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清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
16/72

清明様の憂鬱 第三章 ⑧

頭を動かさないようにして白虎は朱雀を呼び続けた


しばらくすると朱雀が薄く目を開けた そして消え入りそうな声でぽつりぽつりと話し始めた


「昔ね、薔薇の花がたくさん咲いている、 場所があって 本当に綺麗なのに 誰もいないんです


 せっかく 咲いたのにね」 何をを言い出すのかと思ったが黙って聞いていた。


挿絵(By みてみん)



「だからね、もうそこには行きませんでした 枯れるのを見るのが嫌だったんです」

 

そこで 口の中が痛んだのか ちょっと顔をしかめたので 


「大丈夫ですか?あまり話さないほうがいいですよ」白虎は言ったが 朱雀はぼんやりした目をして話し


続けた。 


「私は、こんな姿ですから見くびられるのに慣れています。


 それから圧倒的な優位に立ったと思ったとき相手が物凄く残酷になれるのも知っています 


あなたはもとに戻りましたか?」


 白虎にも朱雀が、言いたいことがおぼろげにわかってきた たぶん自分は究極的に弱って見えたのだろう

 この人は ここのままでは戦闘妖怪として戦えなくなるか、誰かに殺されてしまうと思ったのだろう


「ねえ、私はもう大丈夫ですよ」と言うとうつむいたまま薄く笑った  


「それにね その薔薇はまだ咲いていると思いますよ」「えっ」と言って 朱雀が顔をあげた

 

「花は何度でも咲くんですその元の木が 枯れない限り だから 季節が来ればまた咲くんです 


元どうりに」


「ああ、そうですね本当に」朱雀が笑った


 無邪気で本当に嬉しそうに生涯忘れ得難くなるような美しい表情だった。


「今度は あなたが 元気にならなければ、そうだ もうすぐ 春ですし その場所に行ってみましょう


 か?」 


「ああでも」朱雀はまた困ったような顔になってうつむいた 。


「私は、明日から 普段 どおりに戻ります、 だから あまり優しくしないでください 


私は困るのです」

 

 白虎は少し考えこんでから


「まだ立てないでしょう?」と言った。


 「もう少しだけ休めば大丈夫だと思います」という答えが返ってきた


「とりあえず、部屋まで運びます」  


「部屋のがゆっくり休めるでしょう」 


「あの、私は・・・・」 言いかけるのを制して、


「勘違いしないでください これは親切じゃありませんよ 私だってそんなお人よしじゃないですよ あ


んな写真送った 罰です」朱雀が青ざめた。 


「ああ、ごめんなさい あの時 スマホが壊れていれば・・・・」


白虎は うろたえている 朱雀を抱き上げた 


  その時「ごんずべばああああ」と言う謎の うめき声が聞こえ「白虎殿 刀を 」朱雀が表情を変え


て言った。


白虎が片手で朱雀を抱えたまま刀を取った  


朱雀は、もう胸元にもはさんである小刀を抜いている  


 二人の顔に緊張が走った


「 おろしてください そこに」 朱雀が 言って シンクの横を指した


白虎は そこに そっと 朱雀をおろした


挿絵(By みてみん)


 朱雀は 流し台を開けありったけの包丁と、引き出しをひっくり返し とがったフォークや ナイフを 

並べた


「私が援護しますから」と言って白虎を見た。


白虎は、声のするほうに回り込み唖然とした 


 緑色 ぬるぬるの液体に覆われた人間がいた


「何者」と叫ぶと 


「ひゃっことーわらいめんか?」とわけのわからない言葉を残して倒れたまま動かなくなった


「白虎殿 白虎殿」 朱雀が呼んだのでそばに言ってしゃがみこんだ 「葛の葉は?」と言った


そういえば姿が、見えない 

 

「私は、大丈夫ですから探して来てください」朱雀が言ったので


「わかりました 何かあったら 大声を出してください」 と言って部屋を出た勢いよく部屋からとびだ


した。


とたんに何かにぶつかりそうになり「わわわ」と言いながら止まった 


そしてぶつかりそうになったものを見て唖然とした。


 いつもの おっとり顔で 不思議そうに 葛の葉が白虎を見上げている

 

