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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
18/72

清明様の憂鬱 第三章⑩

第三章は終わりです


読んでくださった方ありがとうございます<m(__)m>

  とたんにどこからともなく歌声が聞こえた。


白き薔薇ひとつ 清らかに咲く 静かに白く慎ましく清らかな人の姿にも似て白き香りの薔薇ひとつ歌い


ながら、乗馬服の上に白いマントをひるがえしスポットライトが輝いたあ~あ~ベルサイユに薔薇が咲く


その間にも次々に、華やかな衣装をまとった人たちが下りてくるバラベルサイユ バラベルサイユ


(何の真似だ これは)思いながら 清明が 札を投げようとした時、ふっと黒い影が飛び込んできた


すっかり元に戻った朱雀が刀を抜いて清明の首に押し当てた。


「あの人たちに手を出したら清明様でも許しませんよ」


(ぬう、伏兵まで計算していたのか、小賢しい)


だが後ろが気になって仕方ないようでちらちら後を見ている


(珍しく隙だらけだ)と思ったのも刹那ごつごつの太い腕が首にまわった


「朱雀さん大丈夫だから集中してごらんなさい」


「白虎殿ありがとう」朱雀は小さく飛び跳ねて向き直なおった  


白虎も「うわあ」などと言いながら見とれているがそのたびに腕に力が入腕の力がグイグイ強まり清明は


息ができなくなり意識を失った。


 舞台が消えてまだぽーっとしている朱雀に白虎が言った


「タカラジェンヌになりたいですか? 何ができかわかりませんが私ができることは 協力します」


朱雀が目をキラキラさせたまま 「ありがとうございます」と本当に嬉しそうに言って白虎も笑ってうな


ずいた。


 それから、その表情と口調をくずさず ごく自然に言った


「そして帰ってきたら 私と結婚してくれませんか?」 


「はっ?」 朱雀が固まって、葛の葉が振り向いた  


「あのあの 今なんて?」


「私と結婚してもらえませんか?」白虎はまたごく自然に言った。


「ちょっと偽装結婚は白虎殿」葛の葉が叫んだ。


「そういう言い方はおやめなさい」白虎が振り返って言った


「だってだって朱雀の身があなたのファンのおねぇ妖怪達の嫉妬と言ったら男+女×パイ」


葛の葉がおろおろと言った 


「だから、そういう言い方はやめろと言ってるでしょう、 なぜ円周率をかける必要があるんです


 いいですか、 あなた方はいつもいつも 同じような問題を言い方と言葉を変えてこねくり回して同じ


場所をグルグル回っているばかり そのくせ人の話は真剣に聞かない お互いを見ていない


だから何も解決しないんです


私は直球ど真ん中しか投げません 口を挟まずにそこで見ていなさい」 白虎が一喝した


  それから朱雀に振り返った 朱雀は唖然として


「なんで急に」と言った


「すみません びっくりしたでしょう」言いながら椅子をすすめた


朱雀は吸いつけられるようにすとんと坐った。


「だって、戦闘妖怪で戦闘が自分の役目で結婚なんて考えたこともなくて料理とかしたことなくて」


朱雀がほとんど泣きそうになって言った。


「私はあなたの料理が食べたいわけじゃないんです、だだ一緒にいて欲しいんです


 いきなりで驚いたでしょうがもちろんあなたの気持ちを優先します、正直に言ってください」


朱雀は少しずつだが普段の自分を取り戻しつつあったので決心して言った。


「あの、薔薇の話をおぼえてますか?」


「ええ」 白虎はじっと朱雀を見ている。


「誰もいなくてもきっと、咲けるだけで嬉しかったんだと思いますたくさんの仲間もいたし、でも私には


仲間はいないと思っていました」それから息を吸って思い切って言った 


 「いつになるかわからないけれど私の夢がかなったとき、あなたに見ていてほしいんです」


と言ってまっすぐ自分を見て笑った 


この上なく特別な瞬間だった


白虎は朱雀の勇敢さに胸を打たれた

 

もちろん想念だろうが、茨の冠のように見えた黒髪の緑色の光輪に早回しで大きな花が咲き始め


花の冠に変わりそれをかぶった朱雀はほとんど非現実に見え、物語や絵画の中でしか会えないヒロインみ


たいに見えた  


そしてほんのり笑った


挿絵(By みてみん)


