闘技会
年明けの盛り上がりもとうに薄れ今真冬らしい寒さの今日、私とカーレル様は王都の騎士団にいた。
闘技会という、王都の騎士団と、もうひとつのサルア区という大きい騎士団の新人の合同試合があるから。冬の真っ只中と夏の真っ只中という、戦いづらい時期にあえて行われる年二回のこの行事は、軍部関係のことなので私とカーレル様も来賓として出席することになっている。
来賓用に用意された席に座ると、闘技会の会場全体が見渡せる。いつもは訓練場だが、この日のために新人騎士が戦うための舞台が四つ用意されて別の場所のように思える。
「もうすぐ始まりますね」
私の横に座っているカーレル様は呑気に会場を眺めながらそんなことを言った。見てみると、闘技会に出場する騎士が控え用のテントに集まってきている。出場する試合別に別れているので、新人騎士も試合の実感が沸いてきているのか、あの辺りからはもう既に緊張が伝わってきた。
試合の種目は三種で、普通の一対一で行われる決闘形式の普通試合と、二人組で戦う同じく決闘形式の複試合、精霊を使役しながら戦う精霊騎士式の精霊試合がある。
普通試合と複試合は、どちらも純粋な剣の力を試すために行われるので、精霊の使用は禁止されている。それに対し、精霊騎士式の決闘は、将来精霊騎士を目指す者が参加する。とはいえ、普通試合は強制参加だ。なので残った二種目は参加人数が減る。もっとも、精霊試合は一部しか参加できないし、複試合の方も試合数としては単純に考えてみても半分以下になる。
というわけで、四つ用意されている舞台は全員が参加する普通試合が二つ使い、残る複試合と精霊試合で一つずつ使うことになっている。
その時、重々しい音色で鐘が鳴った。闘技会の開会式の始まりを告げる鐘だ。その音が消えると、会場の空気が変わった。
会場の中心に作られた台に王都の騎士団の団長、ホラスが登り、朗々と挨拶を読み上げた。
「えー、本日は天候にも恵まれ……」
………長いなあ、いつも思うんだけど。何でこういう時の挨拶って無駄に長いんだろう。よい天気ですから頑張ってください、くらいで十分だと思うんだけど。しかも来賓紹介って必要?
無駄に長い開会式に心の中で文句を言っていたら開会式は終わった。ここの来賓席は私の火精霊の力で暖かくしてるからいいけど、下にいる騎士は寒いだろうな、試合前なのに可哀想。
開会式の終了とともに、騎士達がぞろぞろと動き出す。一番最初の試合がもうすぐ始まるんだろうな。
そういえばあの二人の新人、デルグとヘクの試合っていつだろう。始めの方は二つの騎士団の新人同士がぶつかるようになってるけど、三試合目頃から同じ騎士団の新人がぶつかるよのが多くなる。あの二人の対戦はきっと見物だ。
生憎、来賓席には簡単な日程の紙しかない。放送で指示されるので十分だと思われているんだろうな。私の斜め後ろに座ってる来賓のおじ様は暖かいからかうとうとしてるしね。
そんなのほほんとした雰囲気の来賓席とは違い、ここの向かい側の下の方に設けられた各区の騎士団の団長席は真剣だ。優秀な新人を引き込むためだろう。もっとも、目をつけた新人を必ずしも得られるわけではないけど。
将来の行き先や待遇がかかっていて頑張る新人をそれ以外の理由で見に来る人はもちろん多い。
外部からの観客はそのほとんどが女性とその付き人だ。主に自分の婚約者や恋人の勇姿を見に来る女性と、将来の旦那を探しに来る女性。
強いか、それなりの身分の騎士であれば王都か近い区に派遣される可能性が高い。それに収入も安定しているので一般貴族以下の女性にとってこの闘技会は理想の旦那探しとしてはうってつけの場なのだ。
「退屈そうですね」
カーレル様が特にすることもなくぼんやりと闘技会の様子を見ていた私を見て言う。だって暇ですもん。
「特にすることもないので。知り合いの新人騎士の試合は見たいんですけど」
「ああ、前の視察のときに言ってた二人の子?君が期待する位だからそれは私も見たいんですよ……そうだ、細かい予定表を貰ってきてくれませんか?ついでにその二人の新人君とお話でもしてきてください。しばらくはここにいても退屈でしょう」
まあ始めの方は強者同士が当たらないようになってるから見るものもないしなぁ。会場の方をぶらぶらしてる方がいいかもしれない。試合の邪魔さえしなければ移動は自由だし。
「あっ、精霊はどうしますか?」
来賓席を暖かくさせていたので、私がいなくなれば寒くなる。
「この席は多少寒いくらいがちょうどいいですよ」
うとうとしてるおじ様をちらっと見てカーレル様は言う。まあ、どうしても寒かったら人を呼ぶなりすればいいのか。
気持ち良さそうにまどろんでいるおじ様には悪いと思いつつ、私は会場に降りた。
説明多いですね(←自分がやったのに)
この先を書いている途中、設定を忘れかけたりしました(;´∀`)




