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約束

残された獅子王は感情に任せ、地面を砕くが、それ以上どうすることもできない。

兜の感情を馬鹿にした獅子王が、自らの屈辱に感情を抑えることができずに荒れ狂う。

一方、アンリは鼻歌交じりに階段を下りていく

「あのアンリさん。」

「あぁ、ごめんなさい、あなたはもう行ってあげて、彼が待っているわよ。」

「ですが、」

「獅子王のことなら気にすることはないわ。あれでもプライドだけは高い男よ。あなたの心配するようなことはないでしょう。もし、あれがあなた殺すようなことがあれば、私があれを、責任をもって処分するわ。それにいい薬よ。何でもかんでも自分の思い通りになるなどと、何より私のことを道具のように利用しようとしたことが気に入らない。まったく世の中の男は昔から、世界が自分中心に回っていると思っている人ばかりで困ったものね。他人を認め受け入れる余裕もない。それが雄の宿命なのかしら」

「別に、全員がそうだとは」

「そうね。あなたは正しい選択をしたわね。自分にとってどちらが幸せか。

実に賢い選択だわ。自分の事しか見えていない男と、あなたの事しか見えていない男。どっちがマシかなんて考えるまでもない。将来性に賭けるのも悪くないわよ。彼将来有望そうだもの、子供にも優しそうだし、お幸せに。」

「あ、ありがとうございます。」

「それでも、もし、彼に飽きたり、あなたの中にある野心を抑えることができなかったら。私のところに来なさい。あなたみたいな人間は私好きよ。私と一緒に世界を変えましょう。」

「……」

「……そういう生き方もあるっていうこと、あなたの人生は、パートナーのためでも、両親や兄弟や、将来生まれてくる子供為にあるんじゃなくて、あなたのためにある。自分のことだけを考えろ、なんて言わないけど、あなたの人生は誰かのためにあるんじゃない。

覚えておきなさい。年を取って後悔しても、私みたいにやり直せるわけじゃないんだから。」

「え?」

「何でもないわ、それじゃ、わたくし、忙しい身なので、これで失礼するわ。またどこかでお会いしましょう。伊万里さん」

アンリは笑いながら消えるよういなくなった。

「……そうだ、急がないと」

さやかは闘技場に走っていく。

一方闘技場では、大勢の前で告白したのはいいもののそれから5分音沙汰のない状況で、不安と、自分の行動の後悔をする翔真が一人残されていた。

兜はタンカーで運ばれで、文字通り一人残され、だんだん不安と羞恥心が大きくなる。

周りでは小さな声で、ねぇ、もしかして振られた。などと特訓で鍛えられたか感覚のせいで、そういった小さな声も蜘蛛の糸の振動越しに聞こえてくる。

周りに目線を合わせられない、翔真がうつむいたとき、

「何よ、さっきまでの自信はどうしたの、シャキッと顔をあげなさい。」

「さやかちゃん!」

「何どさくさに紛れて、ちゃん付けで呼んでるの、それに何その締まりのない顔」

「ご、ごめん。」

「でも、カッコよかったわよ。約束覚えてくれてありがとう。だからこれはお礼」

さやかは全校生徒が見守る中、翔真のほほにキスをする。

その出来事にあたりは今まで一番のざわめきが起きる。

「これで0。今までのことは全部チャラ。あー、あ、私の人生設計むちゃくちゃよ。何のためにこの学校には行ったんだか。」

「え?0って、恋人になれるんじゃ。」

「何言ってんの、私を自分のものにしたいなら、私を惚れさせてみなさい。私があなたにそうしたみたいに、ね。」

「もしかして、会長のことが本当に、」

さやかはムッとした顔で翔真の顔をつねる

「だったらここに来るわけないでしょ、次、その話したら怒るわよ。」

「ひゃい、わかりました。」

「でも、ま、今日はありがとう、私、本当にうれしかったんだから」

久しぶりに見た気がするさやかの心からの笑顔、それだけで救われる

さやかの笑顔につられ勇騎も笑う、ずっと近くにいたはずなのに、確かにこれが0

あの時止まった時間が今から動き出す。


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