ヒーロー部
事件から一週間。
結局、事件は仮面の男が持ち込んだ物的証拠により、獅子王グループの傘下の裏の組織に対抗する組織から持たされたこの学園を舞台にした獅子王家に対する名誉損壊が目的の陰謀論ということで片が付く形となった。
勇騎が見たという仮面の男、彼がつけていた仮面もその組織が闇で活躍する際に使用して鋳物と合致、結果、ジョーカーの介入により、獅子王家に敵対する彼らの組織はその活動の範囲を大きく失うことになった。
全ては獅子王が画策したこと、だが、そのことは獅子王家の他の人間も知らない彼の単独で行われたこと、結果、彼らがいなくなって空いた闇の部分の隙間に獅子王恋夜直属がその勢力を広げることとなった、表向きには獅子王家がだが、その情報がいくらでもはいってくる立場にある恋夜はそれを利用し、自分自身の基盤を作りつつあった。
世界から孤立し、遅れていたこの国の怪人依存の戦力を変えるためにも、獅子王恋夜の野望は今静かに動き出していた。
一方学園では、一週間の休校を得て今日再開の日を迎えていた。
表向きはお互いを信頼しあった証として、かねてより勇騎が提案していたクラブ活動がこの日をもって許可された。保健室の横の空き教室を利用し、
ボランティア部改め、ヒーロー部が設立された。人助けを主とし、みんなに助け合いを心を引止めるための名目のもと、事の発端の勇騎を部長にすると、色々不都合があるということで、翔真を部長に、活動を始めようとしていた。
「これは何ですか?」
「これは花茶というものですよ、もう少し待てば。ほら開いてきました。面白いでしょ?」
興味津々の勇騎に樹里が説明する。
樹里は頃合いを見ると、保健室にあった形も大きさも疎らな器にそれを注いていく。
「で、あなたはどうしてここに?」
さやかはここに入ってきてからずっと思っていた疑問を口にする。
「はい、恋夜ぼっちゃまから、勇騎さんの監視を任されています。」
「監視って、だめでしょそれ」
「でも、勇騎さんは了承してくれましたよ。」
「いいのそれで?」
「いい!部長特権!」
「部長僕でしょ」
「おかげで、このような学校の生徒として認めていただけることになりました。
ダメでしょうか」
「いや、だめってことはないけど、」
「大丈夫だよ、会長さんいい人だし、不安なだけだよ。別に、何か問題を起こすわけじゃないし、問題なっし!」
「まぁ、そうね、それに志道君、普通に言っちゃいけないことも言っちゃいそうだしね。」
「ありがとうございます。勉強に関して不安はありますが、これから、公私ともによろしくお願いいたします。」
「勉強なら俺が教えます!」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「勇騎君も今まで学校に行ってなかったから似たようなもんでしょ。」
「だから翔真君から教えてもらったのを樹里さんに教えてもらいます。」
「だったら、僕が直接教えたほうが早いでしょ。」
「それから言っておくけど、赤点とったら、部活行けないからね。私と翔真は問題なけど、あなたと樹里さんは赤点危ないわよ。」
「まぁ、本当ですか?それは困りましたね。部活はまぁ、仕方がないとしましても、赤点などをとってしまえば、せっかくいい学校に入って箔がついたのに、就活の時に支障が出てしまいます。」
「大丈夫です!俺が教えます。」
その自信はどこから出てくる。一学期の結果を知っている二人は突っ込みを我慢する
「ところで勇騎君、どうして今日から制服なわけ?というか午前中まで、マフラーに革ジャンに手袋の、いつもの格好だったよね」
「いや、制服は自由だけども、一応指定のがあるから目立つのも何かなって。」
「そんな気概があるなら、一学期の頃になんとかしなさいよ。」
「お揃い、」
「わっ、先生いたんですか!」
「お前らうるさい、私が隣で昼寝ができないだろ。」
「昼寝って、もう夕方ですよ。」
「今日八時から職員会議があるから帰れないんだよ。」
「大変ですね。先生も何か飲まれますか?」
「じゃあ、サイダー」
「サイダーなんてあるわけ、というかなんで、」
「獅子王印の特性の物でよろしいでしょうか」
「あるの?そんなの!」
「はい、微炭酸でおいしいですよ。家庭科室においていますのでとってまいりますね」
家庭科室の冷蔵庫をすでに私物化している。
威厳あるこの学校の風土がめかくちゃになっていく。
「ところで、先生。お揃いって何の話ですか?」
「今日から、樹里さんが入っただろ?樹里さんも最初メイド服で来てたんだけど、サイズの合う制服があって、喜んでそれを着ているだろ。」
「まぁ、うちのは女の目線でもかわいいですからね。」
「だから、お揃い」
「……え!なにそれ馬鹿じゃないの!」
「ち、違いますよ。まさか、そんなことあるわけじゃないじゃないですか。」
目が完全に泳いでいるし、少し恥ずかしそうだ
「お揃いって、それで言ったらここの生徒全員でしょ。」
「まぁ、馬鹿の考えることだし。お前、それ破くなよ。今まで格好と思って暴れるとすぐに破れるぞ。ヒーロー繊維と違って、こっちのは綿やらシルクやら普通の素材だからな」
「ヒーロー繊維?そんなものがあるんですか」
「あぁ、あるぞ、耐久度に優れ、どんなダメージを受けてもズボン、女の着用者ならそれプラス、胸回りが絶対に破れない。ただし、粘液系の溶解を除くだが。」
「何そのご都合繊維」
「袖はよく破れるけどな。いいか、勇騎、この学校の制服、ボンボン用だから高いぞ。お前の小遣い平気で半年分とかすぐに飛んでいくからな。そうなれば万が一デートとかになった時にお金出してもらわないといけないからな。」
「了解しました!絶対に破りません。」
勢いよく敬礼した勇騎だったが、袖が汗でくっつき、袖がいきなり破れる。
「あーあ、」
「きらら師匠!!」
「知るか、お前のせいだろ。」
「もう、貸してみなさい。それくらい縫えばいいから、というか天都先生も脅しすぎです。
いまだかつてないほど怯えていてるじゃないですか。」
「いいんだよ、それくらい言ってて、普通の人の何倍も気を付けないといけないからな。」
「翔真君、糸出してもらっていい?」
「え、僕の糸で縫うの?」
「だってそれが一番丈夫だし細いでしょ」
(気持悪がられていた、糸をさやかちゃんが進んで、なんかドキドキする)
「その発想が気持ち悪い」
「翔真君、それはないわ」
「え!何!俺何も言ってないでしょ」
「いや、ヒーローとしての勘がすごく邪な欲望を感じ取り」
「欲望というより性癖だな。」
「二人とも何の話ですか?」
「あぁ、実はな、」
「言ったらマジで殺すぞ、お前ら。」
「なによ、そうやって隠されると気になるじゃない!」
烈火が世界で世界を変えようと、獅子王がこの町の闇の部分から世界を変えようと、動き出す中、保健室横、ヒーロー部は今日も平和です。




