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ヒーロー見参!

革のジャンパーに指出し手袋、それに赤色のマフラーこの時期に?

何なんだ?あいつは、それにこの場にいる誰もが、彼に対して普通ではないという感覚を抱いている。恐ろしいような、どこかで見たことがあるような不思議な感覚。

「えー、今日から1年のSクラスの仲間となる、志堂勇騎君です。志堂君は今まで外国で暮らしていたため、この国の文化に戸惑うことがあるかともいますので、皆さん親切にしてください。くれぐれも文化の違いから生じる誤解からトラブルを起こさないように」

外国?それになんで最初にトラブルを恐れているのだ?

「それじゃ、志堂君、一言、一言でいいので簡単に挨拶を」

分かりましたと勇騎は、一礼し、背筋を伸ばし、マイクを手に取ると、兜を見つめる。

「あの、自己紹介の前に、皆さん気づいていなかったみたいですから、言っておいたほうがいいかと思いますので、先にその話をさせていただきます。

先ほど、そちらでトラブルが起きていましたが、雲野さん、でしたか、彼は悪くありません。咎められるべきは彼の方です。」

勇騎は何のためらいもなく、兜を指差す。

「携帯をいじっていたのは彼の方です。雲野さんはそれを注意しただけです。」

「し、志堂くん、それより挨拶をそれだけでいいから」

慌てて、教頭が小声で勇騎に忠告をする。

「いや、そういうわけにはいきません。これも小さな冤罪です。君も自分のしたことを人に押し付けてまで怒られるのが嫌なら最初からやらなければいいですよ。」

怒られるのが怖いだと?恐れを知らぬ志堂に兜のプライドはこの上なく傷つけられる。

「なるほど、常識を知らないようだな。」

「いやいや、嘘を付いちゃいけないのも、自分のしたことは自分で責任を取るのも世界共通の常識ですよ。ここ高校ですよね。小学校で習うでしょ。ここ頭いいんですよね」

みるみる先生たちの顔の血は引いていき、あたりはざわつき出す。

「ふふ、言うね、彼も、まぁ、当然か彼なら」

「獅子王会長止めますか」

「いや、好きにさせておけばいい。どうせ大事にはなりはしないよ。」

講堂の上から見下すように3年生がその様子をうかがっている。

「言ってくれる。あのー!どうも彼はこの学校には不適合だと思います。社会の常識もわきまえていない。どうしてこんな奴がうちの学校に転校してくるんですか、格好といい、言葉遣いといい、学校の品位を疑いますね。それ以前にうちの学校は転校認められていないでしょ。どうしても入りたいなら幼稚園からやり直したほうがいいんじゃないですか!」

兜は息巻き叫ぶように、問いかける。するとあたりからそうだそうだとコールが起こる。

その時だ、勇騎は遥か後方の指招きに気づき、手にしたマイクを指さす。

すると後方の男は頷き、勇騎はそこにめがけてマイクを投げる。

「一つ、言っておこう、別に転校が認められないわけじゃない。そうしようとした奴がいなかっただけだ。そしてこいつをここに推薦したのは俺だ。俺が推薦してねじ込んだ。だが、心配するな、学業には少々難ありだがそれはお前も同じだ。武道に何の問題もなく、潜在能力判定も、文句なしのSクラスだ。お前に負けているのは、今この瞬間の戦闘能力、そしてその性格の悪さと、親の意を躊躇いなく借りられる神経の図太さだけだ。」

兜に対して全く遠慮のない言葉。30代後半と思しき声。皆が振り返ったそこにいた男に皆驚愕し、ざわつき出す。

「つ、月影大臣」

月影健之助、シャドーの大首領亡き後、シャドーを支え続けてきた10人の最高幹部の最年少にして、空席の首領候補。この国で彼の名を知らぬ者はいない。

『くだらない過去の憎悪を受け継がせる時間があるならば、未来のために創造的な発想ができるように知識をつけさせろ、彼らの未来はお前たちのためにあるのではない!』

かつて道徳として、取り入れられたジョーカーの教育方針を公共の場でそのように罵倒し、かつてはもっとも重要とされた、先輩怪人の教訓を、今のように形骸化に追い込んだ原因を作った男でもあり、この学園の最高責任者でもある男だ。

「裏切り者が、」

兜が小さく声に出す。

「はっきり言ったらどうだ?俺の耳は地獄耳でな、聞こえているぞ。俺は別に裏切っていない、俺は俺の信念に従っただけだ。」

月影はかつてヒーローであった。彼はヒーローを抜け、シャドー側についた。

彼の活躍はヒーローとの戦いの最末期、関門海峡決戦で大首領の最後も看取った唯一の男だ。大首領からその実力を認められ、異例の若さで最高幹部についた男。

当然、畑違いのこの若者を誰もが認めたくないというところはあるが、それを補ってあまりある実力を示してきており、今では次代のニューリーダーとして期待されている。

「まぁ、いい、ただの餓鬼と喧嘩する気はない。とにかく、そいつを推薦したのは俺だ。異論は一切認めん。お前のルールで言うならば、そいつの後ろ盾は俺だ。いいな」

「Sクラス、って言われましたけど、その根拠は?聞いたことないですよ。そんな身元不明の怪人がまだいるなんて、それともどこか海外で改造手術でも受けたんですか?」

「それはお前には関係ない。実力は、」

「あの、一つ訂正を、」

壇上から勇騎が口を挟む。

「俺は怪人じゃないですよ。ヒーローです。見習いなのでヒーロー志望者ですけど」


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