第五話
今日もわし視点で物語は進んで行くぞい。
スタートじゃ〜。
呼ばれた方に目をやると、一進と一進と一緒に帰っていた女の子がおった。
しばしの沈黙の後、一進が女の子を紹介しだした。
「若、この子、関谷 莉乃。
俺の友達。で、莉乃、この子がいつも言ってる伊勢 若葉」
「どうも」
簡単に紹介と挨拶をされた。
わしも反応が遅れたが、挨拶を返す。
何じゃ、この子は友達じゃったのか...。
というか、一進は最初から友達と帰る、と言っておったのに...。わしはそれを無意識に嘘だと勘違いしてしまったのじゃ。
「わ、若!?どうした!?何で泣いてんの!?」
「…ぐすっ、…ひぐっ、なんでもっ、ないのじゃ…」
申し訳ない気持ちでいっぱいになって気付いたら泣いてしもうた。
すまぬと何度も謝った。
落ち着いたことを確認して、関谷さんが喋りだした。
「落ち着いたみたいだし、あたし帰るから。じゃ」
スタスタと帰って行ってしもうた。
「で、何でいきなり泣き出したんだ?」
「いや分からぬ。じゃが妙な安心感があるのじゃ」
「安心感?」
「まぁ気にするでない。それより、何故にわしに関谷さんを紹介したのじゃ?」
立って話しておったので、空いておった席に座って話す。
「いや、まぁほら、友達に友達を紹介したいじゃないか。そういう事だよ…」
「む?自慢しに来たということかや?」
「違うよ、ただ三人と仲良くなれたらなって思っただけで」
「まぁ良いわ。一進が友と認める者じゃ、信用に足りよう」
「ありがとう。今日は莉乃バイトがあってすぐ帰っちゃったから話せなかったけど、今度は三人でゆっくり話そう。あと、莉乃の事はちゃんと莉乃って呼んであげて、あいつ自分の名前結構気に入ってるから」
「うむ分かったのじゃ」
友達と聞いて、何故か安心している自分がおる。それが何故なのかはまだ全然分からなかった。
「んじゃ、そろそろ帰るかな〜。帰ろ?若」
「んむ」
帰りは普通に喋って帰ると、いつも通りな下校。
今日の放課後まであった胸の痛みは、綺麗さっぱり無くなっておった。