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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
33/72

清明様の憂鬱 水べの夢をこの頃見ない⑫

 久しぶりに深く深く眠った そして目が覚めると まっさらになっていた 思考も体も やはり妖怪で


も人間でも睡眠は大事だ


健康な身体それに伴う正常な思考 それからやるべきことを思い出して行動を起こした


 まず 白虎のいる地下牢に向かい術で眠らしておいた 


白虎にすべてを話した


 あれから白虎は ずっと地下牢にいた 病院へ行くと言ってきかなかったからであるが、白虎が病院に


行けば事態はさらに不可解で困難なことになるのは火を見るより明らかなので仕方ないので術で眠らせた


後座敷牢に閉じ込めるしかなかった


  それに問題はもう一つあった 


 伊豆に行ったとばかり思っていた玄武様が地下で 倒れているのが発見された


こちらも体力を使い果たし記憶が飛んでいた 頭に大きなこぶが出来ているほかは異常がなかったので今


は地下ですましやお六さん達が看病を受け寝入っている


そういうわけのわからないだがれっきとした現実に振り回されて余裕を持てなかったがだんだん冷静に


なることができた


 白虎も落ち着きを取り戻し 子供に戻ってしまった 青竜と朱雀の映像を見せられるとがっくりと肩落


としてすっかりおとなしくなった


朱雀がベットに座り込み枕を抱えて 「ナムルがあー 豆もやし食べたいよう」と言っているシーンでは


涙を流した


そして 家で待つことを了承し すっかりおとなしくなった


 白虎は 絶大な戦闘力を持った朱雀が いともたやすく自分の倍もある相手を倒したあと、自分のため


に 戦いより真剣な顔で 料理の本をにらんで考え込んでいたり 真剣に温度を見ながらお茶を入れてく


れるのが嬉しくてしょうがないし 宝塚のDVDを幸せそうに見ていたりするのが可愛くてしょうがない


 時々とんでもないものが出来上がって それを前におろおろしているのを見るとこっそり葛の葉に式神


を飛ばす


挿絵(By みてみん)


 葛の葉はすぐやってきてくれて 時には通りかかったふりをして朱雀のプライドを傷つけないようにし


ながらあっというまに味付けを 直ししかたちを整えさりげなく色々な事を教えてから にこにこ笑っ


て部屋を出ていく それにいつも自信たっぷりな青竜が別人になってしまったのも心が痛んだ


 青竜はいたずらものだが憎気がない 酔ってたとはいえあそこまでなるとは思わなかった


 そして 今自分にできることはこれしかないのだと 納得し部屋をかたずけながらじっと待った



1週間ほどで キッシーのナースのマツチョが二人を送って来て 白虎は涙を流さんばかりに喜んだが 


事態は簡単には好転せず 反抗期をぬけだしたものの今度は臆病なエゴイストのようになってしまった


 病気に潜伏期間があるように感情にも潜伏期間があるようでそれは 太宰の小説をはしから読んでいく


と何となくわかる


最初はびくびくしていた二人はよそのうちに連れてこられた猫のようにおとなしく、白虎も暖かく見守ろ


うとしていただんだん 増長しレベルアップした


 それでもなんとか乗り越えられたのは、ひとえに白虎の情の深さだった 恋愛に関しては人は愛した人


を決してあきらめない と言う話を聞いたことがあった


 たとえ代わりを見つけたとしても それはとっさの絆創膏や包帯にしかすぎないと思った


いつか 必ず 朱雀が恋しくなるだろう  聡明な白虎はいつもずっと先を見ることができる


 そうして 徐々にその通りになった 


星の王子さまに出てくる臆病な狐のように二人はそろそろと近づいてきたやがてゆっくりとだが依頼心


が芽生え 白虎の部屋にいることが多くなった


白虎は 朱雀に対して以前のように 欲しているだけでなく保護しなければという使命感を感じていた


しすっかり毒気が抜けて子供になってしまった青竜に対してもそうだった


以前は形容するなら濃い紫か青のような毒のあるオーラが全く抜けて囚われの少年みたいな目をみると


今更どうしたって突き放せなかったし慣れてくると前の何を考えているかわからない得体のしれない性格


より付き合いやすかった


 二人は兄弟のように 笑いあったり 真剣に映画を見たりして白虎の部屋で過ごすことが少しづつ多く


なった


  ある時 突然朱雀が確かめるように言った


「白虎殿ずっとそこにいたんですか?」


胸が打ち抜かれたような思いで「うん」と返事をすると


「これからもずっと ここにいますか?」うなずくと本当に嬉しそうに笑った


 朱雀は白虎の横で眠るようになった 困ったのは青竜まで反対側で眠るようになったことで起き抜けに


以前と違って毒気の抜けた清潔感あふれる繊細に整ったあどけない寝顔は白虎を時折動揺させ混乱させる


他は何も問題なかった

心配なのは 葛の葉が帰ってこないことだった


白虎には面会謝絶と言ったが清明はたびたび面会に言った


葛の葉は真っ暗な部屋で横たわったままだった  顔の腫れも引き 包帯も減っていたが


  暗闇にぽっかりと浮き上った青みを帯びた白い夕顔のような顔は不吉な前兆を感じさせた


自分に気が付くと「せい・・めいさま」と言って嬉しそうに笑ったが寡黙だった


 「何を・・・・そんなに心配しているのです」 葛の葉のほうから聞くこともあった


 戦闘妖怪と違って身体は頑丈ではない


  日が落ちるとカーテンを開けて 風を入れてくれと言う


水のような月光が部屋に満ちると 幸福そうな表情になるので少し安心する「患者が疲れます」 冷たい


声が聞こえてキッシーが立っているその後ろに しかられたような 風情の少年が立っている


 「何してるんだ」 と言うと「カルビを食べされせくれるっていうから、四角いカルビだ」っと言った


カルビのことはいまだに恨んでいるらしい


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