表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清明様の憂鬱ネット小説大賞六   作者: @のはらきつね
12/72

‎清明様の憂鬱 第三章④

  すごく懐かしい人にあったような気がする。


挿絵(By みてみん) 


とても嬉しくて ずっと話していたかったが その人が 急に泣いているとも笑っているとも取れる声に


なって「もう帰ったほうがいい」と言った 。


 とたんに 闇の中に真夏の真昼の炎天が現れたように 周りがいきなりぱっと眩しくなり、輝いたように


なって薄目を開けた   


深い闇の底から、突然吊り上げられたような感じだが気分は悪くなかった。 


闇の中にぼおっと色彩が浮かび上がった


「ああ、気がつきましたの」 振り返って葛葉が言った


「どこまで、覚えていらっしゃいますか?」 と聞いた。

 

  病院で注射を打たれてから記憶がないというと その後の説明をした。


 聞いてるうちに意識がはっきりして気まずくなった


「何で、注射でそんなことに、なったんでしょう?」 


「さあ、たぶん麻薬の少し入った麻酔のようなものを、使ったんでしょう、それには、心理的なものが大


きく作用します あなたの、不安が脅迫観念的なものに変わってしまったのでしょう


  あの先生は名医ですがあなたの気持ちを考えて、麻酔の担当も看護士も遠ざけて一人で診察しようと


した


それが仇になったのでしょうね」


「ああ、申し訳ないことを・・・・」 そうだ、思い出した何でかすごく不安になって・・・・・


「しょうがありませんわ、 誰かにお会いになりましたか?」 


「は」


「誰か懐かしい人に・・・・・」


「ああ、夢を見ましたが」 そこまで言ってなぜか感傷的で泣きたい気持ちになった


「あなたに愛情をたくさんくれた人ですか?」


「たぶん そうです でも自分は少しも返せていない」


そう言うと葛の葉は下を向いて軽く笑った


ため息のような笑いだった。


「ねえ、私は肉親というものを知りませんから偉そうなことは言えませんけど愛情というのはきっと与え


るほうも嬉しいのではないのでしょうか?」  


「そうでしょうか?」


「そう思います」葛の葉の顔はななめになっていてよく見えない。


「それから思い出を大切になさるのはいいことでしょうが 


あなたはもう人間ではありません 


ここでは人間の世界では考えられないことが普通に起りますし 悪い妖怪もたくさんおります


起きている時は真ん中にいてはだめですよ」


  柔らかいがしっかりした声で言ったそして


 「ごめんなさい余計な事を申しましたお腹はすいてません?」  


「ああそういえば」


「何か、消化の良いものを用意しておきます、起きられるようになったらゆっくりおいでください」


しとやかに目を伏せて立ち上がり悪い妖怪は去って行った。

  


 「何か、淡泊で、さっぱりして 和っぽいものが食べたい」 朱雀が言った。


「たとえば、どんなもの?」と聞くと「冷やっことか・・・・」と言ったので  


「それじゃあんまりじゃろう」っと言って、葛の葉は冷汁を作った


アジの干物のだし、きゅうり 白ごま絹ごしのお豆腐


さっぱりとして食べやすい。


 季節外れだけれどみんな無言で食べた。 


食べ終わると清明が思い出したように


「白虎殿の様子はどうだった?」と聞いたので


「もう、起き上れますよ、清明様も様子を見てあげてください」


「わかった」と言って清明が出て言った 。

 

 屋敷には平和が戻ったように見えた。


 そのころ白虎は何かまだ意識が隔たった感じがあったが起き上った 周りがゴミだらけになっている  


近くにあった袋を取ってみると、あみかけの何かが入っている。


 編み針が血だらけになっている これは自分がやったのだろうか?  


考えてもわからないのでとにかく顔を洗って食卓に向かうことにした。


食卓に、朱雀が突っ伏している


「どうしたんですか?」というと


「ああちょっと疲れて」と言って元の姿勢に戻った 。 


 白虎は清明の前に言って


「清明様すいませんでした」


「ああ、それより体は、大丈夫ですか?」 清明が本当に心配そうに言った。

 

その深刻な顔を見て、うろたえにも似た申し訳なさを感じた


 もちろん清明は、変態クリニックの内情を知っている、それが顔に出ただけだ 


いい香りがして葛の葉が冷汁を運んできた。


「玄米も混ぜておきました、玄米は頭をスッキリさせて気持ちも少しハイになります、胃がびっくりして


しまうのでゆっくり食べてくださいね」と言って笑った 


出来るだけゆっくり食べた。


身体にしみこんでいくような感じがして頭がさえてきた  


落ち着くと、お茶を置きながら 


「朱雀そんなとこで寝ないで」 葛の葉が言った


「うう、もうちょっと」 朱雀が言った。


 その指にバンドエイドが残っていた


   前 病院に見送ってくれた時 、バンドエイドだらけの指で「稽古しすぎちゃって」と笑っていた


のを思い出した。

 

