闘技会2
移動のためにごった返している移動用の通路を抜けて、なんとか細かい方の予定表を手に入れた。一試合目の対戦相手と予定時刻が細かく記されている。
これを見てみる限り、普通試合ではしばらく二人の対決は拝めそうにない。まあ両方が勝ち残ればだけど。
複試合の方を見てみる。あっ、デルグとヘクが組で出場するんだ。二人ともこっちの試合の方が先っぽいから今なら二人とも複試合の控えテントにいるかも。ここに一番近い舞台だし行こうかな。
一度デルグと決闘らしきものをやったときに顔を覚えられたのだろう。王都の騎士団の新人達には顔を覚えられ、物珍しい物を見るような目で見られた。
「あっ、レゲル様」
人づてに聞いたのか、私が来ても二人はあまり驚いていなかった。
「補佐官様が俺らに何の用ですか?」
相変わらずこの生意気な口調は変わらない。デルグらしくていいけど。
「デルグの戦いっぷりを見に、ね。どれくらい強くなったかなと思って」
「あの時のはまぐれだろっ!じゃあ今……」
「しません。デルグの方が強いのはわかってますから」
前回戦ったのはデルグ達がちょうど入団した頃だし、まともに訓練してきただろうからデルグの方が今はもう強いだろう。まあ剣術の面でだけど。
「そういえば前から思ってたんですけど、デルグとヘクってどっちの方が強い?それとも同じくらい?」
私がそう訊ねると、デルグとヘクは顔を見合わせる。
「そういえば僕達まだ決闘したことないね」
「あ、言われてみればそうだな」
へっ?ないの?一回くらいやらされると思うけど。
私は不思議に思ってデルグとヘクの知り合いらしい騎士を見る。こっちも同じように考えていた。
「こいつら仲いいですから。まず決闘してみようとか思ったことないんじゃないですか?」
どうやら、勝ち残れるかどうかで初めてわかるっぽい。
「じゃあ二人とも勝ち残って決闘してみなよ」
「もしそうなったら賭けが盛り上がるって話題ですよ」
テントで待機していた新人ではない騎士が口を挟む。
「そうなったら私も賭けてみましょうかね……ヘクに」
「俺は!?」
「わからない方に賭けてみただけですよ」
ヘクが強いというのは聞いてるけど、どれくらいかは知らないし。
この賭けは騎士団が公認している賭けで、売り上げは騎士団の運営に使われるらしい。まあ賭けというのは失っても痛くないくらいのお金から始めるものだ。だから私はちょっとだけヘクに賭けた。勝てばちょっとお酒でも飲んで帰ろうかくらい、負ければどこにも寄らずに帰ればいい。
それに私がヘクに賭けるとなれば、賭けが動く気がする。どちらに賭けるか考え直す人が増えるだろう。そう考えると少し面白い。
早くも近くにいた騎士がどちらに賭けるか迷い始めた。別に私は戦況を読む能力なんて持ってないんだけど。
「おーい、お前ら次だぞ」
少し話を続けていると、デルグとヘクに声がかかった。いよいよ始まるのか。
私は二人と別れて、舞台がよく見えるところに移動した。
余裕綽々な表情で舞台に上るデルグとは対照的に、ヘクはやや緊張した面持ちだ。あ、でもよく見たらデルグの顔、少し引きつってるな。やっぱり緊張してるんじゃないか。
対戦相手が並び、お互いに礼をし、対戦相手同士がある程度距離を取ったところで審判役の騎士が試合開始を宣言した。
ちなみに審判役の騎士は公平にするために、両方の騎士団出身の騎士が一人ずつ選ばれている。
開始の宣言があったとたんデルグが動いた。すぐ動くのは変わっていないな。
でも前より動きが雑でなくなった。たぶんデルグは元々才能があって、まともに基礎をやったことが無かったんだろうな。騎士団の訓練で基礎が身に付けば強くなると思ってたけど、やっぱり強くなってる。
私はその逆、才能がないので基礎を頑張った。なので今のデルグに私が敵うはずがない。
いきなり攻撃してしたデルグの攻撃を受け止めた敵方の新人とそれを避けた敵方の新人、避けた方はそれを見越していたヘクにやられていた。それに動揺し、残った方もデルグにあっさりとやられる。
私はデルグにやられた方が尻餅をついたところで、舞台から目を離した。二人とも強いのはわかったし、そろそろ戻ろう。
私は二人の結果が発表される前にその場を離れた。




