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焦燥

一方学園では臨時休校となり、学園全域に立ち入り禁止が敷かれ、警察とジョーカーによる現場調査が行われていた。幹部の子息の殺人未遂事件。それも政府管轄の敷地内で、前代未聞のこの事態。報道規制こそ敷かれているもの、あちらこちらで、この情報は伝播し、政府はこの事実の隠ぺいのために、別の事件を起こすことさえ、本気で思慮に入れていた。

そうさせないためにも、まずは迅速な事態の収束をと、この学園の最高責任者である月影自ら、この現場に赴いてきていた。

「月影さん!」

学校に立ち入り禁止が敷かれる中、翔真の蜘蛛の糸を使い、屋上から、翔真と勇騎が、この現場の視察に来ていた月影に話しかける。

「久しぶりだな。勇騎。夏休みにも一回も帰ってこずに、」

「それよりも、」

「悪いが、部外者のお前たちに状況を説明するわけには、」

「さやかさんが、いないんです!何かこの事件に巻き込まれたかも!」

月影の言葉を遮るように翔真が食いついていく

「さやかさん?」

「翔真君の恋人です。昨日の夜連絡があって、折り返しても電話に出ないし、今日も姿を誰も見ていないんです。」

「月影大臣。もしかして、さっきの、」

「何かあったんですか!」

「落ち着け、はぁ、まぁ、仕方ない。手がかりになるかもしれんしな。この携帯。そうかさやかさんというのは君と同門の、伊万里君か」

「知っているんですか。」

「優秀な生徒だ、当たり前だ。」

「間違いありません!さやかさんのものです。」

翔真はさやかの壊れた携帯を握りしめ、今まで以上の焦りを見せる。

「そうか、彼らの持ち物には思えなかったからな、地元警察に連絡を取り捜索の協力を、おそらく犯人に連れ去られた可能性が高い。まだ無事だとは思うが、しかし、何が目的だ。」

「今現時点で、この学校で連絡が取れない人は?」

「は?」

突然の翔真の言葉

「昨日の僕への着信履歴が0時20分。おそらくそれは彼女からの着信履歴かと、ふつうそんな時間に電話をかけてくることなんてありえない。そして今朝のこの騒ぎの現場でさやかさんの携帯が意図的に破壊されているのが見つかっている。言われるように、兜たちを襲った犯人に誘拐もしくはそれに類する状況に追い込まれているのが妥当でしょう。

だとすれば、猶予はない。3人の怪人を重体にまで追い込むような犯人ですよ。何をするかわからない。そしてこれはわざわざ深夜の学園の中で起こった事です。この学校に呼び出したか連れ去ったか、いずれにせよ可能性が高いのはこの学校の関係者です。さらに兜と僕たちは昨日もめ事を起こし、彼女もそれに巻き込まれた。だったらまずはこの学園の生徒及び教職員の所在を確認すべきです。この状況、隠ぺいする気もない、ばれてもいいと思っている犯人の犯行。何をするかわかりません。」

「場合によっては殺されている可能性も、か、それで君が思う可能性は」

「特に、佐野先生、虎城先輩をはじめとする生徒会を優先的にお願いします。後は念のために天都先生、」

「了解した。だが、俺の記憶が確かなら、天都、佐野教諭は人間だったはずだ。だとすれば動機あったとしても、強化された怪人相手にここまでのことは不可能だ。それでもか」

「お願いします。本人でなくても依頼をすればいい。僕も本命とは思っていません。佐野先生がさやかさんを巻き込む理由がない。」

「では、君は、本命は、生徒会の誰かだと。」

「動機も行動力も十分です。」

「冗談じゃない。どうして自分の学園でこのような惨劇を起こさないといけない。学園始まって以来の汚点を自分で作るバカがどこにいる。たとえ君たちに恨みを持っていたとしてもだ。それに僕ならもっとうまくやるね。」

そういいながら獅子王が生徒会関係者を全員引き連れあらわれた。


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