ダークネス
獅子王が龍千寺のいなくなった生徒会室で、一人窓の外を眺める。
そこでは変わらず月影や翔真たちが全力を挙げ痕跡を探している。
その様子を見て思わず口元が笑う。
「いいんですか、そんなに余裕で。もし何かの拍子に手がかりでもつかんで、彼らが佐野という男を止めるかもしれませんよ。そうなればもしかしたら彼女は五体満足に帰ってくるかもしれない、それでもいいんですか?」
獅子王の影が伸び仮面をつけた男が影の中から現れる。
「別に問題はないさ、何一つ不都合はない。強化された佐野が二人を殺せればそれが最良の結果だ。どうせそこまでの力を使えば佐野はすぐに死んでくれる。そうならなくても、佐野があの女を殺していれば雲野は戻れなくなる。そうなれば、僕のいい手駒になる。」
「だが、もし彼らが無事にその人を助け出したとすれば?」
「その場合でも問題はない。先ほどの茶番で彼らの僕への敵対心が弱まっている。ならば警戒もされていない、次が動きやすくなり、あの薬の実証データを渡せば次の試作品も手に入る。本格的な協力関係も築ける。それでも十分だ。」
「どうやっても、あなたは負けない。」
「あぁ、でも、それでも万が一に備える。その為に高い金を払って君を呼んだ。最後の最後は君のような本物のプロに頼むのが一番確実だ。」
「金さえもらえれば、俺は依頼者が子供でも構わない。それがプロというもの」
「そうだね。これから先のこともある。今の内から関係を持つは悪くない。」
「くくく、末の恐ろしい御曹司だ。」
獅子王から何かを受け取ると仮面の男は再び闇へと消えていった。




