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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
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清明様の憂鬱 水べの夢をこの頃見ない⑨

 待ち伏せしているものも呪文きいていれば眠っているはず トンネルに張り巡らされている細い釣り糸


もくぐれるはず落ち着くと相手の思念の中にほんのわずかなひずみを見つけた


 何かの機械音が聞こえる トランシーバーからのざらざらした声


「味方を打っている」誰かが必死になって叫んでいる


戦闘機は得意げに新型の武器を落として見せる 


 武器商人たちのデモンストレーションだ 後方支援のたわごと助けは来たためしがない


 深い絶望 それから彼らは移行した生きるために生き延びるために・・・ 


何も見ないこと 感じないこと 純粋な殺戮の機械になることその中に喜びを見つけること

 

 だからここは閉鎖され隔離されたのだ 地獄の連中がここを制圧するには大変な労力が必要だったはずだ


相手は戦いに慣れ痛みに仲間の死になれている 


つまるところ生き残るためだけの戦いを極めた者たちだ


 恐怖は消えていた 自分が死ぬのはかまわないただ朱雀がいる その先に青竜がいる 

 

「葛の葉」朱雀が叫んだ  火の中から ロットランチャーのようなものが現れた


 すばやく呪文を唱える 「 臨兵闘者戒陳烈在漸 破邪 」


葛の葉が大きく手を振り上げるとぱっとスクリーンのような大きな鏡が現れ


それに移ったものはみんなUーターンをして後ろに戻って行った  「見たか呪詛返し」


とたんにに何発もの派手な爆発音がした


「あいつらはなんなんだ」朱雀が叫んだ


「 帰還兵だ 殺しのプロだ 人間の公道に出るまであと5 分だ粘れ」 


「葛の葉 相手バズーカみたいなの 出してるぞ」 朱雀が怒鳴った  


「ええええ ちょっと待って 人間の道はまだかなるべくよっとけ そして伏せろ」


「さっきの 鏡みたいんのはつかえんのか?」  


「バズーカじゃあれは持たないぞ あと2分頑張れ」  


 葛の葉はもう一度思考を読もうとした彼らはどこから来た どこか熱いところだ 


熱帯低気圧独特のむっとする熱気もっとも難解な戦争ベトナムの帰還兵だ  


 もともと事情を知らなかったし 人々は素朴に見え みんな若かった 無邪気にすぐ帰れると思っていた 

そしてある時突然気づくこの国の大半の人々が自分たちを酷く憎んでいて 十代の少女が近くに地雷を


埋めたり昼間友好的に笑いあった老人が夜中にテントに MK47弾の銃弾を撃ち込んで来たりするのだと 


信じがたいことが当たり前になり今では昔見た夢でしかない   


物事の整理のしようが理由のつけようがないからだ  

 

正体がわかったところで魂を懐柔するのは無理だ 自分には荷が重すぎる ただしなんとしてでも逃げ切


らなければ彼らを数分だけ止められるもの


あの場所に絶対にないもの 


葛の葉は腕をさっと振って印を結びそしてさっと指をあげると白刃のような冷たい光がするりと弧をかいた

 

( 銀色の衣をまとい黒雲大海の最北の石段を下りここに降り立ちたまへ )


「 祈水派式盤 降臨 」

 

冷たい風と 白いものが 強い風に乗って押し寄せてきた  

 

吹雪が 起こるのと バズーカが発射されたのはほとんど同時だった


何人かがSNOWと叫んだ気がした 驚愕と歓喜の声を確かに聴いたと思った


  それから「伏せろ」 葛の葉が叫んだとたんに横道が見えて 朱雀がほとんど寝そべったまま急ハン


ドルを切った

 

 バズーカは 車の右半分の後ろを吹き飛ばたが 何とか道をそれた


 「ぎゃあ」朱雀が叫んでハンドルの下に潜り込んだ「オープンカーになってしまったぞ」


「ブレーキを踏め 早く」「どっちどっちだ」


「二つしか踏むとこないだろう」乗り出した葛葉がリクライニングシートに引っかかって


「ぎゃああ」朱雀が仰向けに倒れた


「ハンドルを離すな この馬鹿」葛葉が刀を取ってそれでブレーキを押した

 

その時電柱が迫ってきて起き上がった朱雀が慌ててハンドルを切ったが間に合わず車は電柱に突っ込んだ


「ぎゃあああああ」葛葉は結界を破ってボンネットの上をゴロゴロ転がって電柱に激突し、朱雀も上に


のっていた葛葉のせいで受け身が取れず顔面をハンドルに強打し動かなくなった


気がつくと葛の葉は美しい花のたくさん咲く河原にいた 風が気持ちいい  


 その時「葛の葉」 とおおごえでよばれて目が覚めたととたんに 激痛が襲ってきた 


「痛い痛い 2分待ってくれ」といって 河原に戻って涼しい風をあびた


 ああっずとここに立っていたい


思ったが そうもいかん 葛の葉は覚悟を決めて 目を開けた

 

「ぐああああああ」 無理やり起き上がるとミシミシ体中から音がするような気がした  


かすむ目に朱雀が見えた

  

「川が 綺麗な川が見えたぞ」 「わたるなよ」 言った朱雀は明後日のほうを見ている


「お前どっち見てる」   


「あ」 振り返ると 朱雀の額から大量の血が流れて赤黒く染まっている  


「ぎゃあ お前 なんだ」


「お前がリクライニングシートにのっかったせいで受け身が取れなかったぞ」


「ああ、ごめんごめん」 


「なんか 黄色いん出てるぞ 脳みそか またバカになるぞ」  


「それは困る とにかく 病院は目の前だ歩け お前もいろいろ丸出しだがな」朱雀が言った


 服はほとんどなくなっていた 


「大丈夫じゃ ここには100%ピュアピュアなホモしかいない、かまわん」

 

「かえって失礼なんじゃないか?」


  「うぐぐぐぐぐ」 二人は支えあって ズルズル歩いた 


「お前目玉半分落ちてるぞ」葛葉が言った


「ああ、視界がずれると思ったら」朱雀が目玉をおしこんだ


「ぐはっ」葛の葉が大量に、血を吐いた 


「だいじょぶか」言った朱雀に「いいか わしが気を失いかけたら 目玉をくりぬいてくれ その痛み


で正気に戻る」


「ああ そうなのか?」朱雀が噴水の様に大量の血を両耳から吹きながら言った


  

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