「どうかなさいましたの?」葛の葉が、自分を見あげて聞いた


「どうか」 って不意を突かれて 白虎は黙り込む


 あれ、何で慌てていたんだっけ、白虎はもう一度葛の葉を見た。


 葛の葉は相変わらずふわふわした曖昧な表情で自分の答えを待っている 


いつも思うがこの人のこの超マイペースな表情にはそれだけで破壊力があるなと思う


質問は何だっけ、 どうして 急いで どこにむかっていたんだっけと言うか自分が何をしていたのか 


そもそも自分の、存在は何なのか 自分は今、輝いているだろうか?


など、ものすごく 何の関係もない疑問までわいてきてしまう


 葛葉は荷物をもって朱雀のそばに行った。


「大丈夫?フットマッサージをしましょう、フットマッサージ機にお湯を入れてアロマオイルをたらし


 朱雀の足を入れた。


「どう、熱くない?」


「気持ちいい」朱雀がうっとりしたように言った

 

「じゃあ、少し眠りましょう、これを見て」


朱雀の指をかざすとパチンと鳴らしたとたんに朱雀がぱたんと目を閉じた、葛葉は倒れないように体制を


整えてから白虎を振り返って緑色の物体を指さして言った。


「それ、清明様ですよ」


「あの・・・・」 


 白虎は 床に転がった ういろうの 塊のような物体を見つめた


「どうしたらこんなことになるんですかね」


 「あのですね すましが人工呼吸の時吐いてしまいましたの 張り切りすぎて 爆発するものもおり


ましてねぇ」


葛の葉がため息をつきながら言った 


「これ、人工呼吸になってませんよね と言うか窒息してませんか?」

 

心なしか ゼリー状のものが プルプルと揺れている気がする


「それは 大丈夫 なんですの 呼吸器は術で プロテクトしてありますから呼吸不全の心配はありま


せん このすまし汁は 固めなくてはとれませんの手伝って言っただけます?」

 

「ああもちろん」


葛の葉に手渡された すましひやしと書かれた スプレーを持ち、マスクをかけ、全体スプレーをかけ



 かけ終わると 窓を開け 喚起した後 葛の葉が冷たいお茶を入れ「ありがとうございました ご苦労


様です」と言って頭を下げた。

  

「ただ一つだけ問題があるんです」 


なんだか、物凄く 嫌な予感がよぎった


 「なんですか?」「すましがね 穴という穴に、すまし汁を吹き込んで しまってねえ」


 葛の葉が困り顔で言った

 

やっぱり そっち方面だった 白虎は 頭を垂れて言った


「あのね、どうせ 尻でしょう わしに吸いだせとか、言うんでしょう」  


「いいえ、まさか それはマツイ棒で何とかなりますわ 問題は もっと細い穴で あの 固まったら 


膀胱炎になって、こじらせるととても大変なことに」 

 

そこまで 言われた時 脳髄の近くで何かが、ぶんぶんうなりをあげ 幻覚だろうが大きな石を運ぶ


人たちが見えた 。

 

あれはきっと、ピラミッドを作っているのではないか?


「どうしたんですの」葛の葉 が不思議そうな顔で見た 


一瞬で彼方まで 飛んで行った意識が戻った

 

「あのそれって・・・・尿道ですか?」


「まあ さすが 頭の回転が早いですわ」 葛の葉が手をたたいて、言った。


「それを、吸いだせと?」


「やっていただけるんですか さすがですわ あなたは 本当にすばらしいわ」


「 あのですねぇ・・・・・」


「はい♡」 葛の葉がにこにこと 自分を見た白虎は顔をそむけた


 いつも思うが なんだろう 


このような下劣な要求が、何度あったことだろう 自分はここで立ち上がり怒りを爆発させていいのでは


ないか?


