精霊と子供目線1
私達は取り敢えず森の中へ逃げ込んだ。
精霊に騎士団の人達がいる方を教えてもらいながら進む。
子供の一人が光精霊に光を出させているから明るい。
にしてもこの状況をどう説明しよう。
誘拐されてきた子供の三分の一が精霊使いになってしまった、しかもほぼ私が原因で。
子供の未来をだいぶ変えてしまった上、私の精霊からの愛されっぷりがよくわかった。
精霊が側にいるに越したことはないけど、それでも今回のことはいろいろな意味で今後厄介なことを引き起こしそうだ。
私の身が危険にさらされて、その時にまわりに人がいれば精霊が私を助けようとしてまわりの人で妥協……と言っていいのか、とにかく一部が契約する。
精霊使い製造機みたいな扱いを受けそうで怖い。想像しただけでも嫌だ。
これを知っているのはたぶんあの、精霊の目の男の子だけだろう。
口止め……した方がいいよなぁ。
これからを考えて憂鬱になりながら、私は森の中を子供達を後ろに引き連れて進んだ。
あのお兄さんが男の人たちに連れて行かれるのを横目で見ていた僕たちは男の人たちに言われるがまま、ぼろぼろの家に入った。
中は真っ暗でなにも見えない。
僕たちが中に入った時の月明かりで中に他にも子どもがいるとわかっただけで、扉が閉められるとなにも見えなくなる。
これからどうなるのか、それくらいはわかっている。
ちょっとしたお使いを頼まれただけなのにどうしてこんなことになっちゃったんだろう。突然後ろから捕まれて、気付いたらさっきの馬車に乗せられていた。
みんな無言で、沈んだ顔をしていたから、僕はますます不安になっていた。きっとみんなおんなじ気持ちだっただろうけど。
外に見張りの人がいるだろうし、声を出したら何が起こるのかわからなかったから黙ってた。
そんなときにいきなり遠くから大きな叫び声が聴こえてみんなびくりと震えた。あのお兄さんだろうか、と一瞬思ったけどあのお兄さんはあんなに野太い声じゃないはずだ。細身の人だったし。そう思って嫌な想像を振り払う。
それからしばらくして、いきなり扉が乱暴に蹴破られた。
こんな夜中に行われるのか、と身構えた。
そしたらそこにいたのはさっきのお兄さん。肩で息をしながら僕の腕を縛っている縄を手早くナイフで切ってくれた。
手が少し痺れている。僕は思わず手を擦った。
「これで縄を切って、合図を待て」
とだけ言ってお兄さんはまた走っていってしまう。
言われた通りに縄を切っていく。こんなに切れ味のいいナイフは使ったことがないと思った。
みんなの縄を切ったのを確認して僕たちはあのお兄さんの言った通りできるだけ小さくなって集まった。
ふと、視線を感じて上を見ると、空中に人が浮かんでいた。
半透明の人。
「……精霊?」
僕が尋ねるとその精霊はゆっくりとうなずいて、ちらちらある方向を気にするようにした。
『あなたの名前を教えてくれませんか』
精霊は僕に語りかけてきた。といっても耳から声が入ってくるわけではない。頭に直接響く声だ。
確か精霊との契約内容は精霊との名前の交換だったなぁ……
精霊と契約すれば、あのお兄さんを助けられるかな。
きっと誘拐犯と戦ってくれているんだ。
僕は迷わず精霊に名前を伝えた。
そうしたら不思議なことに、精霊はさっきまであれほど気にしていた方向をちらりとも見なくなった。




