始まりの場所
一方、保健室にて、
「あぁ、心配しなくてもいい、雲野君は怪人の遺伝子が強く出てるから、私の力は逆効果なのよね。でもその分怪人の再生能力があるから問題はないよ。
志堂君は先に帰って、寮には私が送るから、あぁ、分かった、それじゃ」
「志堂君からだ、伊万里さんは送り届けただとさ、さて、君の怪我はとうの昔に治っている。あとは、心の傷、おーい、いつまで泣いているんだ。男だろしっかりしろ」
「すみません、でも、でも、」
「負けるのは初めてなの?」
「違います。何も、本当に何もできないなんて、こんな悔しいなんて、」
翔真は手にしたシーツを破きかねない力で引っ張る。
「こんな力じゃ、かなうわけない、何の役にも立たない、どうして僕には力がないんだ!
守れなかった、僕には何にもできない!!」
感情のせいで無意識に出た蜘蛛の糸が翔真の手に絡みつく、翔真は八つ当たりするようにそれを引きちぎろうとするが、いくらはがしても剥がれず、ベッドにあたる。
「こんな力で、ね。」
きららは勇気の横に座り、手を取り絡みついた糸を丁寧にゆっくりはがしていく。
「昔、私がヒーローをクビになって、海外を旅している時に摩天楼で、君によく似た力を持った青年にあったことがある。彼は軽口を叩きながら、弱気になりそうな自分を奮起させ、ただ闇に紛れて、誰に頼まれたわけでもなく、犯罪者たちを取り締まっていた。
当然、勝手にそんなことをすれば違法だ。彼は犯罪者からも警察からも追われる立場だ。
でも彼は、市民の安全と命を守るために、一人孤独に戦い続けた。終わることのない戦いだ。それを何回も、何十回も、何百、何千と繰り返し、彼は摩天楼の市民に愛されヒーローになった。彼の力は決して最強の力とは言えない。だけど、それでも市民は皆この町の守護神を彼だという、それは彼がしてきたことが証明している。
どんなに悩んでも苦しんでも、彼は決して諦めない、助けを求める声がある限り、
そうせずにはいられない。絶望的な状況でも彼は戦い続けた。
大切なものを守りたい気持ちは君も同じ、ここで諦めれば、君はここまでだ。でも、自分の可能性を信じれば、君は誰よりも強くなれる。自分を信じろ、守りたい人がいるんだろ。
その人に自分を信じろと、言いたくはないか少年。」
僕が守るから、それはずっと昔にした大切な約束。
忘れたわけなじゃない。でも、その言葉を僕はまだ守れていない。




