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歪んだ心

「その水着、気に入らないかい?」

「い、いえ、そう言うわけでは、」

「だったら、どうして上着を着たまま、こうして座っているだけかな、せっかくさやかのために選んだのに、」

「す、すみません。」

獅子王が用意した一人だけ露出の高い水着を着させられたさやかは一人皆が遊ぶ中、パラソルの下っでパーカーを着て座っていた。このまま時間が過ぎればと願っていたが、当然そんなことになるわけがない。上着を脱いだ、彼女に対し、周りの女性からは『媚びて』や『獅子王様を誘惑しようとして』、など陰口が、男からは下品な視線が集中する。

「うん、やっぱり似合ってるね。それじゃ、一緒に遊ぼうか」

彼女をみんなのいる海の中に誘うが、周りは彼女を受け入れない。

彼女以外ここにいる皆が怪人のちを色濃く受け継ぎ、それを誇りとしている者たちだ。

海の中で、魚の力を受け継いだ少女は下半身を返信させ、ふざけ半分で彼女を海のそこに引き込もうとしたり、風を操る力を持った少年は力任せに大波を起こし、彼女を岸まで押し戻す。悪意のある笑いが彼女に向けられる。

そしてここにいる彼らは本気でそれを楽しんでいる。

それに疲れきった、さやかは太陽に当たりすぎて気分が悪いと岸に上がる。

「大丈夫?熱中症になったりしてない」

獅子王は彼女に冷えたペットボトルを差し出す。

「ありがとうございます。」

「ごめんね、みんな、開放感で、調子に乗っているみたいで」

「いえ、獅子王会長が謝られるようなことではありませんから。」

「そう、よかった。ところでさ、僕もこの騒がしいのに疲れちゃって、二人で向こうの岩場のほうまで散歩にでも行かない。何があるか気になるしさ」

「ですが、それでは、皆さんが」

そんなことをすればまた余計な反感を買うだけだ。

「いいから、行こう。」

さやかは半ば強引に手を引かれ、連れられていく、砂場を超え、岩場を超え、それでも獅子王は止まることなくどんどん人気がなく、綺麗とも言い難い景色の場所を進んでいく。

「あの、獅子王会長、どこまで、もう戻りませんか」

「そうだね、でも、せっかくだからあそこまで、ね」

獅子王はさやかの手を突然握ると岩場の舳先を超えて行く。そこにはまた別の砂場、そして、そこは海水浴場などではなく、入江のように周りから死角になるような場所だ。

そこにいるのは二人だけ。そしてそれは見覚えのある二人、翔真と勇騎だ。

「翔真君、なんでここに」

「特訓だって、せっかくだから頑張っている二人を見ようと思ってね。」

「おーい、お二人さん、暑い中男二人で、随分と精が出てるようだね!」

その大声に反応し、二人は組手をやめ、声の方向に目をやる。

さやかは慌てて、獅子王に握られた手を話そうとするが、獅子王はその手を離さない。

「会長さん!」

「さやかさん、」

勇騎は偶然知り合いに出会えたことを喜び、翔真は対照的に不快が見て取れる表情で二人を見つめる。そして師子王は自分たちの手に翔真の視線が集中しているのを確認し笑う。

「獅子王会長、わざと、」

「うん、驚かそうと思って、驚いた?律儀に合宿届け出してたから、」

獅子王は複雑な表情をするさやかを見て満足げだ、獅子王はさらに二人に近づく。

「ところで天都先生は?せっかくだから挨拶をしておこうかな」

「さっきまでいましたけど、少し前にどこかに行かれました。」

「そう、先生も大変だね、人がいいとは言え夏休みにこうして駆り出されて。」

「何をしに来たんですか?」

翔真は明確な敵意を持って獅子王に食いついていく。


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