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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
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清明様の憂鬱 水辺の夢をこの頃見ない⑯

「せーりゅ 幻術はまだ使えないの」


朱雀が新しいスイカを しゃくしゃくしながら言った


 二人はまだ プールに浮かんでいる


「うーん ちょっとだけ でも全然だめだ」  「何で? やってみれば」


 試しに 印を結んだ ウナギみたいなながい生き物が出て来てにょろにょろ泳ぎだした


全身が 発光しているが 毒々しくまだらで 紫やオレンジや濃い緑がでたらめについている


 朱雀が 「わあ なにこれ」 怖がると思ったら喜んで 掴んで見入っている


こいつは事故に会う前から鳥脳だったけどホントにばかだな


 中にはつかんだ瞬間ドロドロと崩れてしまいうものもある


 「これ 生きてるの?」朱雀がにょろにょろを掴みながら言った


「いや 生きてるのを作るのは大変なんだ だから形だけだそれよりお前気持ち悪くないの」


 「何で よく見ると 可愛いかも きもかわいいってやつかな」


「そうか?」  


 「うん あとで かば焼きにしよー そんで食べさせようよ」


「誰にだ?」と聞くと ニヤニヤしながら 横の障子を指差した


ばかだけど 性根は変わってない そういうとこの回転は速い


 俺も性根は変わってないみたいでノリノリになった


「じゃあ いろいろ作ろう」 「やった」 30分もすると プールの中は わけのわかんない生き物で


いっぱいになった


しかも まともなのはいない朱雀がわあわあ言いながら掴みあげて見入っている


 「あこれ 進撃する奴じゃないか 兵長を苦しめてやっけってやる」 言いながらバリバリ食べだした


これにはさすがにびっくりして 「やめろ やめろ」 叫んで首をつかんだがごっくんと飲み込んでし


まった


「お前 あとで 腹が痛くなってもおれのせいじゃないぞ」


 「大丈夫だよ でも あんまり 美味しくない」 と言って残りを ぽいッと捨てた


「プールの中に捨てんな また水が汚れるだろう」 朱雀が捨てたそれは墨汁のようなドロドロした体液


を流しながら沈んでいく


 「このばか」 俺は潜って拾おうとしたが ほかの生き物が先に食べているのを見て気持ち悪くなって


やめた


ピカピカのプールは無残にも わけのわからない生き物だらけになって 変なにおいのどぶみたいになっ


ていた 


「お前 どーすんのこれ」 ガンジス川と化した 水面を見ながら言った 


 「じゃあさ 水足せばいいんじゃないの?」 朱雀はパッと プールから飛び出ると ブクブク言う黒


い泡のたつ水面に向かって全開で水を放出した 

 

「うわあ」 黒い水が跳ね返って 悪趣味な色合いの生き物が慌てて逃げ惑って 気味悪いことこの上な


いので 俺も逃げ回る


でも 少しましになったかもしれない


 「これでどーだ」朱雀がまたニカニカしながら言った 「まあ 前よりましだけど・・・・」 


「 うん 立派じゃないか? スイカっもう1つ食べよ」


  朱雀は 汚水の中から拾ったスイカを食べている


多少は綺麗になったものの 今度は 白い泡のようなものが浮き 甘ったるい果物の匂いにまぎれてぶん


ぶん言う 羽虫までやってきた


  「せーりゅ たべないの?」 「もういらない 食欲失せた」


「なんでー美味しいのに、でも虫がじゃまだなあ ねえ カエルって作れないの?」


「うーん 試してみる」 ブクブクは豚骨スープみたいに 濁ってその中に醜怪な魂のない生物が 


意味の分からない律動をしている


 朱雀は 浮き輪で気持ちよさそうに クルクル回ったり 太陽を見上げて楽しそうだ なんなんだこい


つは?


