魂
「ここで何をするつもりですか?」
人を遠ざけ、翔真、月影、勇騎を引き連れ第2運動場にやってきたきららは、魔法を使い、大型の魔法陣を描いていく。
「まぁ、私は魔法陣なんていらないんだが、今回はお前たちが使うからな、」
「おいおい待て、いい加減何をしているか説明してくれ、私は現場の指揮を、」
「伊万里さんを探すんだろ。だから一番手っ取り早い方法、もしこれでだめだったら足で探すぞ。勇騎、樹里さんを見つけた時の感覚、覚えているか」
「はい、忘れるわけありません。」
「そうか、んじゃ、その感じで、ただし、今回は探すのはお前じゃない、お前じゃ伊万里さんは見つけられない。お前は器だ、私がこの星と魂とつなぐ、できるな。」
「星と命の流れと一つに、大丈夫です。師匠から教え込まれてます。こうですね。」
勇騎は手を広げ、目を閉じる。
「流石は烈火君の愛弟子だな。完璧だな。まぁ、私の魂が素で見えていたくらいだからな。さて、かなり変則的だが、勇騎を媒介にして魔力を使って、広範囲に魂の捜索をかける。」
「魂の捜索?」
「お前もヒーローの端くれなら昔はできただろ、あれだ。」
「でも、あれはあくまで、なるほど、だからこそのあなたの魔法ですか」
「そうだ。だからお前の力も借りるぞ、潜在的にお前は強い魔力を持っている、お前の魔力も使ったほうが圧倒的に範囲が広がる。私も自分の魔法に集中できるしな。」
きららは魔法陣を書き終わると、3人を中心に呼び寄せ、円になって手を繋がせる。
「いいか翔真、さっき説明した通りだ。目を瞑ってさやかを求めるづけろ、何百、何千という魂の中からさやかを見つけ出せ。小動物のようなノイズはある程度勇騎が除外してくれるはずだが、人間の魂の選別までは不可能だ。勇騎と伊万里の酸の間にそれほどの絆はない。魂を感じることができるのはおそらくお前だけだ。
普通ヒーローになる奴は徐々に魂を感じていくものだし、勇騎のように訓練を積んでいるならまだしも、お前は初めての感覚だ。戸惑うかもしれないが落ち着け」
「でも、僕、魂を感じるなんて。」
「難しく考えるな、助けたいんだろ、それだけを懸命に考えろ、お前の思いが純粋で、強ければ伊万里さんの魂も答えてくれる。まぁ、愛をもってやってれば、なおよかったんだがな」
「やめてくださいそういう話は」
「だって本当のことだろうが、」
「やってるって何をですか?」
「まぁ、色々だ。お前は余計なことを考えるな。お前は……まぁ、心配はいらなそうだな」
「それじゃ、行くぞ、限界は30分、理想は5分。それまでに見つければ助かる可能性他は高い。いいか、行くぞ」
全員が目を閉じると魔法陣が光りだす。
翔真は言われたままに目を閉じ、さやかの名前を呼び続ける。
「!!」
その瞬間、翔真は視覚でも、触感でもない不思議な感覚を感じる。
目に見えている訳ではない。だが、確かに見えている、確かに感じているこれが魂の世界。
何千、何万という命を感じる。不思議な感覚だ、触れるだけで相手が理解できるような。
『だめだよ、触れちゃ!』
一番近くに感じた魂に近づこうとした瞬間、勇騎の声が頭に聞こえる
『迂闊に触れると翔真君の魂とその人の魂の境界線が弱まってしまう。そうなればいずれ、二人ともダメになる。』
(勇騎、僕はどうすればいい)
勇騎に語り掛けようとするが声が出ない
『たぶん何かを言おうとしているんだろうけど、これにはコツがいるからたぶん今の翔真君には無理だよ。いい、周りに気を取られず、余計なことは考えないで、伊万里軍師に対する思いであっても、佐野先生への怒りは雑念となる。とにかくこの状況になれないのは分かるけど、伊万里軍のことだけを考えていいね。それじゃ、もう一度、』
そういうと勇騎がそこにいるという感覚はすっと消え、再び多くの命を感じる。
つながっている。でも、この人じゃない、この人でもない。
翔真は気持ちを落ち着け、ひたすらさやかの事だけを考える。
助けたい、助けたい、僕が絶対に助ける!もっとだ、もっと魂を感じろ、すべての魂を捉えるように、そして感じるんだ。さやかさんを、
次第に翔真のイメージが形となる、存在しなかった自分の姿が固まり、なれないはずの怪人の姿に、そして魂の世界で蜘蛛の巣のように感覚が広がり、全ての魂を繋いでいく。
そして強い翔真の願い、それは確かに届いた
『助けて!翔真!!』
わずかなさやかの感覚、翔真はその感覚を糸へ意識を集中させる。何千何万と絡み合うその魂を繋ぐ糸の中から、ただ一つの糸、それを赤色に染めて掴み取る
「見つけました!でも遠い!」
「場所さえわかれば、問題ない!時間も3分!いい出来だ。月影君、君の魔力全部もらうぞ!」
「何をするつもりかわかりませんが任せました!」
「翔真!勇騎!お前たちを今から伊万里さんのところまで飛ばす!いいか、まだ伊万里さんは無事だが、危険な状況だ、お前たちの目的は分かっているか!やるべきことをやって来い!」
「はい!」
二人が力強く返事をすると、きららは呪文を唱え、まるで花火のように二人を高速で空へと打ち上げた。直後、魔力を根こそぎ持っていかれた月影はその場に倒れこむ。
全く体の自由がきかない、俺も鈍ったな。これくらいでこんなになるとは、
「流石は月影君、老いても大した魔力だよ。おかげでほとんど魔力を使わなくて済んだ。」
「体、動かないんですけど、」
「大丈夫3時間もすれば、多少は動けるようになる。」
「3時間、少しは俺の魔力も残してくれてても、よかったんじゃないんですか」
「まぁ、そういうな、私は少し気になることがあってね!っと、そう来たか、なるほど、念には念を入れてか、卑怯者の考えそうなことだ。じゃ、そういうわけで」
「あ!ちょっと俺を置いていくつもりですか」
「すぐにSPの人呼ぶからおとなしく待ってなさい」
そういうと月影一人残し、きららは校舎のほうに戻っていった。