 白虎も笑おうとしたが朱雀のやわらかそうな桜色の頬に見とれ、こんなふうに笑わせられたことを誇り


に思いながら「ずっと見ています」と言って花冠の姫君をそっと抱きしめた。




自分を呼ぶ声と眩しさで目が覚めた


見ると周りは一面の海で、見知らぬ漁師が自分の顔を覗き込んでいた顔をあげると


「俺ですよ 俺」と言って漁師がぺろっと自分の顔めくって見せた 涼しい目が現れた


「青竜か、何でじゃ、ここはどこじゃ」


何が起こっているか把握できず清明は言った


「いかだで流れ着いたんですよ」


「ああ、なんだと」


「いや、最初ね 玄武様のところに流れてきたらしいんですが、いかだに大の字の清明様が屈いていて、


なんかのテープでぐるぐる巻きになっていてそこに暴言がこれでもかと書かれてたらしいです」くくくっ


 青竜が横を向いて笑った


「何があったんです?」


まだ笑いながら青竜が言った。


(あいつは なんてことを なんということを)


怒りに震えながら立ち上がろうとすると全身が痛んだ。


「周りには見えてないから、それ脱いだらどうです暑くないですか」青竜が自分の烏帽子を指していった


「ああそうだな」烏帽子を脱ぐと青竜が「そ、それ」言いながらぎゃはぎゃは笑い出した 頭に手をやる


と大きな真っ赤なリボンが付いている。


青龍は笑いすぎて船べりにつかまって海にげえげえ吐き出した


「お前吐くほど笑うことはないだろう」


「だってそっちっも ぎゃあははぎゃはははははははは」


着物のそでと裾にバラとくろねこの刺繍がついている


「なんだこれは なんて暇で酷いことを・・・・」


座って顔おおって考える


 正常なことが皆無になっている


 いつからだろうずっと前、昔からだそもそも自分たちの存在が、正常でないとしてもそこには最低限の


 ルールがあったはずだ  


 自分は魔を封じる陰陽師で自分を守り一緒に戦うはずの青竜は位は低いが軽く神のはずだそれが


二人でマグロ漁船に乗り、青竜は自分を見て笑いすぎて嘔吐している 


「何があったんですか?」まだ笑ったまま青竜が口元を抑えて近寄ってきた


どこからとっても笑われ嘔吐されるだろうがとりあえずかいつまんで話した


その時「清明様それ」と青竜が言ったので胸元を見ると手紙が挟まっていた葛の葉からだった


「読んだらどうです」青竜が言った、清明は手紙を開いた


挿絵(By みてみん)


清明様 

 

 本当は打ち明けたくなかった、すべてを話してしまえばあなたが私を忌み嫌うようになるのがわかって


いたからです 私は誰よりたちが悪い性分ですこれは生まれついてのものでしょう 


最初、蔵から出て清明様達と暮らせるようになった時のその嬉しさは今でも覚えています


けれど清明様は忙しくお話する時間もありませんでした


 そのうち怒る時だけ私だけを見るのに気付きました


そして 私は、あなたに見てもらうためにあなたを怒らせるのに夢中になってしまいました  


あなたを怒らして調子に乗っていると本当魂が震えるほど生きている喜びが実感できてやめられなかった


のです


こんな邪悪な自分は封印されて当たり前だと思っておりますが 最後の名残に少しいたずらさせていただ


きました


 あと朱雀と白虎殿の後処理がありますので少しだけ猶予をください


そして帰っていらしたら私を封印なさってください 


 もう口答えは一切いたしません


それから蔵の中の記憶がないのは本当です


もうどうでもいいことですけれどもずっとずっと愛しておりました 


 葛の葉



「なんじゃこりゃあ」


手紙を読み終えて清明は絶句し茫然とした  


「清明様気付かなかったんですか?あいつは清明様にしか喧嘩を売らないでしょう」清竜が言った


「気付くわけないだろう こんな凶悪な悪質な愛情かこれは?」


清明は薔薇と黒猫だらけの衣装を見ながら言った。


お前だって玄武様に拷問されてただろうあれは、愛か?」


「やめてくださいよ 何で今そんなことが出てくるんです?」


青竜が心底嫌そうに言った、もう思いだしたくもない

  

あ、でも蔵の中の子供の葛の葉の記憶を消したのは俺です」青竜が言った


「なんでだ、お前あいつになんかしたんか?」唖然としていった


「いや、子供のころあんまり可愛かった


んで育ててみようかと思ったんですが清明様にぞっこんでね 泣いてばかりいてなつかなかったんで


すよ」


(せーめーさま こんどいつきますか いつですか?もうかえるですか?もどってきますか)


子供の時の葛の葉が思い浮かんだ「それで、記憶を消したのか?」


「いや、それだけじゃなく男ができましてね」


「男ってあいつは、ほんの子供だっただろう」


「もちろん、そういう相手ではありませんが子供特有の100パーセント両想いな感じでしてね」


「あいつは蔵の生活を満喫しとったんか、そんなに」清明はうなだれた


「まあ、せっかくだから海を満喫していったらどうです  自然に触れると霊力が上がってまた新しい怪


異にも会えるでしょう」


青龍はそう言ってとがった歯を見せてにっと笑った


 第三章 完

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