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これは、とある世界のとある国の物語。
その地方には、いくつかの小さな国がある。
その中には様々な国があり、それぞれに素晴らしい所があったが、海に面しているウィルネ王国、海の女神の加護があると言われている、通称"水の国"ほど美しい景観を誇る地はなかった。
ところが――、ある時、美しい景色は突如失われた。
豊かなウィルネを狙う隣国・ファイス王国が、攻め込んできたのである。
ウィルネはまたたく間に進攻され、美しい景色は次々に焦土に変わった。
もちろん、ウィルネの兵士達は必死で抵抗した。だが――、敵の数はあまりにも多かった。周りの国を呑み込むことで強大になったファイスは、大軍を送り込んできたのだ。
その気質から"火の国"と呼ばれているファイスの軍は、暴虐の限りを尽くした。戦場の兵士だけではなく、女性や年寄り、子供も容赦なく殺されていく。
精強であるはずのウィルネ軍は、強大な敵の前に、成すすべもなく数を減らしている。王都陥落も時間の問題だった。
唐突すぎる開戦から数日経った朝。
ウィルネの若き女王は、ついに自らが出陣することを決めた。