それから袋に入っていた 血だらけの編み物を思い出した あれは赤ん坊のソックスではなかった


か? いつも気短で、 無表情の朱雀がピンクのふわふわしたセーターを着て楽しそうに笑っているのを


思い出したらまたすまない気持ちが押し寄せてきた 。


二人は肉親を知らない


 愛情を与える相手ができて嬉しかったのだろう 


 二人の落胆がじわじわと締め付けるように押し寄せてきて勝手に言葉が出た。  


「あの養子を貰ったりとか」 


「ああ、ヨーシ」 朱雀がむにゃむにゃしながら言った。


「よーし、よーしってヨーシ」 それから、ばっと立ち上がった


「あああああああああああ願書おおおおおおお」


「願書ってあれか?」清明がうんざりしたように言った


「協力してください、このひとでなし」 


「ひとでなしって 確かに普通の人じゃないが」


「すっとこどおっこい」


「それって死語だろう」 


「全部死語でののしってあげますから、何とかしてください 頭が痛いのなら、やさしさ抜きのバファリ


ンがありますよ」


「いや 大喜利をやらなくてもいいが」


「何か明るくありませんか?」 白虎がぼんやりと言った。

 

なぜだか部屋が明るい とても明るい

 

「本当に、おかしいですね」葛の葉が言ってからぎゃっと叫んだ


「なんだ、どうした」


「あの トッピングに紫蘇の葉と間違えて ドン・マルコから もらった草を」


「何だと なんでお前はいつもいつも怪しげなものを持ち込むんだ」


「だってくれるって言ってるのにことわっちゃ損じゃないですか?」


「何してくれる願書の提出の日に」 


朱雀が食卓の皿をブンと投げた 葛の葉はすばやく結界をはってお皿は手前で粉々になった


「ものに当たらないでよ 鳥脳 おやまゆーえんちー」 


言いながら 変なスッテプを踏み 鼻に指を突っ込んでひらひらさせている


「ぎゃはは」 白虎が笑い出した 。

 

「笑い事じゃないですよ 白虎殿 あなただって 全裸で腰に手を当てて 男神輿の上に乗りたいとい


う夢があるでしょう」 


「ないですよ なんですか その夢 ナイトメア 悪夢でしょう、それになんか話がまた退行してますよ」  


「白虎殿の夢は大通りに面したガラス張りのスタジオで、あぶらで光らせた体で


物凄い勢いでエアロビクスすることでしょう、全裸で・・・」  


「何でいつも全裸なんですか?」


「テキサスで決まっているから ですわ ナウいヤングは全裸 


それにあなたの最大の魅力は全裸でしょう  それを取ってしまったら何が残りますか?」


「全裸の時点で何も残ってないでしょう  


それになんか イラッと来るんですけど、 全裸って言われると・・」


「難しい 人ですねぇ」 葛の葉がため息交じりに言った  


「私が難しいんじゃないでしょう、 あなたが私を難しくさせてるんでしょう 


大体あんなカレンダー作ったのが 始まりじゃないですか?」  


「それは需要があるからです そこに供給をしただけですわ、それによって少し何か発散されてくれれば


白虎殿の安全がが確保できます」


「煽ってるだけでしょう」


「ええっそんな つもりはないです」

 

「でも そうなってるんです」 


白虎が何か思い出したのかぎりぎりと歯噛みしながら言った


「男の人の世界は摩訶不思議ですねぇ」 葛の葉が考え込みながら言った。  


「そういえば カピカピカレンダーはどうなりました?」朱雀がつられて聞いた


魚介類(ぎょかいるい)の香りの・・・」葛の葉が言って、二人はぎゃはぎゃは笑い出した 。


「せめて磯の香りとか言ってくれませんかさすがにね?