 人命救助と言いつつ、もしそんなことをしたら 絶対にその映像をばらまかれ、自分には わからな


い世界で高額で 取引されるのに違いない 

 

もちろん 自分には一円の キャッシュバックもなく 


いやお金の問題ではなく 自分の尊厳の問題で、自分はもっと早く 怒るべきだったのだと思いつつ 


この人が嬉しそうに楽しそうにこたら にこたらしている顔を見ていると 怒りが内部から 蒸発してい


くのはなぜだろう

  

白虎はゼリー状の塊を見降ろした。 


ういろう のようなそれは、今は固まりはじめ 抹茶のアイスバーのようになっている


「さあさあ、はやく」 葛の葉がにこにこしながら言った


穏やかでに慈愛にみちた目で穏やかに自分を見て微笑んでいる姿はハッとするほど端正で柔らかくで


怒りはどんどん引いて遠くに行ってってしまう

 

と言うか、もう 全身の 力が抜けてどうでもよくなっていくのがわかる


からね 相当な吸引力が必要ですの


「以前は 青竜がいてくれたから 助かったのですけれど」


 「青龍が?」 思わず大声を出した


「ハイ♡」葛の葉がにこにこ答えた


 「青竜が吸い出したと 言うのもおかしいですが それ以前に 何でこういうことが何度も起こるん


ですか?」 


「それは私にもわかりませんが、 いえ 以前は あずきバージョンでした やっぱり みんなが 


人口呼吸を嫌がってそ れで小豆洗いに頼んだんですよそしたら」


「あずきバーになったのですね」白虎はため息をついた。


「あずきバーまさにそれ 、さすがですわ うまいことおっしゃりますわ それで特大と言うか等身大の 

うふうふ うっはは ぎゃははははははははははは」

  

何か、物凄く余計な事を行ってしまったらしい 


つぼったのか 変なスイッチがはいったのか?


 葛の葉は笑いが止まらなくなりさらに、


 体を のばしたまま ぎゃはぎゃは ごろごろ 転がってシンクまで行きまたぎゃはぎゃはごろごろ 


笑いながら返ってきた。

 

「ごごごごめんなさい 思いだしたらつい」坐りなおして 涙をぬぐい白虎のほうを向いて


「エビフライのものまね なーんつってね なんてね 」言いながら 鼻の穴に 指を入れてひらひらさ


せた 


「あの・・・・・」


 「ああ ごめんなさい 滑ってしまいましたねぇ 今度は縦に回りますわ、


それから ああ 思い出しましたわ 青龍はね吸出したんではなく、搾り出したんですよ 手ぬぐいで


ねぇ」 


「術とかでなく?」


「はい」  


「あいつのことだから、また 容赦なくやったんでしょうねえ」


 白虎は頭を垂れた 。



 楽しそうな笑顔が浮かんだ あいつは酷ければ、 酷いことが起きるほど、そして酷いことをする時ほ


ど楽しそうに笑う。


「そうなんですの」  葛の葉が空中を見つめながら言った


「清明様は大丈夫だったんですか?」

 

「幸いなことに2週間位の入院で済みましたので 大事に至らなくて本当に良かったですわ うふふ」


「あのそれって充分大事に至ってますよね?」 


「まあ、それより その後が大変なことが起こりましてねぇ」


「それより、大変なことがあったのですか?」

 

じんわり 胸やけがしてきた じゅっと焼かれる感じではなく とろ火でコトコトされている感じに 


 そういえば胸やけという言葉はあるのに胸煮というのはないなあ、今のこの感じは


 胸煮込みと言ってもいいが・・・・


「そうです」 葛の葉の笑いが消えた 。


「あいつは、その絞りだしたものを、私と朱雀に 食べさせようとしやがったんですよ」

 

「ええええええええ」


 これには 白虎も大声を出した。」


「何でですか なぜなんのため そんなことをするのですか?」

 

「さあさっぱりわかりません なんでしょう5w1H で聞かれても あいつのやることに意味なんて


ありませんよ ああ思い出しても腹が立つわ」

 

