人形
一人になりたい。
不意にそう思った。
いやそう思ってしまった。
呉嶋将吾。成績は中の上、見た目は少し背が高い程度、運動も少しできるくらいの言わばどこにでもいるやつだった。
それなのにも関わらずクラスでのカーストはおそらく上位にいた。
何にもできないくせにうるさい奴や少しイケメンなやつ。何が楽しいのかわからないけれど適当に休み時間に集まって笑う。それだけの仲間。
でもこいつらといるのが嫌というわけでもなかった。
それなりに楽しいことは楽しかったし嫌いというわけでもない。
となると他の人の影響か?
何がなんなのか、なぜそう思ったかはわからないけれど、俺は一人でいたい気持ちだった。
世界でたった一人でいれれたらいいのに。
世界は一人にはしてくれない。
今日家出をした。
干渉されるのが嫌になっただけだった。
もう子供じゃないっていう気持ちがあった。
金を持って来たしばらくは暮らせる。
不登校するほどの度胸はなかった。
だから学校に行った時連絡された。
「心配したのよ」
心配しないでよ。
「勝手な行動とるな」
俺は自由を手にしてはいけないの?
俺はあんたらの人形か?
俺は気付いた。
周りが求めてることに答えなくてはならないことに。
自由など存在しないことに。
鴉はなんて気楽なんだろう。
いや鴉じゃなくても動物ならなんでもいい。
おそらくこのまま暮らしていくのだろう。
もう俺は何処かで諦めていた。
一人になる方法などないんだ。
俺は周りの玩具、人形なのだから。