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年越し祭2

ん……

気付いたら寝ていて、部屋には誰もいなかった。

あのあと、ルナは何事もなかったかのように私がお粥を食べ終えるのを待っていて、空になった器を持って出ていってしまったのだ。

たいして動いてもいないのに、食べてしばらくして眠くなってきたことまでは覚えている。

窓の外を見ると、陽が傾きかけているのか、カーテンの隙間から漏れる光が少し茜色になりかけていた。

寝すぎたかなぁ、せっかくの年末なのにまともに家族と過ごせてない。わざわざ休みをくれたカーレル様に申し訳なくなってきた。

よく寝たからか、頭痛や熱はだいぶましになった。まだ喉は痛いし鼻水も出るけどね。

ずっと部屋を快適に保ってくれていた精霊達はまだせっせと働いてくれていた。

ずっと動かないのはまずいかな。

そう思って立ち上がってみる。少しふらついたけど立てた、部屋の外に出ると物凄く寒かった。

すぐ精霊が暖めてくれたから一瞬のことだったけど。

少しふらふらしながらみんなのいる部屋に向かった。

「あっ、もう大丈夫なの?休んでていいのに」

真っ先に私に気づいたルナがそう言うと、他のみんなも一斉に私を見る。

「少しは……あれ、オルト、仕事は……」

部屋にはなぜか仕事中のはずのオルトがいた。

「僕もルナと同じで休ませて貰えたんだ」

「本当に大丈夫?声がまだ大丈夫そうじゃないけど……」

「休めば治るよ。せっかくの年末なのにごめんね」

「そんなことないよ、子どもたちを助けてそれだけで済んだならいいほうだよ」

本当は怪我もしたんだけどね、ほとんど治してもらったから黙ってるけど。これ以上心配をかけたくないし。

「今日の夜はどうするの?」

年末の夜は基本的にどこの区でも年越しのお祭りが開催される。まあ年が変わった瞬間に新年祭になるんだけど。

今年は行くのかな、去年は私はいなかったけど行ったらしいし。

あっ、今頃王都は年越し祭の式典の真っ最中かな。レド様に今年の感謝を述べたり、来賓の方々のおもてなしをしたりしているのだろう。

ちなみに夜は王宮でパーティーが開かれていて、そこで年を越すのだ。

「うーん、さっきまで話してたんだけど、兄さんを置いてお祭りには行けないし、何より年末は家族で過ごすものなんだから、今夜は家で過ごそうかなって」

「私のことは置いといて行けばいいのに……」

「元から行かないのが普通だったから僕としては別に変わりはないんだけど」

「えっ?」

「だってお兄ちゃんが王都に行く前までは行ってなかったし」

……そういえばそうだな。露店とか出てても買うものもないし、私が王都に行く前から行かないのが普通だったのか。

いや、でも私はみんなに普通の生活をさせてあげたい。そのために働いているのに、普通の家なら行くようなお祭りに行かせてあげないなんて、それはだめだ。

「じゃあ……私が行くって言ったら行く?」

「なに言ってるの!?風邪が悪くなるだけだよ」

まあ、普通はそう言われるか……でも、行かせてあげたい。本人たちが本当に行きたくないなら別だけど、少しは行きたいはずだ。それに、私が風邪なんてひかなかったらお祭りに行っていただろう。私もそのつもりだったし。

「私の我が儘、一緒に行きたくなかったら家にいて。私はみんなとお祭りに行きたいし」

「でも……」

「火精霊に暖めてもらうから大丈夫だよ。私は少し寝てくる。私が起きたらお祭りに行くよ。行くなら準備しておくように」

何か言いたげなみんなに次の言葉を言わせないように、私はみんなに精一杯の笑顔を振り撒いて部屋に戻った。

寝転がるとまだ寝床は若干温かかった。私は寝床に潜り込んで、夜のお祭りのために眠った。

寝たら少しはよくなっているといいな。

今日は今までで一番我が儘を言った日のような気がする。







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