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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
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逢魔が時の猫②

そのとき何かが反射して自分の前にふわりと何かが下りてきた

  

女が二人薙刀を構えている


「この子に手を出すことは許しません」 


 甲高い声がして、縮緬みたいな着物がひらひら跳ね上がった

 

一旬ひるんだように見えた影が、その姿を見てげらげら笑った。

 

「お前らに何ができる、おとなしく引け、引けば助けてやる」 


女達は相手をにらんだまま動かない


「しょうがない」と言って影が近寄ってきた

 

その時、ざっと何かが落下した

 

「何やってる」 その影が言って立ち上がった。


「お前らこそさ、引けば助けてやる」


 小柄な若い女だった 短いカーキ色のコートに同じ色の冗談みたいな高いハイヒールを履いている

 

黒い髪が風に舞った。

 

「お姉ちゃん」すくんでいた少年が叫んだ

 

女たちもほっとしたような表情になった 


「結界を破ってくれて助かった」 朱雀が言った。


「お前」影は明らかにひるんでいた。

 

「邪魔をするな、お前刀を持ってないじゃないか」

  

「あまいねえ、アメリカのスーパーで売ってる青いケーキより甘い、それにお前らんとこの大将はしつこ


いね、本当」


無表情のまま、のんびり言って突っ立っている姿はひどく無防備に見える。


言いながら背中で行けと合図した。


二人の女がすばやく移動する、一人が自分の手を取って(こちらへ)


と唇だけ動かして言った。


 その手がやけにぬるぬるするのが気になったが考えたりおびえたりしている暇はなかった


「待て」誰かが叫んだ


 その時朱雀がハイヒールのかかとをトンと蹴って飛び上がったと同時に物凄く早い回し蹴りを放った


近くの影が胸を切り裂かれて倒れ掛かるところにもう一度回って蹴った。


ハイヒールのかかとがキラッと光って刀を持った腕がスパンと切れて飛んだ 


朱雀は飛び上がって腕を掴むと刀だけもぎ取って腕を捨てた


それから逃げる女たちを追いかけようとしたもう一つの影の背中に刀を投げた


 刀は背中に突き刺さって胸から突き抜けた


ぎゃあっと叫んでそれが倒れる。

 

 影は次々に叫んでは消えた。

 

 最後の一人が抜き打ちに刀を浴びせたが朱雀のほうが一瞬早い


 倒れこむときに振り下ろされたヒールから飛び出た刃先がきらりと光った。


いつの間にかすべての影は消え失せ、同じ表情の朱雀が待ち合わせでもあるかの様にぼんやりと立って



いた。


挿絵(By みてみん)



 逃げた一行のほうは追手が来ないのを確認してやっと、歩調をゆるめ息を整えた。



「こちらへ」さっきの女が自分の手を引いて走る。


少年のほうは違う道に消えていく 


「先生、大丈夫だからその人は味方だから」


 離れるときに少年が叫んだ。


もう何も考えられず気が付くと自分の家だった。


 部屋に入ると


「どうぞ、ご安心ください」 と言って何かぶつぶつ言って手を動かした。


「私はここで見張っております」 言って部屋の隅に座った


 改めてみてその異様な風体に気付いた


オレンジの薄い縮緬のような幾重にも重なった見たこともない着物を着ている


 「あの」 言いかけると


「わたくしは中蘭と申します、わたくしのことは気にしないでください、家の


外に出ないよう」


言ったきりうつむいて黙った。


 チュウラン と聞いたときに何か引っかかるものがあったが何かわからなかった


気付いたのはしばらくたってからだった。


 チュウラン 蘭中 


 あの大きな金魚にそっくりではないか?


