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プロローグ

新作です!

不定期更新になると思いますが、読んで頂けたら嬉しいです^^

 突然だが聞いて欲しい。

 まず大前提として・・・世界と言うものは複数ある。

 もちろん我々の住む地球も然り。

 それから例えば・・・超高度な文明を誇り、人型のロボットが闊歩するようなSF世界。

 剣と魔法を操り魔王を討伐するために、勇者旅立つRPGのような世界。

 はたまた、未開のジャングルに集落を建造、巨大なモンスターを狩って暮らすアクション世界。

 どこかで見たような・・・そんな風に感じられる方も居るかもしれない。

 已む無しである。

 ここはあえて、はっきり言わせていただこう。

 むしろ、地球の創作物のおける各世界とは、「全て」現存する世界なのである。

 そう、あれらは何一つとして・・・妄想などではないのだ。


 ではなぜ、世界が創作物で溢れているか?

 一般人には関知し得ぬ高次元体・・・所謂「神」の介入によるインスピレーションの産物、或いは異世界へと実際旅立ち帰還した者の、無意識による追憶。

 そんないくつもの偶然が重なり、我々は新たな世界の目撃者となる。

 そしてここより始まるのは、中世ヨーロッパ相当の文化レベル、いかにもなRPGを想起させるスキルや魔法、それに付随したレベルが物を言う世界の話。

 神々の箱庭『デュオス・ハルディン』にて目覚めた少年の、波乱に満ちた物語。

 良ければ、お付き合いいただこう。


 中世ヨーロッパ相当であるこの世界の文明レベルでは、未だ王政がほとんどである。

 群雄割拠とまではいかないが、治安は決して良い方ではないだろう。

 【騎士ナイト】や【戦士ウォーリア】、それに【魔術師マジシャン】や【妖術師ソーサラー】も存在する。

 今挙げたものは物は、総じて職業と言うものだ。


 職業・・・それはこの世界『デュオス・ハルディン』において・・・全てを意味する言葉と言っても過言では無い。

 なぜならこの世界の住人、全て生まれた折に職業を持ち、終生その職業と付き合っていくのだから。

 この世界の住人は大いなる神ハーレクインの名の下に、(一部を除き)八歳で初めて職業を開示する。

 職業を司る神殿にて洗礼を行うのだ。

 除かれた一部と言うのが王族や貴族。

 彼らは職業の開示こそしないが、得てして事前にスキルを診断、凡その当たりを付けている。

 

 そしてこのシステム、不思議なことに大体が両親の職業どちらかを踏襲する場合が多い。

 【騎士ナイト】の息子なら【騎士ナイト】、【仕立屋ニードルワーク】の娘なら【仕立屋ニードルワーク】と言った具合に。


 目覚めた人々に迷いはない。

 一度目覚めてしまえば関連したスキルや魔法、そして長年の経験でしか身に付かないだろう「コツ」のような物すら簡単に身に付く。

 短的に、その職業こそが天職なのだ。

 まさに神の御業、説明のできない不思議な力である。

 

 ここまではご理解いただけただろうか?

 前説は十分?心得た、本編に移ろう。




 ■




 時刻は正午、場所は大国ラードーンの王都ヘスペリア、ハーレクイン大神殿

 さて、ここで昨日八歳の誕生日を迎え、本日職業の開示を受けに来た少年が一人。

 彼の名はティクシー・フォン・ホーケンヴァレイ。

 少し赤みがかった茶髪、歳不相応な賢さを宿す青い瞳。

 肌は白めで・・・文句なしの美少年と言えるだろう。

 

 それもそのはず。

 彼の付き添いとして左右に並び立つ、絶世の美男美女が両親だ。

 ティクシーに良く似た色の茶髪、精悍ながらどこか子供っぽさを残した灰色の瞳。

 細身ながらしっかりと鍛えこまれた肉体は、まさに細マッチョの見本とも言えるだろう。

 王国最年少記録で神代迷宮『処女メイデン聖域サンクチュアリ』を踏破し、【聖騎士長ロードパラディン】を拝命した男、ラインハルト・フォン・ホーケンヴァレイ。

 救国の英雄としても名高い彼が父親。


 そして、輝くような金色の長髪を不思議な宝冠に納め、ティクシーと同じ青い瞳を優しく細める美女。

 独特な造りを為す純白のローブを着こみ、たっぷりとした服装の上からでもわかるスタイルの良さ。 ラードーン王国宿念の敵、ティアマト帝国の精兵5000を、ただ一人で打ち破った稀代の魔女。 

