妹は考える2
気を落ち着かせようと周辺を見回します。すると、一人の男性がレゲル様を見ているのを発見しました。私と同じ、ちょっと呆れたような目をして……
青年とは何か通じるものがありそうですわ。ぜひお話したい。
でも、レゲル様とお話しするためにお父様から離れたので、先ほどから男性に話しかけられます。一人になってしまったせいですわね。
「申し訳ありません、少し疲れていますの」
丁重にお断りしながらあの男性に近付きます。
あっ……ですがどうやってお話ししましょう、ここでお話すれば確実に聞かれてしまいますし、外に出てもそれは同じですわね……
「キャッ!」
うっかり、青年とぶつかってしまいました。ふらついた私を青年は支えてくれました。
「申し訳ありません、私が前を見ていなかったばかりに……どこにもお怪我は……」
「だっ、大丈夫です。これくらいのこと……」
私を立たせてすぐ、青年は私から手を離しました。自分が何を言っているのかもわかっていなさそうです。
「手などを痛められてしまったら明日からのお仕事に支障が出るかもしれません。休憩室にでも……」
「大丈夫です。あなたもお怪我は」
『この者、精霊使いです』
私の精霊が教えてくれました。私は青年の精霊に伝言を頼むよう伝えます。
「へっ?」
どうやら伝言が伝わったようです。
「足首を捻ってしまったかもしれません。すみませんがお手を貸していただけませんか?」
「はいっ!」
恐る恐るといった様子で青年は私の手を取り、休憩室まで私を連れていっていました。
到着した休憩室では数人のご令嬢が休んでいました。メイドが入ってきた私達を不思議そうに見ます。
「フーレントース様……?」
私は意味深な顔をしてメイドに耳打ちします。
「この方とお話がありますの。個室は空いていますか?」
「はいっ、こちらに……」
案内された個室に青年を押し込んで私はメイドと向かい合いました。
「この事は誰にも言わないでくださる?」
どうなるかわかりますよね、みたいな顔をして言うと、メイドは震えながら頷きます。
「あと、私とあの青年はそういった仲ではありません。ただ、お話したいだけです。誰かに何か聞かれたら私は個室、彼は……何事もなく、用足しに行き、少ししたら戻ってくると伝えなさい。いいわね?」
お手洗いは休憩室に男女どちらもあるので、不思議ではないはず。
メイドには少し悪かったかしら、と思いながら私は個室に入り、状況を全く理解できていない青年と向かい合う。
「座ってください。私はただあなたとお話がしたいだけです。あ、まだ名乗っていませんでしたわ。リフィアル・フーレントースです。あなたは?」
「おっ、俺はアル・メセルソンです。話っていったい……」
「あなた、レゲル様とはどういったご関係?」
「あっ、あいつとは精霊院の同期で友人です。それだけですよ、本当に!」
スムーズに会話が進みそうにないので、私はこのアルという青年が落ち着くまで待つことにかしました。
……少し息が整ってきたようなので、私は質問を続けます。
「先ほどレゲル様を呆れたような目で見つめていらっしゃいましたね。何があったのでしょう、私と同じことを考えていらっしゃいました?」
「同じことっ、て……まさか、お気付きに!?あの、フェターシャ様の妹君ですよね?……そういえばさっきフェターシャ様を外に連れ出していらっしゃったような……」
「ええ、そうですわ。最近のお姉様の様子がおかしかったので。今日のパーティーで確信しました。お姉様はレゲル様のことをお慕いなさっている、と」
私はそこで一呼吸置きます。アルの様子からするに、私より先に彼はお姉様の気持ちに気付いていたことになります。だとしたら、アルはあのパーティーのとき、お姉様のそばにいたのでは……?
「パーティーで何が起こったのか、教えていただけません?」




