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闘技会5

「少し痺れがとれてきたようですね」

私が手や足を少し動かしているのを見たイグルドが言う。

でも起き上がったりはできそうにない、体勢は相変わらず寝転がったままだ。

「私に何をさせたいんです?」

勧誘したいということは、私に何かしてほしいことでもあるのだろうか。

「特別な理由はありません。レゲル様だから、でしょうか」

適当に受け流された気がするんだけど……

その時突然扉が開くような音がした。誰だろうと顔を確かめたいんだけど、さっきやっと指先とかが動くようになったんだから見れるわけがない。

「相変わらず回りくどい言い方をしますね、あなたは」

「カーレル様!?」

二年近く一緒にいる人の声を聞き間違えるはずがない。間違いなくこれはカーレル様の声だ。しかもあなたはって、知り合いなんですか!?

「回りくどいですか、まあそうかも……って、もう無理、耐えれねえよ」

そう言ってイグルドはいきなり笑い始めた。何が面白いんだろう。私の位置から見えないからまったくわからない。

「ちょっと待っててくれ。起こすから」

その声とともに引っ張られて、私はさっきまで寝転がっていたものに座らされた。これソファーだな、背もたれと肘掛けがあるので体に力が入らなくても座る格好になる。まあ力が入ってなくてだらしない格好になってるけど。

「あの、知り合いなんですか?」

私はとりあえず訊いてみることにした。扉のそばにはやっぱりカーレル様がいて、少し安心する。状況はまったくわからないけど!

「知り合いですよ。幼馴染みです」

「はあ!?」

知り合いどころか幼馴染み?ていうか幼馴染みっているんだ。

「どこまで話したんですか?回りくどいあなたのことなのであまり信用しませんけど」

「ゲーテについてぐらいしか話してねーよ。ってか、その口調やめろ。笑えてくるから」

そう言いながらさらに笑うイグルド、知り合いなのは十分わかりました。でも何が面白いんだろう。

「仕方ないでしょう、レゲル君もいますし。それにしてもこの程度で笑うのによく諜報員として働けますね」

「諜報員?」

「俺ここの騎士団の騎士。部屋を貰えるくらいには偉いぜ」

ここって王都の騎士団の騎士ということか。てことは相当出来るのかな。今日初めて会った気がするけど。

「まっ、特に活動もないからやってることは普通の騎士の仕事だ。諜報っても伝えるようなこともないし。さっき話したように俺らは別に国に害をなすつもりもない。それこそ政治が荒れるまでは本来のゲーテは動かねーよ」

寝転がっていた私を起こしたので、ソファーに空きができた。そこにイグルドが座る。

「レゲル君に嗅がせた薬はいつ頃切れますか?」

「指先が動くようになってきてるし、もうすぐだな。俺、そろそろ戻るわ。騎士団の仕事あるしな。後は頼んだぜ、カーレル」

カーレル様を呼び捨てた!初めて見た、カーレル様を呼び捨てで呼ぶ人。幼馴染みって本当なんだな。

「お前は昔から面倒事ばかり俺に……っと。あなたといると調子が狂います」

「戻ってるぜ。レゲル様はこいつが俺なんて言うの初めて聞くだろ。こっちが素だったりするんだ」

「はぁ……」

別に素の口調がそれでも構いませんけど。私だって人のこと言えませんし。カーレル様が少し怒ってますね。この前のような冗談ではなく。イグルドはそんなカーレル様を見てまた笑ってるし。

「どちらで話しても笑うだろ。お前だってレゲル君と初めに話してるときは不気味な口調だっただろ。で、お前はこの程度のことでレゲル君を誘拐したわけでもないだろ、何がしたい?」

あっ、いつもの丁寧な口調じゃなくて素の口調のままですね。面白いので何も言いません。

「ただの警告だ。あとお前の反応が見たかったってのもある、お前もレゲル様で遊んでるだろ。俺も遊ばれたし」

知ってるんですね、いろいろありすぎて驚かないけど。まあカーレル様に遊ばれることはあっても、遊ばれるのを見るのは初めてなので、とりあえず傍観者になることにします。

「じゃあな、カーレル。補佐官様と仲良くしろよ。遊びすぎて逃げられないようにな」

そう言ってイグルドは立ち上がり、睨んでいるように見えなくもないカーレル様の横を、何事もなかったかのように通りすぎた。





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