 元【王宮魔導士長アークウィザード】フィレーネ・フォン・ホーケンヴァレイ。

 出産を機に現職を退いた後も、未だ王の相談役として信頼厚い彼女が母親。

 

 武と智、更には優れた容姿のサラブレッドとして生を受けたのが、ティクシーと言う少年だった。


 神聖な空気満ちる神殿奥、洗礼の間。

 緊張しきりのティクシーの肩へ、両親はそっと掌を載せる。

 不安げに両親を振り返った少年に、彼、彼女は柔らかな微笑みを向けた。

 

 「ティクシー、不安に思うことは無いんだよ。」


 「そうよ、リラックス、リラックス!」


 ティクシーが不安になるのも仕方のないことだった。

 歴としたこの国の貴族であるホーケンヴァレイ家、その嫡男であるティクシーは、五歳から既にスキルの開花促す教育を受けている。

 しかし・・・彼には父であるラインハルトの職業、大系で言えば【騎士ナイト】に当たるそれのスキルである【剣戦技ソードマスタリー】であったり、【盾戦技シールドマスタリー】はおろか、母親であるフィレーネの職業、【魔術師マジシャン】側の魔法ですら何一つ発現しなかったのだから。

 彼は何度も思っていた。

 自分はできそこないではないのか?

 もしかしたら、この人たちの息子ではないのではなかろうか?

 そして彼は知っていた。

 高名な両親の息子が、八歳になっても彼、彼女の力を垣間見せるスキルを得ないことで、口さがない者から誹謗を受けていることを。

 しかし両親のかけてくれる愛情に疑う余地などなく、なぜか発現した【数学マスマティクス】や【弁論ディスカッション】に憤った。


 いつまでも踏ん切りの付かないティクシー、ラインハルトはいつもの如く少々乱暴に頭撫ぜ、フィレーネが背後からぎゅっと抱きしめる。

 トクントクンと背後から響く母の鼓動、せっかくのイケメン顔をくしゃくしゃにして笑う父の眼差し。

 彼はとうとう覚悟を決めた。

 頼りになる両親の後押しを受け、意を決し洗礼の石版に手をかざすティクシー。

 

 石版が光り輝き、赤い神聖文字が描かれる。

 年嵩の神父が厳かに告げた。


 「ご子息、ティクシー・フォン・ホーケンヴァレイ殿の職業は・・・【ナイトマネージャー】でございます。」


 その言葉・・・【ナイトマネージャー】を聞いた瞬間、ティクシーの全身に稲妻が走り抜けた。

 まさに青天の霹靂。

 幾筋もの冷たい汗が、背中を勢いよく伝わっていく。

 膝がガクガクと震え、自力で立っているのも辛い。

 全て・・・そう全て、彼は思い出してしまったのだ!


 そんな愛息の様子に気付けない両親。

 彼らとて息子の将来を案じていたからこそだった。


 「ふむ、聞いたかいフィレーネ?ティクシーの職業はナイトマネージャーと言うらしい。僕は初耳だが・・・語感からして【騎士ナイト統べるマネージャー】と言った所かな?」


 「そうね、ラインハルト!貴方の息子ですもの!騎士関連の職業が出ないはず無いのよ!」


 「はっはっは!何を言うんだいフィレーネ!ティクシーは僕の息子であると同時に、君の息子でもあるんだよ?むしろ【剣戦技ソードマスタリー】や【槍戦技ランスマスタリー】が無かったからね。

てっきり君の遺伝を濃く受け継いだものだとばかり・・・。」


 「確かにそうね・・・。もしかするとティクシーは、【将軍ジェネラル】や【将校オフィサー】・・・それもどちらかと言えば智略に長けるタイプの職業なのかもしれないわ?」


 「ふむ・・・確かに。この子は【数学マスマティクス】や【弁論ディスカッション】に秀でていたね。

うん!どちらにせよ将来が楽しみじゃあないか!」


 意図しない残酷な言葉、ザクザクとティクシーへ刺さっていく。

 手を取り合い破顔する両親を見て、彼・・・ティクシー・フォン・ホーケンヴァレイは戦慄していた。


 (違うんです父上、母上・・・それは!)


