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市場探し2

乗せられた馬車にはすでに何人かの子供が乗せられていた。

みんな手足を縛られ、猿ぐつわをされていれ、見るからに痛々しい。私も同じ状況だけど。

この作戦が成功するかどうかはわからない。

こんなに単純な作戦が成功するならもうとっくに市場はいくつも見付けられているだろうから。

私は馬車の中を見回した。

明かりは一切ないから子供の顔とかはほとんど見えない。

監視の人間はいないが、代わりに精霊が見張りについていることも考えられる。動くのは賢明では無さそうだ。

精霊は味方なら心強いが、敵に回られるとこれほど厄介なものはない。

第一見えないから、精霊使いは精霊使いでないとほとんど対処できないのだ。

闇に目が慣れてくると、近くの子供の顔は見えるくらいになった。馬車の壁に空いた隙間から少し光りも入ってきてるし。

所々で止まり、さらに子供が乗ってくる。

新たに入ってくる子供達は回りをほとんど見ていない。そんな余裕なんてないんだろうな。

何人かが子供の中に一人混じる私を不思議そうに見るけど、何があるわけでもないからみんなしゃがみこんでうつむいていた。

整備されていない道であるせいだろう。揺れがひどくてお尻が痛くなってきた。

奥の方にいる子は、一番始めに乗せられたのだろう。しきりにお尻を気にしていた。

不意に、目の前に精霊が現れた。

私の精霊だ。精霊がなぜか寄ってくる体質をごまかすために、寄ってくる精霊を追い払うように言っておいたはずの水精霊。

『男たちの一人が精霊使いでしたので近寄れませんでしたが、今しがた精霊を伝令に飛ばしたのでここに他の精霊はいません』

嬉しそうに報告してくれる水精霊。

ということは今、見張りとしての精霊は一体もいないことになる。動くつもりはないが、少し安心できた。

『他の精霊も皆順調に動いています。この馬車のかなり後ろから人間の騎士が追いかけてきていますよ』

市場を見つけてできるだけ早く動けるように後ろから騎士についてきてもらっている。演習に見えなくもないように擬装してもらっているはずなので、ここは信用しよう。

子供達を見回してみる。少なくともここにいる子供達くらいは助けてあげたいな。

その時、一人の男の子と目が合った。

みんなうつむいてると思ってたから、目が合うとは思ってなかったな。

ふと、その男の子の視線に違和感を感じた。

男の子は私から目を逸らしたと思ったら、別の方向を見始めた。

ちょうど私の水精霊がいるあたり。

そこで私を水精霊に左右にゆっくり手を振ってもらう。

男の子の目線はその手を追っていた。

口パクで水精霊に「見えてる?」と言ってもらうと、男の子はじっくりと水精霊の口許を眺めて、少し驚いたように小さくうなずいた。

どうやら精霊が見えるようだ。

『精霊の目』と言われる力だろうか。ごくごく稀に、こういう目を持って産まれる子供がいるらしい。

生まれつき精霊を見ることができる、そんな能力。

とはいえ、私のような精霊使いの『見える』とは全く意味合いが違う。『精霊の目』の人間はただ精霊が見えるだけで、見える代わりに、決して精霊との契約が出来ない。

実際に会うのは初めてだけど、聞いた話だと、見えるのに相手にされることがなくて、話しかけることもできず、寂しい力なのだとか。

彼がここにいるのは単なる偶然だろう。そうでなければ、こんな珍しい力の持ち主をあくまで『普通』の商品と一緒になんてしておかないはずだ。

男の子はぼんやりと私の精霊を眺めている。その目には少し希望が浮かんでいるようにも見えた。

ここから脱出できるかもしれないという希望。

この子は自分がこれからどうなるのかわかっているのだ。目のせいと考えているのかどうかまではわからないけど。

『……男の精霊が戻ってきたようです。あのような精霊くらい私の敵ではございませんのに。危険です』

心配してくれてるのは嬉しいけど、この子達以外の子も助けたいからね。

精霊は残念そうに遠くへ姿を消した。




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