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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
42/72

生命様の憂鬱水辺の夢をこの頃見ない㉑

 がらんとした なにもいない 音もしない 海岸を歩いていくうちこれは夢だと感じた


今自分は夢を見ている はっきりとした自覚をもって、そのうち周りが暗くなった

 

前にも見た夢だ そうだ そういえば この夢が全ての始まりじゃなかったか


 以前と違うのは夜で 空には藍い星ばかり海の水は皆黒い 


そして自分は 足首まで水の中に浸かっている


挿絵(By みてみん)



何だ これは本当に夢かと思いながら 砂浜を目指したが 足元で砂が崩れて進めない


 その 時に影法師のような姿が見えて 「青竜」 と自分を呼んだ


顔をあげると そこだけ闇がぽうっと薄くなって誰かが立っている  よく見ると 葛の葉だった


「なんだ お前 ここはどこだ?」

 

青竜は声をかけたが その姿は何か薄ぼんやりとしていてよく見えない 水に乱れて風に揺らめき蜃気楼


のような姿が 少し濃くなった「わしは 海はきらいでのう」 葛の葉がうつむいて言った


いつもの 狐火のような黄色っぽい髪も黒く風が吹くたび ところどころ藤紫の様に光って見えた  


「ここは どこだ」 青竜が聞いた


「お前の 夢の中じゃ 周りの霊力が強すぎて二人きりで話をする場所がなかったんでな」  


葛の葉がうつ向いたまま言った 「話?」 青竜が繰り返すと 「そうとても大事な話じゃ、わしとおま


えだけのな」葛の葉が言った

 

その姿は蒼くすっとあげた顔はひっそりと哀しげに見えた「お前に頼みがある」


 悲しみを閉じ込めた 気高い顔が自分を見つめていった 「なんだ」 進もうとする足元が崩れる


 黒い波は高くなり 低くなり 岸にちかずけない  


「お前は鬼神と鬼の違いが わかるか?」 「いや なんだ急に」


「同じ攻撃力でも鬼は破壊するだけだが、鬼神は何かを守るために闘うのよもともと天を守るための役目


だからな」  


「それはわかってる 自衛隊みたいなもんだろう」 


「わかりやすく言えば そうじゃそれでな お前はその守護の本能を引き出してほしい」


「なんだそれ」  「もともと あの人たちは 弱っているものを 保護したり守りたいという本能を強


く持ってるんじゃ、それはわかるじゃろう」

 

その間にも 波は絶え間なく打ち寄せ 今にも海に引き込まれそうで不安になる

 

「なにが いいたいんだ わかりやすくいってくれ」


「つまりな 今屋敷の存続の危機なんじゃ それでもって援護が必要なのよ お前にキッシーの同情を引


いて 本能を引き出す役をやってほしい」


「あ?なんで俺が、 それに屋敷の危機って今日のプールのことでか?」

 

「くわしいことは後で話すが、お母様のほうはわしが懐柔した だがキッシーは無理だ 女に興味が


ないしだからお前に頼みたいなんだかんだ言って一番近くにいるしな 付き合いも長い」

 

「お前 なんかキャラが違うと思ったら 長期計画でたくらんでたのか?」


 葛の葉は遠くを見るような 夢を見ているような霞んだ表情になった 


 葛の葉の独特の表情でそういえば長いこと見ていなかった顔だなと思った   


「なあ わしには 戦闘力もないし日に当たったら消えてしまうし そういう脆弱なものが長く生きてい


くには計画が必要なのよ 速さや激しさではなく深く静かに潜行していってね 


そんな兵法しかできん」屑の葉は冷然として 動きもせず続けた


「今回は失敗できん あの屋敷がなくなったら スマシや小豆洗いはすぐに死んでしまうし 


「わしも長くは生きられんじゃろう」  「お前は 清明様のハリネズミになればいいんじゃないか」


葛の葉が霞のような 白い腕をすうっとあげた  とたんに何かが ゴロゴロと転がってきて体に刺さっ



「ぎゃあ なんだこれは」 大量のウニだった

 

「ハリネズミをレベルアップさせ 改良して作った武器だ わしは長いこと考えておったんだ ちゃんと


話しを聞け 下ネタに持ってくな」


「わかった わかった 具体的にどうすればいいんだ」  


「だから とにかく 弱いままでいろ 術は使うな 何かピンチになっても 防戦一方でいろそれから 


お前 髪が伸びたな切ってしまえ霊力が強くなる」


「 誰かに 襲われても やりかえすな キッシーに助けてもらえ 」


「そういうのは白虎を持って来ればすぐ片付くんじゃないのか?」


「ばかかお前は そうしたら保護とかそういうレベルではなくなるだろう 話は光以上の速さで終わり


相対性理論も崩壊する」


 「まあ そうだな」


「白虎殿じたいは家で晩酌しながらラピュタを何回も見ていれば幸せな性格だがなぜか周りがほって置


かん いつの間にか変態村の村長になり都議会選にも出馬させられそうになっている いつか泣きながら


変態の世界の王として君臨する運命だ」


 「それはものすごくひどい話だな そんないやな権力はみたことないな


そういえばお前水の夢は不吉だとか言ってたなこの海はなんだ」


 「水は潜在的な性的欲求 そしてここは海岸だから境目じゃな」


「性的欲求って誰のだ」


「さあ まだわからん だが吉兆もあった わしは飛行機に乗って飛ぶ夢を見た 飛ぶ夢は上昇の兆し」


「ほんとうか よかった」


「だがその飛行機はたぶん墜落した」 「なんでだ?」


 「わしが操縦したからじゃ」 「なんだとなんで余計なことする」


「夢の中まで自己管理できん  子どものころはパイロットが夢だったからな」


「それよりここから出してくれ 」波はますます荒くなってくる


「落ち着いて 立ってみろ 夢というのはもともと非論理的なもの 意識の底で作られた詩なのだから


大丈夫じゃ」


青龍は心を落ち着けて立ち上がろうとした


 また砂が崩れる 「立てないぞ」というと葛の葉が顔色を変えた 


着物をたくし上げよろよろと近寄ってきて手を伸ばして自分をを抱きしめた

   

 ガクガク震えていて助けるというよりすがりつかれたようだったが笑って「大丈夫だから」と言った


 支えあうようにして岸に上がった  葛の葉の手が冷たくまたぼおっと霞のように薄くなった

 

「お前も 知ってると思うが 夢枕に立つというのは立つほうも立たれたほうも大変でね」少し乱れ


た息で言った  言いながら煙のように掻き消えてしまった  海には慣れているはずなのに 一人きり


の夜の海は恐ろしく世界は真っ暗な半球になって全身に染み渡るような孤独感を感じた

 

こんなに寂しいのは初めてだった

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