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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
32/72

清明様の憂鬱 水べの夢をこの頃見ない⑪

 葛の葉は大破した車の煙と何人かのわめき声でうっすら意識が戻った


頭をはたらかせようとしたがそれより早く痛みが来た


 意識できたのは自分はテキサス野郎の祟りなのか全裸になっている


失敗したトーストみたいな焦げがあちこちについて髪からも焦げ臭いにおいがした


 みんながうっとりとするテキサス野郎と違うのは皆に嫌われて猥褻物わいせつぶつのように扱われ


ているということだけでストレッチャーに乗せられながらマツチョなナースたちの顔の輪郭を不自然な色


をぼんやりと認識した 


 嫌われているのは自分のせいだけではなく隣の朱雀のせいもあるようだ


顔面を強打し一定の時間を過ぎたせいで顔がはれあがってキャリーぱみゅぱみゅから浜田ぱみゅぱみゅへ


変身したうえ白目をむき意識を失っている


 キッシーがなにか叫んでいる その後ろに子供に帰った青龍がいて走ってこようとしている


「来ちゃだめだ 見ないほうがいい」キッシーが青龍に叫んだ


(見ないほうがいいってあんた言い過ぎだろう)少しだけつながっている意識の中で思った


(あれ 私らってあいつを助けに来たんじゃなかったっけ そんでもって原因は白虎殿のいたずらで


気を失って でも何なのその立ち位置ここは巣窟そうくつなのよ 二丁目なんて目じゃないの


 最前線なのよ エキスパートでエリートな部隊なのよ そんでもってなんでそこの征夷大将軍に保護さ


れてんの あんたわ)


そんなことを考えていると意識と一緒に痛みが広がって来た  


がこういう時はたまゆらという術(一種の幽体離脱)を使って体から抜け出してしまうのがいいのだろう


精神力が必要なようで体がなかなか離れてくれない


 いつもは簡単あくかんぬきがあかずそのうちに腕にちくりとした痛みを感じて


体のなかにとじこめられたまま眠ってしまった


 眠っても時間は縦には流れずなぜか旅客機に乗っている夢を見た


フライトアテンダントが深刻な顔をして言う


 「お客様の中に飛行機の運転ができる方はいらっしゃいませんかー」


葛葉は手をあげて立ち上がった



しばらくして 連絡を受けた清明がやってきたが いつもとはまるで違っていた


 疲労を絵にかいたようでふらふらしてそれでもなんとか精神を保っていようとしていた  


それからまた しばらくして朱雀が目覚めたが こっちは違った意味で退化してしまったらしい  


 つまり脳みそぱーんのあとに 本当に大脳の一部が 流れ出してしまったらしい 


ぼーっとしていたかと思うと ブツブツ わけのわからないことをつぶやいたり清明が行った時には朱雀


の後ろに 子供の青竜が隠れていて 「クララのばか 意気地なし うじむし」 などと言って


言ってしくしく泣き出した朱雀につられて


「この家庭内変態 独裁者 ネロ皇帝野郎 マレー熊」などと罵る青竜


  その横で突然 朱雀が「ドラゴン体操始まるよー」言いながら枕を抱いてベットの上でぐるぐる転


がったりして祭囃子状態だったがすぐにつかれるらしくコトンと眠ってしまった 


戦闘妖怪の回復は 凄まじく早いのでこちらは自然になおるのを待つしかないらしい


ギリギリの精神を保っていたはずが 蝋燭の光ちらちら焦れる頼りない光の感覚にますます弱り果てて 

ズルズル歩いて 葛の葉の部屋に行った  

 

清明がなぜこんなに弱っているかと言うと葛の葉達が出て行った後野村萬斎と40人の舞踏家達が清明の


周りでボレロを踊り続けたからだ

 

その踊り自体は素晴らしかったが眠ろうとすると 自分の周りで 華麗な舞が繰り広げられるのでとて


も眠れたものではない    


葛の葉に会いたいと言うと 岸先生が 「本当なら 面会謝絶なんですが」言いながらしぶしぶ合わせて


くれた


 そして持ってきた花を見て「赤はだめですよ」と言った


「ああそうでした」 病院の見舞いには血を連想させる赤や鉢植えはご法度なのを忘れていた

 

葛の葉は病室でそれを聞いていた


包帯だらけだったが清明が近づくと 目をとじたまま 小さく「清明様」 と言った 


傷も思ったより酷そうだったが「眠っていないのでしょう」 葛の葉がゆっくりと言った 


「それは私ではなく 青竜の力です 私の力は働いていません」達観したように落ち着いている


「先生にお願いするといいでしょう」言ったきり黙り込んだ  


 「また 来るから」 というともう 何の驚きもない静謐さで満たされ 暗い森を抜けたあとのような 

幸福そうさえ見える小さな微笑みを浮かべて「はい」とだけ言った


 清明が出て行くとさすが キッシーやっぱり目線が違うと少し感心しながら捨てた赤い花を取った 


 名前がわからないし小さすぎたので彼岸花にした 彼岸花は美人の屍から咲くと言われる縁起の悪い花


だが自分は好きだ 


 鉢植えにしようかと思ったがいっそのこと花壇にした


もちろん清明様のせいにする 


自分はか弱い式神だもの♡


 ささやかないやがらせだがないよりはましだ 


だって生き恥をかいたうえ嫌われるのは一人じゃ寂しいんだもの♡



 岸先生はいとも簡単に 呪いを解いてくれた 青竜がやけになって放った予備タンクに残った力の全て


を出し切った呪いを葛の葉の怨念が補助したらしい、それで出所がわからなくなったのだ


朱雀と青竜を連れて帰りたいというと「もう少し待ったほうがいいでしょう」と言った 屋上に案内され


て答えはすぐにわかった  


中二病をこじらせにこじらせ反抗期真っ只中に陥った青竜と思春期に戻った朱雀が楽しそうに死闘を繰り


広げていた

 

 運動神経をつかさどる小脳には異常がなかったため 「うしゃあああああー」 「ずばばばーん」 な


どとわけのわからない咆哮を放ちながら 物凄いバトルが繰り広げられていた バクテンに側転 物凄い


速さの蹴りが次々に繰り出され しかも二人とも楽しそうゲラゲラ笑っている


 先生が「お前たち いい加減にしないと焼肉屋に連れて行かないぞ」と怒鳴った  


とたんに二人はぴったっと止まり 「ナムル、ナムルがあー」朱雀がしくしく泣き出した


青龍は「カルビ」とつぶやいたとたんに自分に向き直り 「皇帝ネロだ 俺をだましてハムを食わせた奴


だ」と喚きだした


この(駄目だ こりゃあ)と言うしかない状態に即決で帰宅を決意した清明は久しぶりの安眠をあじわう


ことができた






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