アル、悩む
レゲルが誰かに連れ出され、その後フェターシャ嬢が出ていった。
そのあと殿下も出ていって、そしたらレゲルが戻ってきてしばらくしてから殿下とフェターシャ嬢が戻ってくる……
何があったのか、さっぱりわからない。唯一わかったことは、あの鈍感男はやっぱりフェターシャ嬢の気持ちに気付かなかなかった、ということだ。
呆れてあいつを見ていたら、突然女の子とぶつかった、しかも物凄く美人、顔の系統的に考えてみて、フェターシャ嬢の妹君であるとわかった。
何がなんだかわからないうちに、俺は妹君に休憩室の個室に連れてこられていた。
話とはなんだったのだろうと思ったら、レゲルとフェターシャ嬢のことだった。
しかも離宮のパーティーで何があったのか、と訊ねられた。
隠しても仕方のないことなので、覚えている限り、全てをリフィアル嬢に話した。
「……鈍感にも程がありますわ」
本当に、それは俺も思っています。自覚なしの女たらしの上に超が付くほどの鈍感だ。妙なところで勘はいいくせに。
「ハンカチをよく見つめていたのはそのせいでしたのね」
「新しい物を、って言って。本当に渡しに行ったんですね、あいつ」
「ええ、メイドの間で話題になっていましたし。お姉様の気持ちを知らなかったので、その時は大したことではないと思っていたのですが」
「もう誰かが直接教えた方が早い気がするんですけど」
直接アプローチでもしない限りあいつは絶対に気付かない、ちょっとしたアピールだけではただの親切か、お礼程度にしか感じないだろう。
「それではロマンがありませんわ!」
リフィアル嬢はそう言って、しまったという感じで口許を押さえる。
「いえ、私はただ気持ちは本人から直接伝えた方がいいと思って……」
「そ、そうですよね、恋愛は他人が首を突っ込んでいいものじゃありませんし!」
レゲルはおもいっきり首を突っ込んでいたけどな。ちなみにレゲルが殿下の恋路を手伝ったことは黙っておいた。殿下の名誉のためにも。
「ところで、レゲル様は本当に女性に興味がないのですか?」
「あいつがおん……女性について話しているのは聞いたことがないです。けっこう一緒にいたんですけど」
レゲルを紹介してくれっていうのはよく頼まれたな。
「はぁ……どうしようかしら」
リフィアル嬢はきっと姉の恋愛を楽しんでいるのだろう。くっつくなら早くしてくれという感じだろうか。
「あら、長く話しすぎですわね。そろそろ行かないと怪しまれますわ」
確かに、俺はトイレに行っていることになってる。さすがに長いだろう、というくらいの時間は経っていた。
「アル、あなたは先にお戻りになって。もしなにか聞かれてもお手洗いに行っていたと言うのよ。私はもう少ししてから出ますわ」
「はい」
俺がドアノブに手をかけると、思いもよらない一言が後ろから飛んできた。
「もしレゲル様に何かあったり、新しいことがわかったら手紙をくださる?ただ差出人が男性だと何か思われるので……アルですから、アルシエラ、とでも書いて送ってください。女性であればなんとでも言い訳ができますわ」
「わ、わかりました」
フーレントース家のご令嬢に手紙……考えるだけでも恐れ多いんだが。凄いことなんだろうが、書く機会がないことを祈りたい。
俺は出来るだけ目立たないように休憩室から出た。それでも案の定、知り合いに囲まれる。
「お前っ、羨ましいぞ」
「そうだ、ぶつかるなんて……俺がそこに立ってればよかった」
「休憩室まで付き添った以外何もしてねーよ。そのあとはトイレに行っただけだし」
「それでも羨ましい」
どうやら、しばらく恨まれそうである。
新年早々とんでもないことに巻き込まれた。
ふと前回の投稿日を見たら、2月14日でした。
そうでした、バレンタインデーでしたね、先週(;´∀`)
ちょうど恋愛物?になっていますね。
まあこの世界にはチョコを渡す習慣はありません。
それにバレンタインはなんとなくお菓子メーカーの陰謀が隠れてる気がする(笑)