突っ込むのもだるいので取りあえず印を結ぶとなんかすごいまともなのが出てきた


「わあ 出来たぞ」 思わず叫んだ


 カエルは すいすい泳ぎながらしゅるるる しゅるるると 舌を伸ばして 羽虫を食べだした


「せーりゅ すごい すごーい もっともっと」 朱雀が叫んだ


「 よし まかせろ」


俺ももうれしくて 調子に乗ってるうちに プールの中はカエルだらけになった


中には 足の本数が多いのや 変な色合いのいたが 取りあえずカエルってわかる「作りすぎちゃったか


な」 と言うと 朱雀が「何事も練習だよ」 っと言って笑った


「もっと 果物ないの?」 朱雀が言った


「もうやめとけ 勢いがついてるぞ」  「でも もっと欲しい、もってこよー」


 「よっこいしょ」 と言いながら朱雀が プールからでた


「お前 なんだそれ」 思わず言った  腹が妊婦みたいにポンポンにふくらんでいる


 「お前が 奇行種じゃあないか」 「大丈夫 すぐ消化するよ」言いながら よろよろ走って行った


ホントおかしいな まあ 果物だしいいか カエルだらけのプールの中でぼんやり思った


  さっきまで 映え映えしい気分にしてくれた太陽が陰り始めている


夜行性妖怪が 目覚める始める時間帯だ  ぼんやり 太陽を見上げると それが急にまっ黒になった


 (あれっ)っと 思ったとき バサッっと音がしてキラッと何かが光って 自分のほうに向かってきた


 刀が ブンと空気を切る音がした


 頭より体と言うか 内臓的感覚が動いてパッとななめに転がりながら水に落ちてプールのそこでもう一度転がった


相手は自分を探しているらしい


 黒い大きな姿がゆらゆらゆれている


 「でてこい」 しゃがれた声がして めちゃくちゃに刀を 突っ込みだした( でも こいつの刀 


遅いな)


水の中でなるべく 静かに動きながら 刀をかわしつつ 青竜は思った


 水中戦なら何とかなるかも そうだこのカエル使えないか?


何が おこるかわからないが 印を 結んだ


   とたんに カエルが一斉に歌いだした


おいらは  スイマー やくざな スイマー  おいらが 泳げば 嵐 を呼ぶぜ ♬


カエルが いっせいに 歌いだした  エンドレス エンドレス

 

途中で デェスりだしたのや 演歌調やら  物凄い 苛立たしい不協和音 が 発生しだした


「ぎゃあ なんだ」 その隙に 刀を持ってるほうの羽 兼 腕に 乗っかって組み付いてやった


 「俺のことは ハク様と呼べ ついでに かまじいもいるぞ 2丁目にな 遠くから見るとばあちゃん 

だがその実態はじいちゃんなんだ 」


「余計な事をいうな この青竜が」 何で 俺の名前知ってんだ それにけっこう力が強いぞ まず


いかもバタバタ 暴れる


 羽に必死にしがみついた 相手は自分を振り落とそうと反対の手をふりまわす


すごく 鋭い爪が見えた


 こいつは カラス天狗じゃないか 龍が好物じゃなかったか?いずれにしても あの爪にかかったら 


終わりだ


 その時 「 青竜 どけ」凛とした声がした


反対側の窓から 朱雀が矢をつがえている


 子供の姿だが 戦いのときの顔に戻っている


反射的に転がって プールに落ちたと同時に矢が放たれた


 正確に自分の頭に向かって 飛んで来る矢に相手は体をひねった


矢はわずかに頭をそれ 羽の根元を射抜いた


 自分はしっぽの羽を抑えている


朱雀は 二本目の矢を番え狙いを定めた  


まずいと思ったのか 相手がめちゃくちゃに暴れだした


 恐ろしいことはその時に起こった


めちゃくちゃに 振り回した刀がブールを切り裂いて 清明様が特別な客を迎えるといった


 障子も切り裂いた


騒音のための術はかけてあったらしいが物理的な攻撃には無防備だったらしくたちまちよどんで汚辱


にまみれた大量の水と流れながらも歌をやめないカエルわけのわからない奇怪で見苦しいことこの上ない


生物すいかの種 どぶの匂い 生物のぬめぬめの体液 それらが 俺が今まで知るどんな絶叫系ウオー


タースライダーより速くその部屋に流れこんだ


 そして その部屋はこぎれいな畳が引いてあるが狭く障子のすぐそばに真剣な顔の清明様がいた


その顔 がこっちを向くと 今までどんな人間ににあっても どんな妖怪が向かってこようとしなかった


顔になった 人間が あるいは妖怪でもこんな顔ができるんだ と 小一時間 ドキュメンタリー番組に


したいような顔になった


もう一人の上品そうな 公家顔の客人も同じだった


 なぜだ なぜ こういう時だけ スローモーションの様に見えるんだ


その顔にうねりをあげていやらしい蛍光色の生物とスイマーおいらはスイマーシャウトしだした 



色とりどりのカエル 汚濁した あぶくのういたコーンポタージュのような豚骨スープのようなものすご



い悪臭を放つ汚水が直撃してのけぞりながらぐるぐると回転して見えなくなった




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