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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
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逢魔が時の猫③

 それから、小1時間ばかりかかって声明は召喚のための魔方陣を書いた


「何ですか、黒魔術入ってますが、普通の降霊術じゃダメなんですか」


「距離が遠すぎるんじゃ」 


「ふーん」朱雀が言って自分の髪を一束切り取ってサークルの中に置いた


 それから清明が召喚の呪文を唱えだすとサークルの中から光がわいてきてオーロラのようにゆらゆらと


揺れた 。



どこから ともなくコーラスが聞こえてきた  


ミスター ワーンダホー  、ラララララー ミスタービューテホー ルルルルルウー 

 

(相変わらずべたべただな)後ろで正座していた白虎がつぶやいた。


バラの花ビラが舞って


円陣のなかから人影が上がってきた「待たせたな」青竜が言ってにっと笑った 。

 

「お久しぶりです、これお土産です」青竜は優雅な笑みを浮かべて清明にマグロを渡した


挿絵(By みてみん)


「それで何で俺を呼んだ」朱雀の頬を撫でながら言った


話を聞くと「そうか」と言って立ち上がった。


「もう行くのか」と白虎が言うと


「一刻も早く言ったほうがいいだろう」と言って笑った。


 それからパッっとスーツ姿になった


「どうだ、チャラいか?」


「スーパーハードにちゃらいな、手に負えないぐらい・・・・」朱雀が言って手を出した

 