「眠れませぬか?」


 「ああちょっと」


 答えるとふわっと近くに来て額に着物のそでを当てた、湿って生暖かい水の匂いと感触がした


とたんに睡魔が来て眠ってしまった


(まったく 新しいのに) 朱雀は玄関先に座ってパンプスをごしごしとこすっっていると


 清明がどたどた走ってきた。

 

「ああ朱雀、葛の葉を見なかったか?さっき半狂乱で暴れながら出ていったらしい、なんなんだ」


 「ああ、みませんけど行先は大体わかります」


 「どこじゃ」


「稲荷様のところです」


「あ」  


「あいびっくゆあぱーどん?」 清明が青ざめながら言った


 「なんですか 今の英語ですか?」


朱雀は玄関に上がりながら言った 「稲荷様のところです」


  清明がよろよろ後ろに下がった。


 「しっかりしてください」言いながら手を伸ばして引っ張るのかと


 思たらどんと押した


清明が二つ折りになって 海老の様に後ろにあった障子バリバリと派手な音を立てて吸い込まれていった


 台所に入ると白虎が見たこともないような大きなピザを食べている


 「なんです それ」


「デリバリーを取ったんです、どうですか、たくさんありますから」


「どこからです」というとメニューを差し出した


 すましハットトリックピザと書いてある 


「なんか油スマシがピザ屋を始めたみたいなんですよ、なかなかいけますよ」


 トッピングには タコキムチ、 コーラ飴 などがあるほかはいたって普通だ 


その時清明がよろよろ入ってきた


「朱雀、お前何やっとる、早くあいつを連れもどせ」


 「どうしたんです、血まみれで」白虎が言った。


「私がいってもだめでしょう、それより白虎殿に行ってもらえばどうですか」 朱雀が言った


 「そうだな」清明もあまりのピザの大きさにぎょっとしながら言った

 

「なんですか?」 白虎が不思議そうな顔で言った


「ああ、あのつまりコマちゃん知ってるでしょう、あの子を稲荷様が連れて言ったらしいんじゃ、葛の葉


 と稲荷様は犬猿の中で」


「犬猿てどっちも狐でしょうが」白虎が言った。


 「いや、物凄く憎しみあっていて、特にあの子が絡むと、マザーエイリアン並の力を発揮するんじゃ」


「そういえば、なんか嫌な予感がするって言って、格闘技を習いに行ってましたよ」朱雀が言った


 「格闘技?」


「あの人がぁ?」二人が怪訝な顔で言った。


 妖怪と言うのは大体、幻術系と戦闘系にわかれる 


 たまに二つを合わせもつものもあるが 朱雀と白虎は戦闘系 


  葛葉は完全な幻術系妖怪である。


「お前なんで止めんかったんじゃ」


「だって内容がね、なんだと思います」


「まさか、いきなり極真空手とか・・・・・」


「そんなレベルじゃありません」


「なんじゃ」

 

 「驚いたら駄目ですよ」


「わかったから早くいえ」 二人が乗り出して聞いた


 「ボクササイズ」 


 「はあ」 清明と白虎が顔を見合わせた。


「あれって格闘技ですか?」 


 「いやただのダイエットだろう」


 「いいえ、正しくは現実逃避ファンタジーです毎週火曜日週一で、止めるのもめんどくさいでしょう」


朱雀が言った。


「ああだから最近、水曜日寝込んどったのか」清明がしみじみ言った。


 「とにかくあの人を怒らせたらまずい、 白虎殿行ってもらえるか」


「なんで私なんですか?」白虎が聞くと


「稲荷様はイケメンが大好きなんですよ 清明様は見慣れてますしね 


 ここはニューフェイスがベストなんです」朱雀が答えた。


 「まあ、いいですけど」


  白虎が答えると清明がぱっと印を結び白虎がスーツになった。

 

「おお、これはアルマーニじゃないですか」白虎が嬉しそうに立ち上がった


 そして二人の視線に気づいた 二人は怪訝そうに見ている。

 

 「なんですか 似合いませんか?」


「いや素晴らしく似合うんじゃが なんというか」


「まっとうすぎるんです めちゃめちゃ正しく税金とか納めていそうで」

 

「なんです? それのどこが悪いんです」


「なんというかもっと ぬめぬめしたかんじの えーっと」 清明が考え込みながら言った。

 

「ちゃらちゃらじゃ ないですか あの人はセクシーなテイストが好きなんですよ

 

 あ、えらいこと忘れてました」朱雀が言った


「なんじゃ」

 

「いるじゃないですか、ミスターチャラオユニバース第一位」


「青竜か?でもあいつはマグロ漁船乗ってるんじゃないのか?」


「 召喚すればいいでしょう、巨神兵より腐ってますが今使わずにいつ使うんです?」



挿絵(By みてみん)



 


 

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