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受け継ぐ意思、託された血脈

「はろはろ、聞こえてますか、烈火君」

『……その声、きららさんですか?』

「正解、よくわかったわね、というかやっぱテレパシーも使えるんだ。」

『なんですこんなに夜遅くに非常識ですよ。』

「こっちはまだ夜じゃないわよ。」

『自己中な。ちなみに今の俺が使えないのは、きららさんの治癒能力くらいなものです。

唯一無二の最上位の力。それだけはどうしようもありません。』

「そうね。あなたには無理ね。他人を拒絶し、死者に惹かれるあなたには、」

「で、そんな嫌味を言うために俺を起こしたんですか」

「単刀直入に聞くわ、さっき勇騎がヒーローの力に目覚めたわ」

『………』

「ちょっと聞いてるの。」

『聞いていますよ。それは知っています。ダンディさんが。新たな主と認めたようです。

でも意外だったのはあなたの口から勇騎の名前が出てきたことです。

なるほど、俺よりもずっといい』

「そうね。あなた違って常識は教えられるわ。それにあの子を見てれば分かるわ、あなた人にものを教えるのには向かないわ。」

『知っていますよ、そんなことくらい、俺は自分にも他人にも厳しいですから』

「厳しいんじゃないわよ、興味がないんでしょ。ちゃんと口で言いなさい。って、話がそれ始めてる。あーもー、勇騎に対する不満は全部あんたにぶつけたくなるわ。」

『では箇条書きにしてまた後日お願いします。で、なにか聞きたいことがあるんでしょ」

「勇騎くん約束して封じていたのは本当にヒーローの力なの?」

『ヒーローの力を封じた?あいつがそう言いましたか?勇騎は元々ヒーローの力を受け継いでいません。あいつは力を封じている。自分はヒーロー見習いと言わなかったですか?』

「それじゃ、あの封印は」

『過ぎたる力です、勇騎にはまだあの力を使いこなすことができない。俺がいない状況でそれを使うということはすべからく災いを招く。』

「あの力はなんなの?」

『先ほど感じた力、あれはそうですね、インフィニティペイン極の、ワールドデストラクション、超重力の力ではなかったですか。おそらく間違いはないかと』

予測通り、それは世界最強、そして唯一無二の間違いなく最強の怪人の力、だが、

「どうして彼がその力を、あれは努力だけで使えるものじゃないでしょ」

『答えの分かっている質問は質問ではなく、ただの確認作業ですね。そうですよ。彼はジョーカーの大首領、佐藤台真央の忘れ形見です。故にインフィニティペインに属するものは全て使えるはずです。まぁ、使わせたことはありませんが、あれを使えば次第に壊れていく。』

「なんで、そんな話聞いてない、」

『それはそうです。余計な混乱を避けるために月影しか知りません。ですから、きららさんも余計なことは言わないでください。』

「志堂君はそのことを知っているの?」

『えぇ、全部知っています。俺が父親を殺したことも、何があったかも、』

「それをどうしてあなたを師匠だなんて」

『頼まれたからです、彼の母親、榎見未来に』

「榎見未来って、え!え!なんで、彼女はファーストヒーローのレッドリーダーのお孫さんでしょ!それがなんでジョーカーの大首領と!ダメでしょ!」

『駄目どうしてですか?そんなの大人の都合でしょうが。馴れ初めは、俺は興味がないので聞いていません。ロミオとジュリエット的なものを想像すればいいじゃないですか。とにかく、彼女の口から勇騎はすべてのことを聞いています。その上で、彼女は病床で勇騎を俺に託して、勇騎もまたそれを了承しました。それだけの話です。もう10年も前の話です。あいつの根底にある性格がいいのはそのせいですよ。』

「それじゃ、私は大首領の子供に正義の何たるかを教えていたわけ」

『別に、気にすることはないでしょ、勇騎がなにものであっても、あなたの目の前にいる勇騎が全てです。さっきも言いましたがそのことを知っているのは月影とあなただけです

他のジョーカー幹部はあくまで俺の弟子と思っています。まぁ、それも嘘ではないですが。先ほど話した出生は知らない。大首領の遺児が生きていると知れれば、勇騎を利用するかもしれないし、今の自分の地位を守るために勇騎に危険が及ぶ可能性がある。』

「分かったわ、元から話すつもりはないわただ気になったから確認しただけよ。最後にもう一つ、どうして頼まれたからってそんな勇騎君を引き取って、急にこっちに預けたの」

『世界を知るという事もありますが、俺の都合でもある。今の世界は怨嗟に満ち、助けを求める声にあふれている。大人しくしている時間は終わりです。これから俺の中に眠るヒーローの力を託せるものを探していきます。』

「もう一度、ヒーローを世界に解き放つ。善悪はともかく、新しい変化をもたらすわ。」

『だからとて、今のままというわけにもいきません。俺の中に存在する正義を、信念を、今のまま抑えるには限界があります。近い将来俺の正義は憎悪に染まり、世界を滅ぼす。死んでいったものの無念が、助けを求める声が、ひいては世界を救うために世界を滅ぼしかねない。俺は人として壊れている、そしてそれを受け入れ、信念と怨念の中に生きることは心地よいとさえ感じる。憎悪と無念で磨かれた俺がダークヒーローになればそれこそ世界は終わりです。ならばそうなる前にこれらを解き放ち希望に帰る。すでに数十の希望がその力を開花させた。勇騎は想定外ですが、』

「そんなことをしていれば、いずれは戦争になるぞ」

『望むのであれば、俺は否定しませんよ。奪われたものを取り戻す。

助けを求める弱きものを見捨てる正義など意味などない。』

「でもそうすることで世界は、」

『俺には到底納得できない。闘争望むところだ、人はそうして歴史を作ってきた。

俺たちヒーローがいなくなることで世界がよくなるなら、そう思ったが何も変わらなかった。むしろ世界の貧富の差は大きくなり、罪なき者たちが戦わされ、争いを望むものはその血を流すことはなく、ただ利益だけをむさぼり、詭弁を語る。

一つにつながり大きくなった世界は弱きものから奪うだけだ。

そんな世界なら滅びてしまえ、さて、おしゃべりはここまでです。

まったく昼間ボコってやったのに、夜襲なら勝てるとでも思ったのか屑どもめ』

「烈火君、君は戦場にいるのか」

『自らの利益を確保するために、他国を戦場に変え、そこに暮らす親は貧困から子供を彼らに売り渡す、そうして彼らは実験体として利用される。これを狂気と言わずになんという。そして彼等もまた命の尊さを学ぶ前に、奪う快楽を教えられ堕落した大人の世界にのまれていく。だからこそ、見せる必要がある正義の力を、希望の光を』

『先生、僕も行きます』

『お前の仲間がいるかもしれんぞ』

『だからです。僕が止めて見せます。僕、みんなを助けます。』

『いい目だ。それじゃ頼んだぞ。それでは、きららさん、また何かの機会に』

「おい、まだ話は、って完全拒否か」

テレパシーを終えるときららは大きくため息をつく。


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