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市場探し

「なあ、ほんとにこれでいいのか?」

後ろを振り向きながら誘拐犯の一人、セルドが訊ねてくる。

一応誘拐犯三人には名前を聞いた。

リーダーっぽい前にいる男がセルド、私が髪をバッサリ切った男はエリク、残った一人がコジェスだそう。

精霊使いの方は、いるといろいろ厄介と思われたので今は騎士団にいる。作戦が成功したら彼にも一応仕事探しをしてやろうと思う。それなりに強い精霊だったし、探そうと思えば探せるだろう。

「あなた方がへまをしなければ大丈夫です。そろそろ教えたように縛ってくれます?」

私は今、セルドとコジェスの引く荷車に乗ってエミネ峡谷に向かっているところだ。

そこでより市場に近い人間と落ち合うことになっているらしいので、私が囮になって市場に連れていってもらおうという極めて単純な作戦だ。市場の場所がわかったら精霊を通して伝えればいい。

一応、服装や髪型で雰囲気を変えておく。精霊にも、私によっぽどのことがない限り干渉しないよう念を押して、万が一にも私が精霊使いであることがばれないようにしてもらう。

レルチェは騎士団で預かってもらっている。とりあえずご飯だけ貰えれば一日くらいなら大丈夫だから。

万が一のことも考えて精霊を付けておいたし。

無力な男としていた方が今は何かと便利だ。

縛り方についても、パッと見ただけでは固く結んであるように見えるようにして、何かあればすぐ外せるようにした。ナイフも隠したし、準備万端だ。

「あいつらにあんたを引き渡した先について俺らは何の保証もしねーからな」

荷車の横を歩いているエリクがぼやく。

「構いません。ですが、私の成功を祈ってくださいよ?私が失敗すればあなた方も道連れになるんですから」

「全く理解できねーよ。あんたの妹のことについての仕返しなら俺らを捕まえて満足してりゃーよかったのに。手柄でもほしいのかよ?」

「手柄?要りませんよそんなもの。さっきも言いましたが、私は私の妹を怖い目に会わせた元凶を潰したいだけです」

それに、この事が成功したらしばらく誘拐事件は起こらなくなるだろう。安心して年を越せるというものだ。

「まあ、さっき教えた通りにしてくれればたぶんあなた方の役割は全て終わります。失敗は許されませんからね」



藁の間から差し込んでくる光がだいぶ弱くなってきた。

そろそろエミネ峡谷に到着する頃だろう。

「いたぜ、売人」

そっとエリクが私が埋もれてる藁に向かって呟いた。人数は三人。全員男だそうだ。

近付いてくる足音が聞こえて、荷車の動きも止まった。

「今回はどうだった?」

そう訊ねる声と同時に私に乗っていた藁が全て取られる。

暗くてよく見えないが、セルド達以外の男が私を見下ろしているのがわかる。

「なんだよ、ガキが一人もいねーじゃねーか。男一人って、お前らやる気あるのか?」

いかにも悪そうな男が私に顔を近づけて言う。

「この男が邪魔してきたんで仕方なかったんですよ。俺らがガキを捕まえようとしてたらこいつが割って入ってきて……それで……」

続きをド忘れしたらしい。おい、誰かフォローしてやれ。

「こいつの相手してる間にガキどもは逃げてってて、こいつをなんとか倒した頃にはガキどもはどっか行ってたんです。それでせめてと思って仕方なく……」

「でもこいつ、顔はそんな悪くないんですよ。それなりに強いやつですし……」

セルドがそう言うと、男のうちの一人が私の髪を掴んで無理やり顔を上げさせた。地味に痛い。後で覚えてろよ。

「ふん、確かに顔は悪くないな」

そうとだけ言って乱暴に私の髪から手を離す。

「次こそガキ連れてこい。次同じようなことしたらどうなるか、わかってるよな?」

そう言って一つの袋をセルドに手渡した。

「少なくても我慢しろ。連れてけ」

私は二人の男に無理やり立たされ、暗くても分かるくらいボロい馬車に乗せられた。

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