系魔法ではない、それだったら鈴子さんがすぐに気づく、だからわざとらしいオーバーリアクションをとったのである。
しかしどうやったらいきなり目覚めた?のかはなんとなくわかる、恐らく魔力で構成したインターフェースを解放した時の魔力の余波が魔導書に魔力を与えたのだろう。)
鈴子「それはつまり貴方は異世界から来たってこと?」
シーナ「ご名答、話が早くて助かる」
緋月「それで、正確にはどこから来たんだ?」
シーナ「よくぞ聞いてくれた、正確にはマトラスという世界のエルフの村からきたのだ」
緋月(エルフ?ますます分からん、そもそもあれは仮想の人種だったはず)
と考え込んでいるとシーナと名乗る少女は緋月の傍まで寄り、
シーナ「フム・・・」
緋月「あの、何か?」
シーナ「いや何、改めて見ると君の体からは尋常じゃない魔力を感じるなと」
緋月「まあ、そういう体質ですから」
鈴子「ところでシーナさんは間宮君を探してどうするつもりなの」
シーナ「フム、それに関してなんだがな・・・頼む、オレに協力してほしい、オレの故郷のエルフの村を
救ってほしい、預言者の言うことが本当ならもう時間がないんだ」
百合音「と言うと?」
シーナ「話すと長くなるからかくかくしかじかだ」
緋月「分かるかっ!」
鈴子「ふむふむなるほど・・・3日後に村が魔物の群れに襲われて壊滅するのね・・・」
緋月「え?!分かるの?!」
鈴子「当たり前でしょ、私を誰だと思っているの?」
緋月(そう言えばそうでしたね、この人は!)
シーナ「という訳でお前のその体質を見込んで頼む、助けてくれ、お礼ならいくらでもする」
百合音「でもその異世界?だっけ?そこへは私たちはどうやって行くの?そもそも理論的に可能なの?」
緋月「問題はそこなんだよな・・・ってえ?何で引き受ける形になってんの?」
百合音、鈴子「だって面白そうだから」
ア、ハイ、さいですか というかハモったな、見事に。
シーナ「大丈夫だ、問題ない!」
緋月(どこからその根拠が?)
シーナ「オレは禁断の魔導書と言われていてあらゆる概念や分野の魔法の構築が可能だそれにいざとなれべ辻褄合わせの要らないご都合主義モードを使えばいい!」
緋月(なるほど、マイ〇ラでいうとこのクリエイティブモードみたいなものか、よう分からん!)
シーナ「さあ、この裂け目を通ればオレのいた世界にいけるぜ」
緋月(遊〇王でいうとこの次元の裂け目みたいなやつか、分からん)
鈴子「旅の支度をしなくちゃ」
百合音「出張カバンどこだったかな?」
緋月「何故に旅行気分?!」
鈴子「さっきも言ったじゃん」
緋月「あ、はい、デスヨネ」
3人は旅の身支度を1時間で終えるとシーナと一緒に彼女が作った裂け目を通り、消えていった。
緋月(ホントに大丈夫なのかな、これ・・・)
二話に続く
2話から異世界旅行のキチガイギャグライフです!