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年越し祭3

あらかじめ精霊に陽が沈んで暗くなったら起こしてほしいと頼んであったので、陽が沈んで少しして起きることができた。

風邪は……治ったとは言えない。喉が痛いからやっぱり声は枯れ気味だし、頭も痛いし熱も少しある。

それでも、みんなとお祭りに行きたいので起き上がった。温かいように普段ならあまり着込まないけど服を着込んだ。万が一精霊に頼れなくなったときのために自分で暖かくしておかないと。

念入りにうがいをして、みんなを呼びに行く。

みんな準備を終えて出かけるばかりになっていた。ルナとルラはいつもより少しお洒落な格好をしている。やっぱり女の子だな。

私を見るみんなの目が少し不安げだけど、大丈夫だ。心配されてるのはわかるけど、やっぱり行かずにはいられないから。

外に出ると、暗いのに遠くに光が見えた。お祭りの光だろう。

通りに向かうにつれてだんだんと賑やかになっていく。普段は静かな区なので、なんだか新鮮な気分だ。王都はいつも賑やかだけど。

道行く人にすれ違うたびに声をかけられる。さすがに長話しようなんて思う人がいないから挨拶程度で終わるけどね。

「もうすぐ大通りだからはぐれないようにね」

私は今、右手でルナ、左手でルラと手を繋いで歩いていて、私の後からはオルトがアレスとミゼルと手を繋いで着いてきている。

大通りに出ると、道の両側にたくさんの露店が並び、小さな舞台がいくつか組まれ、その上で手品やダンスなどの演目が催されていた。いかにもお祭り、という感じがする。

「何か欲しかったら言って。二つまでなら買ってあげる」

欲しいと言われたらいくらでも買ってあげられるけど、たぶん数を制限しておかないとこの子達のことだから、何にもおねだりされることなくお祭りが終わる気がする。

「二つも?一つで十分だよ。それに私も少しはお金持ってきたし……」

予想通り、ルラが遠慮がちに言う。ルナも同じようなことを言った。でも一つので十分ってことは一つは買ってあげられるということかな。

「私が買ってあげたいだけ、持ってきたお金は三つめを買うときに使えばいいから」

そう言いながら私は一つの露店に近付いた。何種類かの焼き菓子を売っている露店だ。お腹はそう減ってないけどいい匂いがしてたから。私から買えば少しは買いやすいかもしれない。

私はを棒状の焼き菓子を買った。砂糖がまぶしてあってとてもおいしい。こういう場所で食べるからっていうのもあるだろうけど。

ルナとルラがじっと私の方を見ているので、私は焼き菓子を少しちぎって二人に渡した。

黙って受け取る二人、少し欲しかったのかな。

「おいしいね」

「うん」

そこで私はもう一度辺りを見回した。どこかに空いている場所はないかな……

『場所なら作れますよ』

意気揚々と風精霊が言う。外にいる間は特にすることもないので暇だったのだろう。他の精霊も同じようなことを言い始める。

人を吹き飛ばしてまでいらないから、大丈夫だよ。でもその前に、騒ぎになるから止めなさい。

年越し祭かぁ、去年はほとんどずっとカーレル様に付いてうろうろしてたからな、お祭りを楽しむなんてことしてる場合じゃなかった。

……そういえば今年の精霊の舞ってどうなってるんだろ。年が変わった瞬間に精霊使達によって行われるイベント。空に光や炎、氷等を打ち上げて盛大に新年を祝うもので、空にいらっしゃるレド様にも見えるようにというのがいわれだとか。

去年はそれを行うために一度カーレル様から離れたんだっけ。

あれって打ち合わせが直前の一回だけなんだよね。そこで初めて大まかなプログラムがわかる。それを前日……つまり昨日行うはずだった。たぶん私あってのプログラムを組んでたはず、今頃どうなってるんだろ。

遠い目をして王都の方を見ます。まあいろんな事態を想定していくつかプログラムを作ってるはずだから、きっと大丈夫だろう。

……おっと、今は家族と過ごしてるんだから、仕事のことは忘れないと。

「何か買ってどこかでみんなで食べない?せっかくのお祭りだから楽しもう、ね?」

ルナとルラ、そして後ろから着いてきているオルトとアレスは遠慮がちにうなずく。ミゼルはあちこちに目が行ってて気付いていないみたいだ。

「あれ、なあに?」

唐突にミゼルが指差したのは飴の露店。カラフルだし惹かれたのかな。これがきっかけになってくれるような気がする。

「じゃあ行ってみよっか」

私達は飴の露店に向かって歩き始めた。

はぐれないようにしっかり手を握りながら。



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