不釣り合い
きららの目線の先にいるのは伊万里だ。
風に吹き飛ばされそうになりながらこっちに歩いてくる。
「ちょっと、伊万里さん!台風の中どうしたの?」
「天都先生こそ、傘も差さないでずぶ濡れじゃないんですか、」
「こ、これはちょっと、傘飛ばされちゃって、それよりどうしたの危ないわよ。」
「あの、樹里さんを見ていませんか?」
「樹里さん?」
「会長のメイドの子です。会長が急にわがままを言って買い物に行かせられたんですけど、今日バスも止まっていて、まだ戻ってないから、探しに来たんですけど、」
メイドと樹里という言葉に勇騎が反応する。
「それはいつから!」
「志道君、だいたい2時間くらい前、どうしたのその怪我?」
「2時間、港まで普通に歩いても40分、師匠!俺探してきます!」
「あ、ちょっと、何よ、師匠って」
「し、志道君、変わってて、先生の事を師匠っていうのよ。それより、伊万里さん警察には?」
「いえ、まだ、そ、それ以前に、警察に連絡をすれば獅子王会長に」
「……なるほど、分かったわ、私が連絡しておくから、伊万里さんとにかくあなたは帰りなさい、貴方も危ないわ。」
「でも……」
あの時、獅子王の機嫌を悪くしたのは自分だ。そうしてその結果被害を受けた樹里を庇う事も出来ずに、みすみす送り出してしまった。 『大丈夫ですよ。』そういった彼女の笑顔が、時間経過と共にさやかの罪悪感と不安感を増すのに一役買っていた。
きららが電話を終えてもなお、動こうとしない、伊万里を見て思っていたことを口にする。
「伊万里さん、どういう考えがあるかは知らないけど、もう、獅子王君と付き合うのは辞めなさい。人の色恋沙汰にどうこう言う気はないけど、あなた、獅子王君の事を好きじゃないわよね。そんな気持ちで付き合っていると、いつかはその樹里さんがあなたになるかもわからないわよ。」
「……そうですね」
そんな事は分かっているでも、
「私からアドバイス、恋をするならその人のステータスじゃなくて、その人を好きになりなさない。そりゃ人間だもの、心だって変わる。それこそ、お金や社会的な地位なんかよりもよっぽど変わるかもしれない、でも、自分の気持ちだけはいつだって自分の自由にできる。
そんなあなたの心を好きになってくれる人なら、きっとあなたがあなたのままでいればずっと幸せでいられる。人として生きるなら一人ではいられない、せめて人生のパートナーくらい、心を許せる相手を見つけなさい。」
「先生、私人間じゃなくて、怪人になりたいんですけど。」
「それでも同じよ。幸い、あなたにはあなたの事をずっと前から思ってくれる、もっといい人とがいるでしょ。」
「私に?それは、でも、」
「まぁ、いいわ、それは、でも、獅子王君からは離れなさい。不釣り合いよ」
その言葉何度も言われた所詮私は、人間の
「あなたには獅子王君程度の自分の事しか考えられない小さな男はもったいないわ。さ、明日から学校よ、急いで帰りなさい。後は先生に任せて、」
そう言うと、きららは足場に魔法陣を展開させ、ショートカットして勇騎を追う。
「天都先生、魔法使えるんだ。魔法、初めて見た。」




