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マッドネス

さかのぼること7時間前。

日付が変わる頃、寮で一人勉強をしているさやかの電話が着信を知らせた。家族でも、翔真でもない知らない番号、もしかしたら獅子王が違う番号でかけてきているかもしれない。さやかは警戒しながら、鳴りやまない電話に出る。

「……はい」

「やぁ、伊万里さん。」

「佐野先生ですか?どうしたんですかこんな時間に、というか私の番号をどうして、学校に登録してあるのは自宅の番号のはずですけど。」

「そ、そんなことはいいじゃないか、それより、今から学校に来てくれないかな、どうしても君に見せたいものがあるんだ。」

「今からですか?」

「そう、今から」

「いくらなんでもそれは、もう夜中の12時ですよ。どうしたんですか」

「い、いや、それはと、とにかく君に見てもらいたいものがあるんだ。」

何なんだ、この電話は、さやかは当然行くつもりはないが、やはり昼間のことで精神的に参っているのだろうか、どうこたえるべきか考えている時、電話越しに声が聞こえてくる

「助けて、」

「!その声、桑野君ですか?」

桑野、兜の取り巻きの一人だ。

「伊万里か、頼む助けて」

「うるさい!黙れ!お前が余計なことを言うからお前のせいで伊万里さんが!来てくれなくなったらどうするんだ!お前のせいで!お前のせいで!」

電話越しに聞こえる。暴力の音、さやかがやめるように言うに繰り返すが聞き入れない

「分かりました!行きます!からやめて!」

「よかった。そうだよね、うん。伊万里さんならそう言ってくれると思っていたよ。

何分くらいかかるかな、そうだ、寮だからすぐだよね。ごめんね、焦らせて、」

とりあえず、翔真に、学校を避けて男子寮に行くとして最低でも20分。

「わ、分かりました、でも、私、今お風呂上がりで着替えたり、髪の毛乾かしたりしていきますんで30分後に」

「30分?なんで30分もかかるんだよ!!僕がいい人だからってなめやがって!あー!くそくそ!!馬鹿にして!僕に逆らって!!」

また電話越しに暴力の音が聞こえてくる、常軌を逸した心に突き刺さる悲痛な叫び声、

普通じゃない、なんて次元じゃない。命の危険を感じる

「分かりました!」

「うん、待っているよ。あぁ、でも、15分過ぎでも、来なかったら1分ごとに、指を一本ずつつぶしていこうかな、いい暇つぶしになるよ。それじゃ待っているよ。マイハニー」

背筋が凍るとはこういうことの言うのだろう。男子寮に行く時間はない。

だったら、さやかは、上着を羽織りながら翔真に電話を掛けるが、

「でない、メールでメッセージだけでも、」

その時だ、さやかの携帯にさっきの番号から電話がかかってくる

「どこに電話をかけようとしてたの?僕の約束よりも優先される相手でもいるの」

「いや、電話なんてかけてないですよ」

「嘘をつくな!!!」

突然の大声に思わずさやかは携帯を落とす。

「わかってるんだよ全部!風呂に入っていたのも嘘、何もかもが嘘!いいか、電話はつながったまま来い、いいな。もし、約束を破ってみろどうなるか、分かるだろ!」

指示に従うしかないさやかは一方的に話しかける佐野の話を聞き流しながら必死に学校まで走っていく。


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