「それで 食べたんですか?」


「いいえ そのころは私たちも 未熟物でね あいつは あからさまにバカにしてましたのよ  


それがさわやか好青年の顔で新しいスイーツを手に入れたから食べてみなってねこなで声で言うんです


よぉ、私と朱雀に一つずつ 術でカバーしてありましたが キラキラ光るイチゴのジャムが本当においし


そうでそのころ スイーツ自体がめずらしかったので、とても 食べたかったのですが 


あいつがずっと見てるんです、にやにやとわらいながら」


「えげつない」 白虎の頭に ありありとその絵が浮かんだ


「それでね あんまり怪しいんで にこにこして 部屋で食べるね ありがとうと言いながら 


玄武様のところに走って行ったんです。


 玄武様ならすぐ見破れると思ったんですわ」


「それは 賢いですよ 玄武様なら 軽く見破れたでしょう?」


「それが・・・・」 葛の葉が目を伏せて言った 


「朱雀がね 玄武様 これ」 と言った途端、目を細めましてね ああやっぱり何かわかったのねと二人


で 顔を見合わせて笑ったんですの


「やっぱり、青竜だって玄武様にはかなわなかったのですな さすがです」 白虎が言うと葛の葉が 


悲しげな顔で言った。


「違うんです 何か勘違いをしてしまったようで、あっと言う間に食べてしまったんです」


「ええええええ」

 

「もちろん私たちのせいになったら困るので青竜にもらったって説明はしました。


 でも やっぱり製造過程までは言えません


「とにかく 怒りのアドレナリンでがんじがらめのような状態で、朱雀は体中に武器を忍ばせましてね


私は 、本を抱えたまんま 逃げられないように必死で戦いました、でも1日寝込んだ、玄武様が起きて


きてくださってね でもさすが玄武様ですわ すぐに捕まえて座敷牢に入れましたの」

 

「はあ、さすがですな」


 自分の声が 平坦になっていくのがわかる 大体仲間内で 何でこんな死闘が繰り広げられなければな


らないのか?

 

しかも、 原因は清明様の生絞り小豆アイス、でも 黙って話を聞いていた。 


どうやって突っ込んでいいかもわからなくなったからだ 。

  

「もちろんあいつはとぼけました それで 玄武様が拷問を加えたんです」 


「はあ、 玄武様が?」


 確かに怒ると怖そうだが、白虎にはいつもニコニコとして妖怪と言うか、仙人のように見える


「拷問て どんな風に?」 


「さあ、私たちには刺激が強いからって見せてくれなかったんですが なんか鞭とか 、ろうそくとか


 あとなぜかハイヒールなんかも使ったらしいですわ」


「それは 二人で遊んでただけなんじゃないですか?」


白虎は普通に答えたがまたひとつ信じられるものを失ったと思った。


「それでも反省しなくてね、清明様の生絞りを匂いが出るように煮詰めましてね、その煮詰めたものを 


持っていって 玄武様が押さえつけて 無理やり飲ませようとしましたらね


どうしたと思います?」  


「さあ」


「泣きましたの あの青竜が そしてやっと 謝りました 今思い出してもうふふ あははは あっはは


はは きゃはっは あっははは ぎゃはははははげははっはは


は」と笑いだした


 しかも 20センチくらい中に浮かんで縦にまわっている


「なななあなんですか?それ」 白虎は仰天して聞いた 


「あら これ知りません、 このまま速度を速めるとく回ると 人魂になれますのひゃあは」


また回りそうになったので 白虎が肩を掴んでとめた


「あの もう回らなくていいですから」

 

「あらごめんなさい つい 習性と言うものなのでしょうか 思い出してもあんまりおかしくて うふふ」


言いながら 鼻に指を突っ込んでひらひらさせた


「それからですわ 罰として 漁船に 乗せるようになったのは 本当は2丁目で働かせたかったのです


けど白虎殿に比べるといまいち人気がなくてねぇ」


挿絵(By みてみん)


 

「あの そっち方面じゃなくて普通に ホストクラブとかで働かせてれば あいつなら大成功してたと思


いますが・・・・・」 白虎はうなだれたまま言った



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