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年越し祭5

広場はたくさんの人々で賑わっていった。中心には舞台のようなものが組まれていて、神官らしき人が手に杖のようなものを持ってその上に立っていた。

確か先っぽに鈴が付いてて年が変わると一斉に鳴らすんだよな。で、鳴らし終わった鈴を集まってる人達に投げる。鈴を手に入れた人は今年は幸せになれるんだとか。まあ来たのが遅いから遠くて取れないだろうけど。特に欲しいわけでもないからいいけどね。

人波に押されているからじわじわと前に行けてる。

不意にシャンという鈴の音がかすかに鳴った。年明けまでもう少しという意味の鈴だろう。集まっている人達のざわめきが小さくなる。年明けまでもう少しだ。

気付けば人の流れはおさまって、全員が中心の舞台に注目していた。もうすぐ、年が明ける。

再び、鈴が鳴った。先程より大きな音、神官たちが円になり杖を高く掲げた。

次の瞬間、表現することのできない複雑な音色で鈴が鳴り響いた。はじめは激しく、最後は優しげなリズムで、鳴らし終えた神官は杖から鈴を外した。

そして一斉に鈴を持った手を下げ、天高く放り投げた。澄んだ音を響かせながら不自然なほど高く上がっていく、おそらく風精霊の力を借りているのだろう。

すると、私のすぐ近くで小さな鈴の音がした。柔らかいものに当たって跳ねたような感じだ。

「取れた……」

オルトが少し嬉しそうに声をあげた。

「いいなあ」

横で見ているルナが羨ましそうにオルトを見上げる。

「兄さん、これ兄さんにあげる。僕が持ってるよりいいかもしれないし」

「いや、大丈夫。それはオルトが持ってて。一番はじめに手に入れた人に幸運が訪れるんだから、私が持ってても意味がないよ。気持ちだけ貰っておく」

私は鈴を持ったオルトの手を優しく押し返した。

ふと空に目をやると、雨こそ降っていないが曇り空で、新しい年を迎えるたのにはなんとなく寂しい。

私は暇そうにふわふわと浮かんでいる精霊を見た。去年……いや、一昨年の王都での年越しを思い出す。今回王都でできなかった分、ここでやってしまおうか。

私は精霊達に指示を出した。





突然、頭上で大きな音がした。

誰もが何事だろうかと同じように空を見る。

見上げると、曇っているはずの空にキラキラと輝く光が星のように瞬いていた。それが星でないことがわかるのは、美しく輝きながら落ちて、空中に溶けるように消えていくからだろう。ただただ綺麗な光景だった。

いったい今の光はなんだったのだろう。

光が全て消え、再び曇り空に戻った空をぼんやりと見つめながら俺は余韻に浸っていた。

するとまた、空に光が現れる。次は色合いで炎だとわかった。花のように弾けて落ちていく。全てが落ちきらないうちに炎は渦を巻き、いつの間に現れたのか、巨大な氷の結晶をその紅蓮の光で照らし出す……

目まぐるしく変わっていく空を、広場に集まった全ての人々が呆けたように眺めている。次に起こるのはどんな変化なのか、誰もが心待ちにしているのが感じられる。

光と炎、氷、水、風、植物の共演は、いつまでも続くもののように思われたが、光の粒子、小さな火花……それぞれの名残が降り注ぐと、空はまた元通りの曇った物寂しい空に戻った。

残されたのは静寂だけだ。誰も何も言わない、少しでも長く余韻に浸ろうとするかのように、ざわめきすら起きなかった。





どれくらいの時間が経ったのだろうか、ぼんやりと空を眺めていたルナが静寂を破った。

「今のって……お、お兄ちゃん?」

私はその質問には応えず、笑いながら言った。

「新年おめでとう。今年もよろしくね」

いい年でありますように。

まわりの人々も、隣にいるであろう大切な誰かに同じことを願って、同じことを言うんだろうな。

新年の挨拶をする声があちこちから聴こえてきて、広場には賑やかさが戻ってきた。



お騒がせして申し訳ありませんでしたρ(・・、)

これが今年の最終話になります。もちろん来年も投稿していきます(*´-`)



1日早くなりますが、あちらの時間に合わせて、

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

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