すかさず、青竜がひざまずいてキスした


「ね、一ミリも動じないでしょう」白虎のほうを向いて朱雀が言った


 「なんなら、お前にもしてやろうか」青竜が白虎にちかずいて言った


「いい」 


 即座に言うと「手を出してください」朱雀が低いが感情の渦が籠っているような声で言った。


 「稲荷様に逢うにはそれなりの覚悟が必要なんです」


 仕方なく白虎も手を出した。


 「くくっ」低く笑って青竜が唇を付けて


「それでは行ってきます」と言って出て行った。


  空気に溶け込み空中に舞い上がった青龍は


 屋敷をしばらく見降ろした


 懐かしさは感じなかったが絆を感じた


 そしてその絆は強かった


白虎が本や経済や車を知っているように、青竜は地面や風や海を知っている。


 夜気に包まれて進んだ


それから葛の葉と稲荷様の愛情についても知っていた


 二人とも長い時を生きいろいろな夢をあきらめてきただがあの少年のことになると別だ


あの子は無垢そのものが人間の形をとっているように見える


 青竜の目から見ればそんなに弱くはない、意思も強そうだが、周りはとにかくかまいたがる


 それからそういうのをわざと汚したり、踏みにじったりして喜ぶ者もいる


二人は何とかして守ろうとする


 夢見ることをあきらめても誰の何の役にも立たないで生きていくのは辛い


鳥居の前で印を結ぶとあたりが白い陽炎となって揺らめいた


 その中を進む とびらがあいて侍女が顔をだし「青竜様」と小さく叫んだ


青竜がその唇に指を当てると、相手は真っ赤になった


  中からキイキイわめき声がする  


 もう犬笛のレベルになっている


「かなりすごそうだな」というと侍女は黙って扉を開けた


「入ってもいいかな」言いながら青竜はつかつかと中に進んだ


(スーパーハイフェロモン)歩きながらフェロモンをMAXまで高めた


 女官たちはみんなただ見とれている


奥で何かが割れるガシャーンという派手な音がした


 カーテンを開けて奥の間に入ろうとすると女官が近づいてきた


しーとささやいて、唇に指をあてると真っ赤になってこちらへ と案内してくれた


 「あの子は」声を潜めて聞くと「隔離しました」と答えた


「気を使ってくれてありがとう」


 言いながら中を覗き込む、稲荷は台座の上から睨みつけ、葛の葉もすごい目をしている


 それに早口すぎ、高音すぎ何を言っているかわからないレベルになっている


いきなり葛の葉が立ち上がり、つかつかと台座まで登った


 「なんじゃ、この下郎ここに上がるか、図々しい」稲荷も立ち上がって言った。


その時、いきなりぺちゃんと言う音がして葛の葉の右ストレートがさく裂した


  隣の女官がひっと息をのむ音がした。


 ものすごく痛くなさそうだったが暴力に慣れていない稲荷は唖然として固まった


葛の葉が凛とした声で言った


「いいですかよくお聞きなさい 人が自分のごく身近な人に対して狭量になるのはこの世界がどんなに


複雑で残酷だか知らないからです。  


あなたはそこにふんぞり返っているので人の痛みがわからないんです。


たまには白夜行とか冥府魔道とかあるいたらどうなんですか?」


「何を言う お前はえらそうなことばかり言うが、行動がともなっておらん、だいたい暴力で解決する


 か?」


 「解決とかどーでもいいです かかってこいやあ」


葛の葉がボクシングのような構えをした


稲荷が立ち上がって一括した 「どっこい腹ががらあきじゃあ」


 いながら着物をめくって葛の葉のみぞおちをけった


  「ぐは」といってのけぞった葛の葉は歯を食いしばって


稲荷の綺麗に結い上げられた髪を掴んだ


猛烈な怒りのためにまたつかみ合ったが身体がついていっていなかったので、バランスを崩し


「ぎゆぬぎゅぬううーん」「ぐああああんん」と正体不明の音を出しながら


二人はもつれあってゴロゴロと階段を転がった。


(そろそろ行ってやるか)と思い青竜は部屋の中に踏み込んだ。


  「どうしたんです」声をかけると涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげて二人がこっちを見た


「せ、青竜」


 稲荷がよろよろと立ち上がった。


  青竜は足早に近づいてその体を抱きとめてやった

 

 「お前は、マグロ取ってろ、この赤マムシ」


 まだ激昂している葛の葉に


「マグロならあるぞ、帰ってさばいておけ、それから口が過ぎるぞ」


 言いながら印を結ぶと葛の葉の口がなくなった


 「ううううううーうう」


 目を丸くして何か言おうとする葛の葉の額を指で押すとその姿が消えた。


 腕の中で号泣する稲荷の顔ををハンカチでぬぐいながら


 「もう大丈夫です」言うとだんだんと泣きやみ


 洗練された映画のヒロインのような泣き方に変わった。


 それから、えんえんと愚痴と泣き言をつぶやきだし、やがて大声の罵詈雑言に代わった。


 今はとにかく聞き上手に徹するときであると本脳が告げていたが大変に面倒くさい作業で、時折マグロ


が恋しくなった。


それでも何とか落ち着かせ、いつもの状態に戻すことができた


その時 「稲荷様」と声がして思いつめた 顔のコマちゃんが入ってきた。


 青竜が屋敷に戻ると朱雀と白虎が出てきた。


「どうなった?」白虎が尋ねた


 「まあ、お茶でも入れてくれ」言いながら青竜はネクタイを緩めながらいつもの食卓に移った


油すましがお茶を入れてくれた 最近は家政婦も兼ねているらしい 


 「あいつは?」葛の葉のことだが 


「ああなんか地下に籠って電気のこぎりを振り回してた」朱雀が言った。


「電ノコ?」 


「心配ない泣きわめきながらマグロをさばいてるだけだ」


「そうか」 青竜はお茶を飲みながらコマちゃんが言ったことを伝えた。


 「なんと、けなげな」言って白虎がちょっと涙ぐんだ


「朱雀、地下に言ってあいつにも伝えてくれ、それから今日は休んでおいたほうがいい」


言うと朱雀がうなずいて走って行った。


「清明様は?」


 「さっき葛の葉が振り回した、マグロに当たって気を失っている」


 「それじゃあ、しょうがないな、俺も休むか」


 「そうじゃ2、3時間仮眠をとっていけばいい」


 「なあ、思ったんだが」 


 「なんじゃ」


「子供と言うのはかわいいな」


 「そうだな特にあの子は」

 

「お前、おれの子供産んでくれないか?」


ぶはっと白虎がお茶を噴き出した。


 それが油すましに直撃して「ヒイッ」油すましがショッカーのような


声を出した。


「なんだそれは、新しい術か」青竜が言った


「そんなわけないだろう ふざけたこと言うな」


 「おれはいつでも本気だが、女はめんどくさくなってきたしな、お前めちゃめちゃ子煩悩になりそうだ


し、2時間あれば十分だぞ 、1000年忘れられない2時間にしてやる」


「ななな 何を言ってる」 


「ククッ」笑いながらゆらっと立ち上がった。


 その時 「青竜」 低い声が聞こえて朱雀が紙を広げて立っていた。


「これ覚えてるか?」 青竜の顔色が変わった


 「ああ布団は客間にひいてやったおとなしく仮眠しろ」


言われた通りに青竜が出て言った。


「なんです、それは」


 「昔貰った手紙です、白虎殿が持っていてください、魔除けになります」


「はあ、あいつはどこまで本気なんですか?」


 「それはわかりませんが、白虎殿も過剰反応しすぎです、完全にブックマークされましたよ」


「はあ」


 「あいつは幻術も戦闘も超一流ですが、そういうラミアスの剣を持っているのにそれでヤドカリを取る


穴をほじくったりするのが心底楽しいんです」


 「物凄くわかりにくいたとえですがわかります」


白虎が肩を落とした。


「ことの重大さがわかってないでしょう、あなたは今日からそのヤドカリなんですよ」朱雀が言った。



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