7
明るい日差しに目を細めた少女は、首に掛けていた鎖を外した。
その鎖に通してあったのは、姉に贈られた銀の指輪。彼女はこれまで指輪を嵌めず、ずっと首に掛けていた。
――戦が終わったらこの指輪を嵌めて。
「分かってる、約束は果たすわ」
指輪をそっと撫で、リアナは呟いた。
「酷いお姉様ね。妹の頼みを聞いてくれないんだから」
あの時、生きて還って欲しいと願ったリアナに、ディアナは困ったように微笑むだけで、とうとう頷いてはくれなかった。
指輪をそっと嵌めてみた少女は、違和感を感じた。
「…?」
指輪の内側が、一部感触が違う。引っ掛かるというほどのものではないが、傷があるようだった。
一度嵌めた指輪を外し、内側を覗くと、どうやら自然にできた傷ではなく、小さく彫られた文字のようであった。
「これって…」
リアナは、急に鼓動が速くなるのを感じながら、指輪を光にかざす。
その文字を読み取った時――、彼女は思わず息を止めた。
「…!」
もう一度、注意深く文字を読み直す。
「………、…あ」
本来は泣き虫なリアナは、姉を見送った後は一度も泣いていなかった。
だが、
「お姉、様…!」
涙が溢れる。
「…どうして」
あんなに願ったのに。――生きて欲しいと願ったのに。
「どうして、逝っちゃったのよ――!」
彼女はこの時、ようやく声を上げて泣いたのであった。