自分たちでも嫌になったんでしょう、もうありませんよ」  


「新しいのを 用意しなければねぇ、もっとワイルドエストなバッファローとの絡みとかどうでしょう」


葛の葉が考え込んで朱雀が叫んだ


「あ、思い出した 清明様 願書がまにあいません 何とかしてください」


「あそこは何年も学校に行かなければ、ならんのだぞ全寮制で また何かあったら戦えるものがおらん」  


「チーム二丁目がいるでしょう 白虎殿のためなら喜んで命も投げ出しますよ 


それに青竜や玄武様はいつも好き勝手してるじゃないですか? そういう差別をしていいんですか?」

 

「青竜はお前たちが 小金欲しさにマグロ漁船に乗せたんだろう」


 

「青竜はともかく、何で玄武様は 温泉ばっかりいってるんれすか?」


朱雀が怪しげになってきた口調で言った。


「なんか、そこの中居さんと付き合ってるらひいんじゃ」


 「ええっ」朱雀と葛の葉が叫んだ


 「ねぇ、玄武様って亀の化身れすたですね 今度帰ってきたら こっそり 採血して 錠剤にできな


いれすかね


きと よく効きますわ すっぽんエキスよりすごい」


 「仲間を使って怪しい商品を開発するのもいいかげんにひろ」 


「でも狐は化かすものです 魔女は飛ぶものです」 葛の葉が言ってまたぎゃはぎゃは笑った


 「ああ、おまえまさか・・・」清明が青ざめた


「なんだ それ」 朱雀が言った。


 「清明様 がネットでもっこりかってたんじゃ ジブリのDVD、実写のほうまで」


「えええええ、さむ マジで気持ち悪いってはなひかけるな、ちょっと 時間がない なんとかしてく


だはい」朱雀がふらふらしながら清明に近寄った


 「地下のモールで毒消草がうってまひたよ たひか?」 白虎が言った


「ぐう」 朱雀がよろよろしながら歩き出した


 「アンドレ アンドレ 力をかしてくれえ 」


「なんですかね なんか この凶暴さと平和的な気分のミックスは・・・・」


白虎がとろんとしながら言った。


「マルコのファミリーは笑いながらマシンガンを撃ちますけどきっとこれのせいだったんでふねぇ、なん


かすごく残忍なことが思いつきそうです」


 葛の葉も結界の中で座り込んでとろんとした目をしている。


 「お前  なんてものを もひこむんじゃ」


緑色の泡を吹きながら倒れていた清明が覚醒したらしく這いずって近寄ってきて言った。


「静明様 ラピュタのばひょしらないんですか?」葛の葉が言った


 「ええ ほんとにあんのか?」


「ありますよ」白虎が言った


 「ええ白虎殿どこです」


白虎がニヤニヤしながら言った 「教えてあげないよ じゃん♬」


 葛の葉がぎゃはははと笑って


「そうだ あのロボットが守っていた 卵でオムレツを作りましょう 


そして上にケチャップで清明様の名前をかくこれで全世界のジブリファンが清明様の敵です 」


「ぎゃっははは」 白虎が転げまわって笑い出した。


「あれ 朱雀は ねぇでも今度周りが赤くないですか ?」


「あれこれ 夕焼けですよ」


 いつの間にか世界は全面的に夕方になっている


  真っ赤に染まりながら、朱雀 が廊下をほふく前進している


 「くーろーとかげええええええ」と歌いながら


 「なんですあの歌?」


 「黒ナマコ言ってましたよ、白虎殿の付属物のことじゃないですか?」


「わしのですか? 実はわしちょっと歌は得意なんです、なまこおおおおお くろなまこおおおお♬」 


  ミュージカル風に歌った


 「すごーいすごーい 美声じゃないですか」葛の葉がころころ笑った。



「ハモりましょう なまこおおおおおおお 黒なまこおおおおおおお」


「 お前白虎殿のキャラが変わってしまったじゃないか」今度は青っぽい泡を吹いていた


 清明が覚醒したらしく言った。 


「 杓子定規はいけません 今度から先手必勝ですわ、 やらないかなんて確認はいりません 


白虎度クラスならフリーーパスです オープンりーチです 


それに、やだやだ 夜中に一人で魔女宅 見てるほう寒々しいですわ ああこごえるう」


「お前は何でいつもいつも勝手に人の荷物を開ける?」


「面白いからですよ あの女の子、いくつでしたっけ?」


「確か、13歳じゃあ?」白虎が答えた。


 「 きゃああああ ゴルゴあんだあサーティーン、 通報しましょう 」


 「こないだ 近くを飛んでましたよ」


「ああ知ってます 朱雀がカツアゲしてましたから」


「なんだと 何てことする」


 「嘘ですよ 小山ゆーえんち」


 白虎まで真似して鼻に指を突っ込んでひらひらさせた


  「それにわしは、そういう趣味じゃないぞ何で DVDを買ったくらいでそこまで言われるんじゃ」


 「面白いからですわ」


普通の状態なら脳みそが腐って溶け出し耳から溢れそうな会話が妙に楽しく、ラテンのリズムに乗って活


発化した脳みそであらん限りのくだらない会話をつづけた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