 ティクシーの心の叫び、両親には届かない。

 彼が思い出してしまった事は、余りにも現実離れしていて・・・。

 しかし、疑う余地など無いものだった。

 それは・・・。


 彼がこの世界、『デュオス・ハルディン』に転生した元地球人であると言うこと。

 前世の名、鷹谷土筆たかやつくし

 地球の両親が「土筆のように伸び伸び育て」と付けた名前、それがなぜかティクシー。

 そして苗字・・・ホーケンヴァレイ、作為しか感じられない。

 出来すぎた悪夢だった。


 何よりも彼を打ちのめしたのは職業の件である。

 ティクシーが前世を思い出す原因ともなった、忌まわしき職業の名【ナイトマネージャー】とは。

 決して【騎士ナイト】に関連するものでは無い。

 【夜間ナイト管理者マネージャー】。

 正確な訳はこうである。


 地球の某県、某市にある地域密着型のスーパーマーケット、「TKストアー」。

 某市には三件のチェーン展開をしており、それなりに繁盛している。

 このスーパーマーケット、なんと夕方五時には社員が全員退社するという徹底ぶりで、人件費を大幅に削減していた。

 夕方五時から営業終了の午後十一時まで、レジ打ちのアルバイト店員しか居ないと言う非常に杜撰な管理体制。

 そこで現れたのが男性パートタイマーにも関わらず、アルバイト店員の育成から、金庫の管理やクレーム処理、緊急の発注や戸締りまでをこなす云わばバイトリーダー的存在。

 【夜間ナイト管理者マネージャー】である。

 ティクシーの前世・・・鷹谷土筆は大学に通う傍ら、十八歳の折から三年間、この仕事に就いていた。 

 つまり・・・ティクシーに発現した職業と言うのは、前世鷹谷土筆が生前ついていた職業。

 そして彼が二十一歳と言う若さで地球を去ることとなった、原因とも言える職業であった。


 ティクシーは恐れ戦きながらも祈りを託す。


 (もしかしたら・・・本当に【騎士ナイト】関連の職業なのかもしれない!)

 

 半ば以上諦めつつも、それでも確かめずにはいられなかった。

 洗礼を受けたことで、閲覧可能になったステータスを誰にも気付かれないようこっそりと開く。


 (お願いだ!お願いだよ!)


 職業を得た時点で発現する最初のスキル。

 【祝福ギフト】とも呼ばれるそれを見れば、希望は繋がるかもしれない。

 何よりも・・・前世を思い出してしまったとはいえ、この八年間を共に過ごした両親だけは失望させたくなかった。

 そして開かれたステータス。

 確かに名前の下、職業【夜間ナイト管理者マネージャー】と書かれている。

 神父さまはカナ名しか言わなかったのに、しっかりと漢字の表記がされていることに更に絶望。

 そして・・・現実は当然の如く無情であった。


 名前:ティクシー・フォン・ホーケンヴァレイ


 職業:【夜間ナイト管理者マネージャー】Lv.1


 体力:D-


 腕力:D-


 知力:B


 敏捷:D-


 幸運:E


 スキル:【数学マスマティクス】【弁論ディスカッション】【包装パッケージ



 (こ・・・これはっ!)


 思えば【数学マスマティクス】はレジ打ちの経験だろうし、【弁論ディスカッション】はクレーム処理なのだろう。

 そして、ティクシーが【祝福ギフト】で得たスキル、【包装パッケージ】とは・・・。

 職業:【夜間ナイト管理者マネージャー】が最初に仕込まれる、贈答品を包装する為の技能であった。

 そこまで確認してティクシーは口から泡を吹き、完全に意識を失うのだった。

 






ここまでお読み頂きありがとうございます。

リ・アルカナもよろしくお願いしますorz

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